ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > コラム・論説 > 地産地消に励むスーパー

地産地消に励むスーパー

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年3月9日

ジャーナリスト 松本 克夫(第3112号 令和2年3月9日)

島根県西部の益田市を本拠にしたスーパー「キヌヤ」が地産地消推進の旗を掲げてから10年余り。売上げに占める地元産品の割合は着実に上昇し、18%に達した。目標の20%まであと一息である。

キヌヤが地産地消を経営の柱の一つに据えたのは、大型店の進出による競争激化に備えてのこと。地元産品を納入するキヌヤローカルブランド協力会(略称LBクラブ)は92人の会員でスタートしたが、会員の開拓に努めた結果、今では842人になっている。益田市や津和野町などの会員農家は、キヌヤの店舗の地産地消コーナーである「地のもんひろば」に採れたての野菜を自由に運び込む。「数量も値段も生産者のいう通り」がキヌヤのルールである。

キヌヤと会員の食品会社が共同で商品化した加工食品もある。益田産大豆100%の豆腐、市内の牧場の生乳だけを使った牛乳、市内の養蜂場が生産するはちみつなどで、いずれも人気商品である。

益田市周辺の農家も、ご多分にもれず後継者難である。キヌヤの領家康元社長は「このままでは生産者がいなくなって、地元の生産力がゼロになる可能性もある」と心配していたが、地産地消を推進し始めてから、「収入が増えるように応援してやれば、農家も息子に継がせられる」と確信するようになった。LB品での収入が年間600~800万円になる農家もあるという。農家の後継者確保につながれば、地域の人口減少を多少とも食い止められ、スーパーの顧客維持にもなる。

領家さんは、「商業が県外の大資本ばかりになれば、そこでの売上げは県外に流出して行きます。地元の企業が頑張らないといけません。LBクラブは地域社会への奉仕につながる取組だと思います。これが本当の地方創生です」と語る。地元スーパーと生産者が地産地消で力を合わせれば、より物と金が地元で回るようになり、地域は息を吹き返す。