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神奈川県西部の「消滅可能性高い」町が挑む地域再生 木質バイオマス利用を来年度から事業化 条例化も追求

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年7月29日

島根県立大学名誉教授 田嶋 義介(第3088号 令和元年7月29日)


神奈川県西部にある松田町は丹沢山系などの山々に囲まれ、94%が山間部。人口は町人口ビジョンで、1995年の13270人をピークに減り続け、2040年には社会移動を含めて7055人(国立社会保障・人口問題研究所(社人研)推計)まで落ち、「消滅可能性が高い自治体」とされる。そこが地域再生をめざし、豊かな森林資源を生かす木質バイオマス利用を来年度から事業化、その理念を町民と共有するため「松田町地域の持続的発展に資する再生可能エネルギー利用促進条例」(仮称)を12月町議会に提案する方針だ。

町の北部にある寄地区も人口減少が激しい。1875年に旧7村が合併し寄村に、1955年に松田町と合併した。町中心部と県道1本でつながっている。子どもが2010年の183人から2040年には社人研推計で75人、30年間に108人減ることから、このままでは2061年頃にはいなくなると危惧されている。

2013年43歳で就任、2期目の本山博幸町長は「町民の命を守るのが行政の役割」と思い、県道が災害に会うと孤立する寄地区が、孤立しても生きていくにはエネルギー自給が必要であると考えた。この検討過程で、早大などが2年前に調査に入り、住民と「間伐材を利用した再生可能エネルギーで地域づくりをする」との結論を得た。町は、町のエネルギー消費は年約22.2億円、大半が今は町外に流出、1割を自給できれば、約2億円が町内で回る、と見ている。環境省の再生可能エネルギー導入計画策定補助事業に昨年採択され、町バイオマスエネルギー利用調査協議会を発足させ、今年1月に報告書をまとめた。

その概要では、町の森で林道から200m、かつ傾斜30度未満を利用可能な場所に設定、この搬出可能区域の森の総平均成長量(バイオマス賦存量)は年3397トン。浴場用に灯油ボイラーを使用している町健康福祉センターを例に灯油を薪に代えて、コストを比べた。センターの灯油費用は年198万円。薪は年52.2トン必要。この原木費や薪への加工賃で計約129万円、薪ボイラーの稼働費を加えても、約197.6万円に収まり、採算が取れるように見える。

ただ、薪への加工賃は年約77万円で一人を雇えない。材の供給・中間処理過程での工夫や需要拡大が必要。浴室用に重油ボイラーを使うゴルフ場が町内に2つ、ハウス栽培農家、町民の薪ストーブ使用で年200トン需要も考えられ、これらを今年度詰める。

これには、町民が事業への理解や知恵をしぼることが不可欠である。町は利用促進条例に、再生可能エネルギーは枯渇しない、二酸化炭素の発生が少ない、自立分散型で個人らが手掛けやすいとの特性を指摘、「これを利用し、地域の持続可能性を高めていく」との基本理念を盛り、知恵を出し合えるようにしたい考えだ。