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日本の食を支える豪雪地帯

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年1月21日

民俗研究家 結城 登美雄(第3067号・平成31年1月21日)

雪崩や落雪事故、雪下ろしや除雪作業中の死亡事故など、この冬も各地から豪雪による被害の報告が次々に届いている。日本は世界でも有数の豪雪地帯を抱えている国である。豪雪地帯とは何か。それは「積雪がはなはだしいため、産業の発展が停滞的で、かつ、住民の生活水準の向上が阻害されている地域」(豪雪地帯対策特別措置法)ということになるが、その適用範囲は日本の国土面積の51%、すなわち19万㎢を占め、自治体数にして24道府県、532市町村に及ぶ。

都会暮らしの人々にとっては、たまに見る雪景色は美しく見えるだろうが、雪は美しいより重いものというのが現場の声。屋根に積もった雪は1㎥あたり150~300kgもの重さがあるという。私はこの20年ほど東北や北陸などの豪雪地帯の村を訪ね歩いてきたが、過疎化、高齢化で住む人を失った空き家や農業施設が雪につぶされ無惨な姿をさらしているのをいくつも見かけるようになり、改めて雪の重圧に耐えて生きる人々の労苦や厳しさを思い知らされた。

昨今の日本は地震、洪水などの自然災害が頻発し、それらへの警戒や対策が説かれるようになったが、もうひとつ、豪雪地帯の雪害についても注意を喚起し、国民的理解の深まりと認識の共有化を図らなければならないと強く思った。その理由のひとつは国民食料の問題と関わる。日本の豪雪地帯を地図で確かめれば、その多くが稲作中心の農業県である。そして食料自給率38%の危うい日本にあって豪雪地帯の県の大半は県別食料自給率が60~200%の高さで、日本全体の食料を支えているのである。しかしすでに2018年の農業就業人口は175万人にまで減り、担い手の多くは70歳以上の高齢者である。そのことをどれほどの国民・消費者が知っているのか。体力の衰えと様々な不安を抱えながら食を支えている豪雪地帯の老農をはじめとする現場の担い手をどう支援し連携していくのか。国民全体に問われている課題である。