ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > コラム・論説 > 足止めの春に 想うこと

足止めの春に 想うこと

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年4月13日

フリーアナウンサー  青山 佳世(第3116号・令和2年4月13日)

今年は花吹雪の前に、ウイルスの嵐が吹き荒れることになりました。一生に一度の卒業式、入学式、入社式、センバツ高校野球も中止や縮小、3月には高速道路の開通、常磐線も全線運行再開しましたが、粛々と晴れの日を迎えました。

入国制限が始まり外国人客が激減したもののさほど緊迫感のなかった2月半ば、東北のある町は「うちは外国のお客さんの誘致に遅れを取ったので、幸いにも影響ないです。」と粛々としていましたが、1ヶ月も経たないうちに日本人も旅行しにくくなりました。

ちょうどその頃訪れた関西の宿泊施設ではスタッフは全員マスク着用、レストランのテーブルひとつひとつにアルコール消毒液を配置、ブッフェには個人のトングを用意し、利用者にも理解を呼びかけていました。(3月に入ってからはブッフェはやめて定食に変更)自主的にすみやかに実行した責任者の強い覚悟と判断は見事でした。接客する側がマスクをするのはお客様に失礼だと上司に怒られるという事業者もあったといいますが、そんな中従業員と利用客を守るためにいち早く決断し信頼を勝ち取る、こうしたところにリーダーの胆力と見識が歴然と現れます。

3月米国で対策強化されてまもなく、外資系ホテルグループからCEO名で、個々のメンバー宛にコロナ対策徹底ポリシーと対応について一斉メールが届きました。ホテル、従業員の感染対策、またキャンセル等にも柔軟に対応します、という内容でした。素早い断固とした実行は安心感につながります。

世界的な大号令のもと自粛が叫ばれていますが、JR山手線49年ぶりの新駅である「高輪ゲートウェイ」駅が開業した3月14日、冷たい雨が降りしきる中、当日の切符を購入するため切符売り場に数万人が行列を作り3時間待ち。人の行動を抑制するのは極めて難しく、緊急事態宣言が出されても、日本では社会的距離の確保(感染防止のため人と人との距離を約1・8mを保つこと)ができていません。

呑気にしている場合ではなく、少なくとも自分が感染源となることだけは避ける…という意識を持てば行動は自ずと決まってきます。まだ感染の少ない地域の皆さんも、危機感を持って備えていただきたいものです。

産業、観光…何でもひとつに頼らない、オフピーク通勤、テレワーク、 衛生管理の徹底など、収束するに当たっても原形復旧(収束)ではなく教訓を活かしたものであって欲しいものです。治療薬の開発を願いつつ、今年は身近な花を愛でながら、心と身体の健康の維持に努めることにいたしましょう。