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富山県朝日町/「夢と希望が持てるまちづくり」の実現に向けて~活気や魅力を維持し、持続可能な発展を遂げる町に~

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年4月2日

舟川べり(春の四重奏)

 舟川べり(春の四重奏)見頃:4月10日頃


富山県朝日町


3035号(2018年4月2日) 朝日町長 笹原 靖直

朝日町の概要

朝日町は富山県の東端、新潟県との県境に位置し、海抜0mのヒスイ海岸から標高3,000級の北アルプス朝日岳(2,418m)、白馬岳(2,932m)に至る、ダイナミックなパノラマが広がる自然に恵まれた町です。人口は、平成29年12月1日時点で、12,294人となっています。

「朝日町」という町名は、昭和29年8月1日、人情風俗・習慣及び文化など各分野に共通点を有していた大家庄村・山崎村・南保村・五箇庄村・泊町・宮崎村・境村の1町6か村が合併した際、町が発展するにふさわしい“名”として、名峰朝日岳にちなんで付けられました。

町の総面積227.41㎢(東西21・05km、南北25・01km)のうち約90%が山地で占められ、59.1%が中部山岳国立公園・朝日県立自然公園に指定されている景勝の地です。

「消滅可能性都市」のレッテルが意識の変革に ―人口減少に立ち向かう―

平成26年、民間の政策提言組織「日本創生会議」(座長・増田寛也氏)がとりまとめた増田レポートにおいて、「消滅可能性都市(896市町村)」が発表されました。

朝日町は、このうちの1つに含まれており、ひいては、県内で最も女性人口減少率が高いと予想され、「富山県で一番消える可能性が高い自治体」という不名誉なレッテルを貼られました。このネガティブな位置付けに対し、町では「消えてたまるか!」という気概のもと、柔軟な発想とスピード感を持ち、様々な施策を展開しています。

地方創生が叫ばれる昨今、町では、その一つとして、町民からの公募による「朝日町再生会議」を平成27年1月に設立しました。この会議では、町民のまちづくり意識の醸成や町民への情報発信、町が抱える諸課題の解決に向けた議論を行うとともに、まちづくりに関する提言を行っています。

また、平成27年10月には、「ここまでやらなければ、町は変わらない」を基本コンセプトとし、「“変えるんです”朝日町」をキャッチフレーズに掲げた「朝日町総合戦略」を策定しました。

さらに、平成28年度からは、この総合戦略を重点プロジェクトに位置付けた「第5次朝日町総合計画」がスタート。町民一人ひとりが活躍し、輝き続けられるまちづくりの推進、そして、その先にある「夢と希望が持てるまちづくり」を目指しながら、様々な角度から諸施策を着実に前進させています。

朝日町再生会議 写真
「消えてたまるか!」という気概で提言を検討している朝日町再生会議の様子

子育て応援日本一のまち ―朝日町で育てる―

人口の「自然減」を食い止めることは難しいかもしれませんが、町民のニーズに応じた、切れ目のない施策を打ち出し、「社会減」を食い止めることが必要不可欠です。

晩婚化や女性の社会進出などが要因の一つとなる出生率の低下は、朝日町のみならず、もはや日本全国の課題となっています。そうした中、出生数の増加に向け「生まれる子どもの数を増やすには、どうすればよいか」ばかりではなく、「どのような子育て施策があれば安心して産み育ててもらえるのか」という視点が重要であると考え、これまで、妊娠・出産期から母子までを含めた「子育て環境の整備」に力を入れてきました。

加えて、保育料の軽減や病児・病後児保育、今年度よりスタートした「おうちで子育て応援事業」など、乳幼児期から切れ目のないサポートを実施しています。また、児童館や放課後児童クラブ、中学生給食費補助事業(無償化)など、義務教育期も含めて子どもの居場所づくりや経済的支援を行っています。

出生数を増加へと導くためには、町のみならず、地域も一緒になり、特に若い世代に「朝日町で暮らし、家庭を持ち、子どもを産み育てたい」と思ってもらえるまちづくりを進めていかなければなりません。

朝日町では、夫婦共働きの家庭をはじめ、多様化する子育て世代のライフスタイルに合わせた施策を実施していくことで、子どもたちが笑顔で健やかに成長できる「子育て応援日本一」のまちを目指していきます。

「赤ちゃん広場」 写真
地域のみんなで町の“宝”を育てる「赤ちゃん広場」

移住・定住・交流で賑わうまち ―朝日町で暮らす―

朝日町では、全国の移住希望者を呼び込むべく、首都圏での「移住セミナー」等を利用した情報発信や、実際に町に来てもらい町の魅力を知ってもらう「移住体験ツアー」を実施しています。町の魅力を言葉でどれだけ説明しても伝わる情報には限りがあります。朝日町の良さを実際に来て、見て、肌で感じてもらうとともに、移住してきた方の「生の声」を聞いてもらうことが、効果的であると考えています。また、移住希望者に「朝日町に住もう」と思ってもらうためには、「ニーズに応じた素早い対応」と「幅広い選択肢の提供」が求められます。今年度より、実際に移住してきた方を「移住定住相談員」として配置し、移住・定住、空き家等に関する諸相談に応じる体制を整備しています。

