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AI等に置き換えられないSI

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年10月15日

東京大学名誉教授 大森 彌(第3057号 平成30年10月15日)

現在は人が行っている仕事のうち、AIやロボットに代替することが可能になる職種がどのくらいあるか、民間の研究機関などから、いろいろな試算が報告されている。最近は「スマート自治体への転換」といって、人口減少に伴う若年労働力の不足を背景に、定型的業務などに関して、自治体でもAI等の活用による業務の自動化・省力化を推進する必要性が強調され始めている。急速にAI化が進むことになるかもしれない。

AI等の研究と活用が進めば、逆に、AI等の代替が難しいと思われる仕事もはっきりしてくることになる。自治体でいえば、職員でなければできない仕事とは何かを見極めていくことになる。いまのところ、創造性が必要な業務とか非定型な業務は人が担うことになるものと見られている。 

広くは「ソーシャル・インテリジェンス(SI、社会的知性)」を必要とする仕事も、その一つとされる。SIとは、人間同士の相互関係の中で他者の感情を共感的に読み取って、協調的に行動していくことができる能力のことで、理解・説得・交渉といったコミュニケーション力や自分と異なる他者と協調・協働できるコラボレーション力である。

特に、SIは、リーダーの立場にある人には必須の条件であるといえる。組織集団の目的を達成していくためには、十人十色のフォロアーの自発的貢献を引き出せるような能力が必要である。

社会的知性の高いリーダーは、相手と向き合い、相手がどのように感じ、なぜそう感じたかを察知し、相手が肯定的な気持ちになるように対応できる人である。これを逆に言えば、社会的知性に問題があるリーダーとは、なかなか話が通じず、人を疑ってかかり、相手に威嚇的で尊大な態度をとり、気難しくて自己中心的で、優柔不断で、しかも不誠実、といったイメージになろうか。リーダーの資質に乏しい人がリーダーの地位についていることが組織にとって最大のダメージになる。

SIはAI等では代替が難しい能力だとすれば、SIに難点があるリーダーをいかに減らすか、言い替えれば、SI人財をどのように育成するかは普遍的で永続的な課題であるといえる。