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愛知県豊根村/みんなで豊根おこしが合言葉!~住民総力の村づくり~

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年4月9日更新

芝桜の丘

観光客を集める茶臼山高原「芝桜の丘」


愛知県豊根村


3036号(2018年4月9日) 豊根村 地域振興課

愛知のてっぺんの村

人口1,200人と、愛知県で一番人口の少ない小さな自治体である豊根村。名古屋からは車で約2時間半、長野県と静岡県の県境に接し、愛知県最高峰の茶臼山を有する「愛知のてっぺん」の村です。村の面積155.88㎢のうち93%が森林に覆われ、標高148~1,415mと約1,200mの標高差を有し、山々と渓谷が織りなす自然豊かな地勢にあります。

昭和20年代に5,000人ほどだった人口は、ダム建設や林業など地場産業の不振から過疎化が進み、いまや4分の1ほどに。その構成も高齢化率が48%と、全国に先駆けて高齢化がいち早く進んでいます。

そうした状況の中、天竜奥三河国定公園の指定を機に、休暇村の誘致や茶臼山高原スキー場、日帰り温泉整備等の観光開発を進めてきました。平成19年からは、愛知県で有数の観光地である茶臼山高原に日本で一番標高の高いところにある「芝桜の丘」を整備し、東海地方の新しい観光スポットとして人気を集めています。

さらに豊根村では、平成25年の観光交流人口60万人を、平成32年には年間100万人にすることを目標とした「豊根村観光交流アクションプラン・めざせ100万人!」を新たに樹立し、様々な観光プランや地域産業の創出を進める取組を進めています。

住民総力の地域自治

豊根村の過疎化が始まったのは昭和40年代から。佐久間ダムと新豊根ダムの2つのダム開発により集落が水没をし、さらに主要産業であった林業における木材価格の低迷が追い打ちをかけました。ダム開発以前は5,000人台だった人口は、平成に入る頃には1,000人台へと減少しました。行政も公営住宅整備や生活基盤対策、都市山村交流などによる定住対策に力を入れましたが、人口減少に歯止めがかかりませんでした。こうした状況を打破するために、豊根村では、行政主導の村づくりから、住民協働の村づくりに方針転換を図り、「みんなで豊根おこし」を合言葉にした村づくりを進めてきています。

その中心となっている取組が、地域の自治組織である行政区を中心とした住民の手による自治です。

豊根村には5つの行政区があり、それぞれで自治会活動が行われてきましたが、その組織に、従来、各団体などで取り組んできた防災・防犯活動や環境美化活動などの諸活動を集約させました。さらに、村全体で実施してきた敬老会事業や福祉事業などを地域の自主性に任せた運営とすることで、住民主導の仕組みを作りました。

その活動経費には、使途自由な「豊根村地域づくり支援交付金」を支給。各行政区ごとに、その地域にとって必要な取組を住民自身が自主的に協議、決定して実施する仕組みを進めてきました。また、地域の道路や施設の修繕など、住民がボランティアで実施する場合に原材料を全額補助(上限80万円)する「豊根村地域協働支援事業」やイベント開催などを定額支援する「豊根村特色ある地域づくり支援事業」を創設し、「地域のことは地域で」を基本に地域づくりを進めています。

現在では、道路の簡易修繕やゴミステーション設置、集会施設のリフォームなど地域に必要な整備は、住民自ら発案し実施するようになってきています。また、地域での敬老行事や区民交流会、桜の植栽による景観整備なども、それぞれの地区ごとに実施方法を工夫し、取り組みやすい方法で進めています。

村の中心集落

村の中心集落。村内に40の集落が点在する

協働支援事業で実施した道路整備

協働支援事業で実施した道路整備

観光施設を住民自ら経営

豊根村では、そうした住民自らで取り組む考えをさらに広め、地域にある観光施設の運営も住民主体で取り組む体制づくりを進めてきました。

現在は、村内にある主な交流施設は、すべて指定管理で運営をしています。都市農村交流施設である「三沢高原いこいの里」や、農産物加工や宿泊施設である「とみやまの里」、山村体験施設「大入の郷」など、住民自らが運営組織を立ち上げ、行政からの指定管理による運営を実施しています。

その中の一つに、愛知県内で指定第1号の道の駅「豊根グリーンポート宮嶋」の運営に取り組む「茶臼の里合同会社」があります。

平成27年4月、老朽化した道の駅「豊根グリーンポート宮嶋」の新築リニューアルオープンに合わせ住民自らが発案し、道の駅施設の運営組織となる会社「茶臼の里」を設立。道の駅の農産物販売とレストランの運営を開始しました。豊根村の地元農産物や魚などの山の幸を活かしたメニューは大好評で、改装前は年間3万人ほどの来場でしたが、リニューアルオープン後は、年間約15万人が訪れるなど、観光拠点として成長しました。農産物販売も以前の6倍の売り上げとなり、豊根村特産トマトやブルーベリーをはじめ、ナスやキュウリなどの四季折々の地元野菜や山菜が、訪れる観光客を喜ばせています。

