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地域資源を自ら“創る”

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年2月25日

農業ジャーナリスト・明治大学客員教授 榊田 みどり(第3071号 平成31年2月25日)

昨年秋、宮崎県西米良村の小川地区を訪れた。2007年には高齢化率が7割だった林野率96%の山間地だが、この10年で、住民約100人に対して、なんと年間約2万人もの観光客が訪れる地域に変貌。UIターン者も24名誕生している。

きっかけは、「平成の桃源郷・おがわ作小屋村」づくりだ。07年、行政から常設の交流拠点の設立・運営を提案され、「座して死を待つわけにいかない」と、07年3月に「小川作小屋村設立準備委員会」を設立。09年10月、オープンにこぎつけた。

「作小屋」とは、自宅から離れた田畑・山林管理のために建てる仮住まいのこと。小川地区の昔からの生活文化だ。交流施設は、この作小屋をイメージした茅葺屋根の小屋だ。

最大の人気は、地元食材を使った郷土料理を16個の小皿に盛り付けて提供する、見た目も美しい「おがわ四季御膳」だが、もうひとつ、人を惹きつける大きな魅力がある。

景観だ。それも昔からある景観ではない。準備委員会で福島市の花見山を視察し、「小川にも花見山を」と、1・3haの山林に桜やコブシなど、これまでに8000本以上の苗木を植え続けてきた成果だ。現在はもみじ山も造成中。地域資源を活かすどころか、新たな地域資源を自ら創り出しているのだ。

これらの活動の基盤にあるのは、公民館を核にした以前からの地域自治活動だ。準備委員会では、作小屋村がオープンするまでの2年間、総務企画・商品生産加工・イベント・景観施設と分野別に専門部会を設置し検討を重ねてきたが、その回数は、会議、打ち合わせ、研修などを合わせて計100回に及ぶという。

また、花見山の山林は地区の共有林組合が提供し、植樹は住民のボランティア作業。日頃の山の管理や沿道美化作業も地区住民たちが担う。

表面には見えにくいこの地道な地域自治の力が、作小屋村の華やかな成功を支える最も重要な地域資源ではないかと強く感じた旅だった。