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穏やかな離島の意義ある動き―沖縄県久米島町―

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年5月15日

早稲田大学名誉教授 宮口 侗廸(第3039号 平成30年5月14日)

この3月、2年ぶりに久米島を訪れた。久米島は沖縄本島の西100㎞に位置する面積約60㎢の島で、8000人弱の人が住む。沖縄には隆起サンゴ礁のみでできた平らな島と、海底火山が隆起した山のある島がある。サンゴ礁のみの島は雨水は地下に消えるが、山があると小さな川らしきものができる。水田ができるのは山のある島に限られ、久米島はその代表格の島であったが、その水田は今ほとんどがサトウキビ畑となっている。地下水に恵まれ、泡盛の名産地でもある。近年は楽天イーグルスの春キャンプ地として知られるようになった。海は素晴らしいが、那覇からフェリーで4時間以上かかり、飛行機も小さいため、観光客が押し掛けるという雰囲気ではなく、今も穏やかな雰囲気の島である。

初めて訪れたのは約40年前である。島を一周する道路を走る地元の車の速度が遅いことにまず驚いた。米づくりを基盤に、長い年月スローな暮らしが可能だったことのあらわれに違いないと、当時考えたことを思い出す。そして一昨年までほぼ20年、2月終りに4年のゼミの総仕上げとして、サトウキビ農家のキビ刈りを1日お手伝いする訪問を毎年繰り返してきた。

久米島にはかつて仲里村と具志川村の2村があり、平成14年に合併して久米島町となった。唯一の高校である久米島高校の生徒数減少に危機感を持った町は、平成23年に「久米島高校の魅力化と発展を考える会」を立ち上げた。先進例である島根県の海士町にも学んで、町教育委員会に久米島高校魅力化支援員を採用し、外部からの離島留学生のための里親補助制度を導入した。26年度には5名の留学生が入学している。

さらに町は、28年度に「じんぶん館」と称する、留学生のための寮を兼ねた町営塾「久米島学習センター」を新設し、そこのハウスマスターの女性2人を地域おこし協力隊として募集した。加えてここは、別の地域おこし協力隊4名の学習指導で、中学生の学力向上のための場ともなっている。29年度の高校留学生は12名に増えた。ちなみに高校への支援には過疎債ソフトが活用されている。

過疎町村の高校の魅力化の取組をこの欄でいくつも紹介してきたが、長年学生につき合っていただいた久米島でも確かな歩みを取材することができ、嬉しかったことは言うまでもない。