道の駅豊根グリーンポート宮嶋

指定管理で運営される「道の駅豊根グリーンポート宮嶋」

「道の駅レストランふるさと」を手掛けるおかあちゃん達

手作りの味が人気の「道の駅レストランふるさと」を手掛けるおかあちゃん達

また、「茶臼の里」では、地域に増加する耕作放棄地を活用した「田んぼのオーナー制度」に長年取り組んでいます。これは、田植えから除草、稲刈りまで参加者が行うもので、地域住民はその指導的役割を担い、都市から訪れた方々に楽しんでもらっています。毎年のべ1,000名を超える都市の家族が豊根村を楽しむ交流事業に発展しており、約2haの耕作放棄地が再生しました。

こうした道の駅の運営と交流事業の取組が評価され、「茶臼の里」は、農林水産省の「第3回ディスカバー農山漁村の宝」に選定されました。

このように、観光施設の運営も住民主導で成果を挙げてきています。

田んぼのオーナー制度には多くの都市の家族が訪れる

田んぼのオーナー制度には多くの都市の家族が訪れる

村民の夢から始まったプロジェクト「チョウザメ」

豊根村では平成24年度からチョウザメの養殖をしています。チョウザメ養殖に取り組むきっかけとなったのは、一村民との会話でした。

村づくりの話をしている中で、ある住民から「豊根村のきれいな水を活かして淡水魚養殖に取り組むことならできるのではないか。」「せっかく行うのであれば、世界三大珍味のひとつ、キャビア生産に挑戦するのが面白いのではないか。」という提案があり、豊根村の新しい地域産業創出を促す「起業家支援補助金制度」を活用して、チョウザメ養殖実証を行うこととなりました。

その後、養殖実証は紆余曲折があったものの、村民の努力によりチョウザメ養殖技術を確立し、平成28年11月からは魚肉の販売を開始するまでに成長しました。

現在は、約3,500匹を養殖し、村内4か所のレストランや旅館でチョウザメ料理を提供し好評を得ています。村民は仲間と「豊根フィッシュファーマーズ」を立ち上げ、養殖を拡充するとともに「今後、キャビア生産ができれば」と意気込んでいます。

豊根村内のレストランでは新しい特産品「チョウザメ」を使ったチョウザメ料理が楽しめる

豊根村内のレストランでは新しい特産品「チョウザメ」を使ったチョウザメ料理が楽しめる

できることは自分でやる 地域づくり

豊根村では、このように村づくりを住民の総力で取り組んでいます。

観光面では、平成26年度に丸1年ほどかけて住民手づくりの観光振興のための計画「豊根村観光交流アクションプラン・めざせ100万人!」を作りました。

このプランは、行政が主導し、住民や各組織が、それぞれ自分たちでできることを「みんなで考えた100万人にするためのアクションプラン」として取りまとめたものです。「四季の豊根鍋をつくろう」や「みんなが宣伝マンになろう」「ダムを活かそう」など具体的なアイデアを行政と住民が共有し、それぞれが実施できる観光振興に取り組んでいます。

豊根村にある2つのダムを模した5種類の「ダムカレー」も好評

豊根村にある2つのダムを模した5種類の「ダムカレー」も好評

ほかにも、「がんばらマイカー制度」があります。豊根村には、タクシーや民間バス事業者がないため村営でバスを運行していますが、最低限の路線を組んでの運行であり、住民の足を十分にカバーできていない状況でした。

そこで、平成15年度から国の構造改革特区制度を活用し、住民が自家用車で近隣住民を乗せることのできる「がんばらマイカー制度」を設けました。行政が運行管理経費を担い、ガソリン代相当の運行経費は利用者が運転者に支払う仕組みです。現在では地域にすっかり定着し、1,200人の人口ながら、年間1,000件近く運行しています。

住民により運行される「がんばらマイカー」

住民により運行される「がんばらマイカー」

また、民間賃貸住宅がないため、定住促進に向けては村が公営住宅整備で対応してきていますが、そうした公営住宅の整備についても、地域住民が設計から運営まで関わる整備手法として「地域住宅制度」を導入しています。特に設計から住民が関与することで地域ニーズに合った間取りを実現できるとともに、入居者決定を地域住民の手で行うことで、入居後の定住に向けてのフォローを地域で自主的に行う雰囲気づくりにつながっています。

このように豊根村では住民生活に近いサービスは住民協働で実現してきました。民間サービスの少ない本村において、十分な住民サービスを行政が十分に提供することは難しいため、住民と力を合わせて対応しています。

高齢社会の先を総力で

現在、人口1,200人の豊根村の持続可能な地域づくりに向けて、行政と住民が総力を挙げた取組を進めています。

高齢化が進展した豊根村では、平成17年度をピークに高齢者人口数は減少局面に入りました。地方創生に関連して定めた豊根村ビジョンでは、2060年の人口900人を目標とし、その時点において、人口の年齢構成を高齢化率は25%、生産年齢人口57%に改善していくことを目標にしています。これは、人口減少は避けられませんが、各種の対策を講じることで人口構成を改善し、地域経済の活力を維持しようというものです。

豊根村は、小規模な自治体でありますが、さまざまな創意と工夫をしながら行政と住民が役割分担し、総力を挙げて持続可能な地域の暮らしを作っていきたいと考えています。現在、策定中の第6次総合計画(計画期間:平成30~39年度)においても、行政と住民の総力で、人口減少が予測される状況にあっても豊かで持続可能な村づくりを進めていきたいと考えています。