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「小さな自治体」の評価を変えたい

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年10月28日

作新学院大学名誉教授・とちぎ協働デザインリーグ理事 橋立 達夫(第3099号 令和元年10月28日)

第32次地方制度調査会が、昨年7月発足した。「人口減少が深刻化し、高齢者人口がピークを迎える2040年ころから逆算し、顕在化する諸課題に対応する観点から、圏域における地方公共団体の協力関係、公・共・私のベストミックスその他の必要な地方行政体制のあり方」が検討課題である。すでに小委員会の委員が、市町村等への現地調査、ヒアリングを行い、調査会の議論では、基礎自治体の自主性を重んじ、また多発する災害への対応に配慮するなど、これまでとは異なる動きが見られる。

しかしながら、地方制度のあり方を考えるという調査会の性格上、「圏域マネジメント:地域の枠を超えた連携の制度化」という考え方が主軸になり、これまで通り「小さな自治体にはできないことがあるから連携しなければならない」という考えに重点が置かれ過ぎているように思う。

確かに小さな自治体ではできないことがある。しかし小さな自治体は、そのできないこと以外の大部分かつ重要な業務を日常的に行っていることを評価し敬意を払うべきではないか。さらに言えば、小さな自治体だからこそできることがあることを再認識すべきである。高齢者等の見守りや援助の体制、まちづくりに関わる住民との連携など、住民の顔が見える小さな自治体であればこそ、きめ細かい対応が可能になる。また災害が起こった場合どこが危険かなど、地域の環境について知悉している職員がいることにより、迅速な対応ができる。

広域でやらなければできないことも増えているかもしれないが、狭域でやらなければできないこと、さらに狭域でやればこそできることも増えている。高齢化が進めば、従来自助で行われてきたことが難しくなる。また人口減少が進めば、共助により行われてきたことが困難になる。その分、自治体の仕事が増えるであろうことは自明である。そしてこれらの問題は狭域で発生するのであり、地域の枠を超えた連携という広域的対応では解決できない。地域の最先端で起こっている問題に応える体制を作ることこそが、国の喫緊の課題である。