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まちむらホテル 注目

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年10月21日

フリーアナウンサー  青山 佳世(第3098号 令和元年10月21日)

今、地域活性の切り札として注目を集めているのが、イタリアの小さな農村で生まれた 「アルベルゴ ディフーゾ」(分散した宿)と呼ばれる取組だ。日本では「分散型ホテル」と呼ぶ。イタリアには小さな村の中、どこを歩いても美しい家々と風景が続き、温かい笑顔の地元の人がいる。大切にして磨いてきた村の風景である。空き家などをリノベーションして宿泊施設にし、その土地ならではの食事や地域の人たちとの会話を楽しみ、まちむら全体をホテルに見立てて楽しむというものである。

抱える課題は日本も同じ。廃屋は、観光地では景観を損ない、防犯上問題がある。農村では「農家民宿」という、家を改築して旅人に泊まってもらい、野菜の収穫を体験したり、触れ合いを楽しむというグリーンツーリズムが各地で展開され人気を集めてきた。ところが先日知り合いの農家民宿の方から、「主人も私も歳をとって体力的にも続かなくなり辞めることになりました…」との便り。長年温かい農家ならではのおもてなしで人気だったが、農作業に加え、宿泊対応と大変な労力だ。個人の経営では、商店の後継がいないことと全く同じ課題が生まれていた。そんな中、特区を経て、2018年に旅館業法が改正され、ホテル、旅館でフロント機能の代替が認められ、離れた建物を一つのホテルと見立てて営業許可を受けることができるようになり、いくつかの事業体がすでに運営を始め、成功をしている。“まちむらホテル”(青山流の名前)は地域の総合力そのもの、ビジネスと温かさを両立できるこの仕組みがどう発展していくか楽しみである。

この度の台風19号での被災にあたり、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。1日も早い復旧に向けて、みんなそれぞれできることでエールを送りたいと思います。