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環境自治体

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年11月4日

ジャーナリスト 松本 克夫(第3100号 令和元年11月4日)

痛みで体の変調に気付くように、耐え難い猛暑や超大型の台風の来襲で、今さらながら地球環境の変調を思い知らされた。その点、今年7月に亡くなった須田春海市民運動全国センター世話人は先見の明があったとつくづく思う。地球温暖化対策で世界が足並みをそろえたのは恐らく92年のリオの地球サミットが最初だが、須田さんは早くもこの年に環境自治体会議を立ち上げた。

須田さんによると、環境自治体とは「自治体の政策の全分野で環境への配慮がなされる自治体」である。環境自治体の首長や職員、市民、企業などが対等の立場で相互に経験を交流する場が環境自治体会議である。須田さんの働きかけで、ワインによるまちおこしで知られた北海道池田町の石井明町長や先崎千尋茨城県瓜連町長、山内徳信沖縄県読谷村長(いずれも当時)が呼びかけ人になり、第1回の会議を同池田町で開催した。温暖化対策を担う主体に自治体を据え、しかも大都市ではなく小さい自治体を中心にしたところが運動家としての須田さんの慧眼である。

その後、同会議は毎年各地の持ち回りで開催してきたが、最盛期には約70自治体、数百人が参加する一大イベントになった。筆者も、7~8回参加したのだが、ごみゼロ運動、菜種油の廃食油を燃料にする菜の花プロジェクト、生ごみの堆肥化、薪ストーブの利用など各地の身近なところでの様々な創意工夫に感心させられたものだ。残念なことに、10年前、推進役の須田さんが病に倒れ、近年は参加者もやや減少気味だった。同会議は来年からSDGs(持続可能な開発目標)の達成を目指した新組織に衣替えするという。

海外に目をやれば、スウェーデンの16歳の少女が国連の気候行動サミットで大人たちの環境への「裏切り行為」を告発し、世界中で400万人以上の若者がデモに参加するなど温暖化ガス排出ゼロへの挑戦機運は従来になく高まっている。ここは日本の自治体も踏ん張る時だ。グローバルな課題にローカルから挑み、エネルギーの地産地消などにより地域の経済的自立性も高める。それが今後の自治体のあり方だと思うが、どうだろうか。