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高畠で3つの発見

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年9月30日

コモンズ代表・ジャーナリスト 大江 正章(第3095号・令和元年9月30日)

8月に有機農業の調査で山形県高畠町を訪れた。高畠町は、埼玉県小川町や茨城県旧八郷町(現石岡市)などと並んで、有機農業が盛んなことで有名だ。農民詩人として知られる星寛治さんの著作や映画などを通して、ご存知の方も多いだろう。何回も訪れているが、そのたびに新たな発見があり、勉強になる。今回、印象に残ったことを3つ紹介したい。

第一に、町役場が有機農業を非常に好意的に捉え、以前と比べて有機農業によるまちづくりに、かなり力を入れるようになっていた。

「有機農業がクローズアップされたことで、町民の意識が変わりました。かつては、一般農家に有機農家への排除意識がありましたが、今は一切ありません」(農林振興課の課長)

行政がバックアップして、女性や新規就農者を含む若者が町の農業ビジョンを話し合う「農活未来ワークショップ」を3回、開催。今年11月には、やはり若者中心で「たかはたオーガニックラボ」を開くという。その目的は、食べものや食べ方をとおして生き方を考え、コミュニティを強固にしていく意識を生み出すこと。期待できそうだ。

第二に、駅から遠く、条件が不利な中山間地域の上和田地区で、若手生産者(後継者)が増えていた。1986年に設立した上和田有機米生産組合では、組合員40名のうち13名が20代・30代なのだ。他の仕事を辞めて家業を守るために戻ってきた30代もいれば、大学を卒業してすぐ就農する若者もいる。

「今の若者は価値観が変わってきたと思います。(いい意味で)物欲がありません。それと、世の中に食べもの自体はあふれているなかで、親父たちが本物の食べもの(つまり有機農産物)を探求してきたことに気づいているのでしょう」(生産組合リーダー)

第三に、美味しくて安全な野菜は多少高くてもよく売れるという事実を改めて確認した。ある60代の女性は、100品目程度の有機野菜を作り、近くの直売所でも販売している。その夫は「うちのかあちゃんの値付けは強気なんだ」と言う。直売所で見ると、確かに他の人の野菜より1~3割高い。でも、けっこう減って(売れて)いた。買い手は近所の方だ。味が評価されているからにちがいない。

高畠町の有機農業から目が放せない。