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村民が支える村の給食

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年6月1日

法政大学名誉教授 岡崎 昌之(第3041号・平成30年5月28日)

市町村議会のあり方について、一石を投じた高知県大川村。「議会を廃止して村民総会の設置を検討する」という報道がなされ、多くのマスコミが殺到した。村では「村議会は絶対に守る」という決意で、県と「議会維持対策検討会議」を設置し、総務大臣宛に「村議会維持に向けた提言」も提出した。

今年3月に村を訪れ、旧知の村民や若い移住者、役場関係者から話を聞いた。「さびれた山村、議員のなり手無し」を強調する報道とは裏腹で、「じっくり話せばなり手はいる、移住者も増えた、報道のおかげで関心を持ってくれる人も多い、県外ナンバーの車もよくみる」という前向きの反応だ。昨年7月の村民アンケートでも「立候補したい」「政策への理解、議員報酬など課題が解決すれば立候補したい」が24人で、回答者の1割を超えた。

高知県では尾崎知事が熱心に先導し、平成24年から集落活動センターの取組がスタートした。現在、県内42か所で活発なまちづくりの拠点となっている。大川村でも旧保育園を改装して、集落活動センター結いの里を開設した。食の提供、買い物支援等が主な機能だが、なかでも保育園や大川小中学校への給食の取組が特筆される。これまでは3町村での共同方式で、調理施設は村外にあり、村の子供たちに届くときには冷めてしまっていた。

温かい給食を子供たちに食べさせたいと、村単独の給食が平成28年4月から始まった。できる限り村内農家の生産する食材を使おうと、農家と給食センターを繋いでいるのが集落支援員の和田将之さんで、地域おこし協力隊を経験し、地元女性と結婚した群馬県からの移住者だ。積極的に農家に働きかけ、現在では20戸が、野菜、山菜、肉類等を提供している。子供や孫が食べるならと、力を入れるお年寄りも増えてきた。地産消費率は重量ベースで61%、品目ベースでも51%(平成29年度)になる。子供たちと農家との交流も始まり、食育にも大きな効果がでている。

小さい村だからこそ、村を担う人財、活用可能な価値や資源が住民に可視化されやすい。小規模の良さを最大限に活かした食の試みに期待したい。