一方で、朝日町に住んでみたいと思っても「地域の風土や人となじめるのか」といった不安要素から移住を決断できないといった声もあることから、町内にある空き家を借り上げて、期間限定(原則1か月以上1年以内)で町の生活を体験できる「お試し住宅」を設けています。現在、町中心部に「まちなか住宅」、山村部に「さとやま住宅」を整備しており、今後、沿岸部にも「しおかぜ住宅(仮)」がオープンする予定です。

人口定着の基盤づくりとしては、住宅地の供給や利用拡大、良好な居住環境を提供していくことが重要です。朝日町では、これまで分譲宅地の整備、住宅取得奨励金交付制度やUIJターン向け住宅の整備など、定住を促進するための制度の充実を図ってきました。その中で、「空き家情報バンク制度」については、如実に成果が現れ、富山県内でもトップクラスのマッチング実績となっており、他自治体から視察に訪れるほどです。

これは、「空き家を持て余している家主」と「手頃な物件を探している方、空き家をリノベーションして利用したい方」等とのスムーズな橋渡しが実現してきており、町内はもとより、町外から人を呼び込むという一つの流れとなってきているからだと思います。このような「今あるものを有効活用する」ことが、町を活性化させる基本となると考えています。

とやま移住・転職フェア 有楽町 写真
とやま移住・転職フェア(東京・有楽町にて)

生涯健康で活躍できるまち ―朝日町で働く―

豊かな自然条件を活かした「農林水産業」が盛んな朝日町では、稲作を中心とする農業は主要産業です。しかし、農林漁業従事者の超高齢化や後継者不足が深刻な問題となっており、それらの衰退を防ぐためには、経営効率化や担い手の育成、生産力の強化と6次産業化を図り、地産地消を推進していかなければなりません。

農林水産業への逆風が吹く中、平成28年3月に発足した若手農業者・漁業者で構成する「あさひ担い手ネット」は、農薬の使用を抑えた特別栽培米をつくり、販路開拓に取り組むことで、町の1次産業の底上げを目指しています。また、同年より「農業インターンシップ」を開催し、首都圏等から農業に関心のある大学生を呼び込んだ「農業体験」を実施。農業への理解、就農へとつなげる取り組みを積極的に行っています。

加えて、企業誘致施策においては、平成29年4月、富山大学発のベンチャー企業「(株)アムノス」が手掛ける産学連携による再生医療向け乾燥羊膜の製造工場の誘致に成功するなど、トップセールスにより企業誘致を進めています。

また、町民を雇用した事業所及び雇用された町民への雇用創出奨励金の交付や、まちなかでの起業を応援する制度を創設するなど、「雇う方、働く方、新たに起業する方」への支援制度も充実しつつあります。

「あさひ担い手ネット」のメンバー 写真
第一次産業の底上げを目指す「あさひ担い手ネット」のメンバー

あさひまちバス(公共交通) ―対前年同月比増63ヶ月連続達成―

高齢化率の高い朝日町にとって、今後さらに交通弱者が増加することが予測される中、ニーズに応じた利便性の高い公共交通サービスの確保に努めていく必要があります。

朝日町では、公共交通として平成24年12月に、京都大学の社会実験として「公共バス」に加え、「あさひまちバス」の運行を開始しました。その後、京都大学より町が引き継ぎ、平成26年4月からは公共バスと統合し、新たな「あさひまちバス」として現在も運行しています。

このような中、利用者は年々増加を続け、社会実験を開始した平成24年度には1万2千人あまりだった利用人数が、平成28年度には、3万3千人を超え、利用者は4年間で2・7倍にも増加しました。また、運行を開始した平成24年12月から平成30年2月まで、63ヶ月連続で1日あたりのバス利用者人数が、対前年同月の実績を上回る記録を達成し、マスコミ等で大きく取り上げられ、全国的にも大変価値のある事例となったものと考えています。

今後も町民の重要な移動手段として、皆さんに愛される「あさひまちバス」となるよう、さらなる利便性の向上と利用促進に努めていきます。

あさひまちバス 写真
対前年同月比増63ヶ月連続達成した「あさひまちバス」

町民が主役のまち ―点と点を「線」に、線と線を「面」に―

最近では、地域おこし協力隊や地元の若い力によるイベントなどで町が活気づき、所々に「明るい兆し」が見えてきています。魅力あるまちづくりを推進していくためには、行政と町民が互いに手を取り合い、共に汗を流していかなければなりません。

朝日町は、行政と町民との距離が近く、情報の行き来がしやすい「コンパクトさ」が強みです。行政が積極的に地域に入り込んで情報交換し、町の財政状況や将来計画等に対する、「正しい情報」を提供していく必要があります。あらゆる角度から正しい情報「点」を発信することで、双方向の理解「線」から、やがては町全体の認識「面」へと広がり、町民の意識が変わっていくことを期待しています。

「夢と希望が持てるまち」をつくるのは、行政ではなく、あくまで主役である町民の皆さんです。私たち行政は、その活躍の後押しができるよう、常に先を見据えた町政運営に取り組んでいかなければなりません。

ヒスイ海岸、舟川べりの「春の四重奏」、ビーチボール競技など、朝日町には魅力あふれる素材がたくさんあります。これからも新たな魅力づくりにチャレンジしつつ、町に「今あるもの」をさらに活用すべく、町民の皆さんと知恵を出し合っていきたいと思っています。

富山県朝日町 地域おこし協力隊 写真
様々なイベントを企画し町に活気を与える地域おこし協力隊