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広島県大崎上島町/[教育の島」づくりによる活性化

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年3月26日更新

みかんと景色
みかんと景色 


広島県大崎上島町


3034号(2018年3月26日)大崎上島町長 高田 幸典

大崎上島町の概要

大崎上島町は、瀬戸内の中心部に位置する、温暖な気候と自然豊かな町です。芸予諸島に浮かぶ大崎上島、生野島、長島、契島などから成り立っており、本島と属島を含め約43・3㎢の面積を有しています。

島の中央部に位置する瀬戸内海国立公園指定の神峰山(かんのみねやま)は、「しま山100選」にも選ばれ、頂上より大小115の島を見渡すことができ、数えられるその島の数は、日本一といわれています。

島へのアクセスについて、本州(広島県)とは、竹原市・東広島市と高速船・フェリー航路で結ばれており、所要時間は、高速船では最短で竹原港からメバル港間が11分、フェリーでは竹原港から白水・垂水港間が25~30分、安芸津港から大西港間が35分となっています。また四国(愛媛県)とは、今治市とフェリー航路が結ばれており、所要時間は天満港から今治港間が70分となっています。

空から見た大崎上島町
空から見た大崎上島町

進水式の様子
進水式の様子

1619年(元和5年)に、中野村、原田村(旧大崎町)、東野村(旧東野町)、沖浦、明石方村(旧木江町)となり、歴史の変遷を経て、2003年(平成15年)4月1日に、大崎町、東野町、及び木江町が、市町村合併特例法に基づき、対等合併し、現在の大崎上島町が誕生しました。

人口は、7、765人(平成29年9月末現在)、また高齢化率は47・26%(平成29年9月末現在)で、県内の他市町と比べても非常に高い水準にあり、少子高齢化が深刻な問題となっています。

主要産業は、江戸時代から続く造船業と、みかん、レモンなどの柑橘栽培を中心とした農業で、最も売上が高い業種は、造船業となっています。近年では、レモンの栽培などに力を入れ、農協単位(JA広島ゆたか農協)では、日本一の生産量を誇っています。ブルーベリー(アントシアニンの含有率が日本一)や、しいたけ(県内の生産量の6割)の栽培も行われています。

また、新たなエネルギー開発の試験機関として、長島の中国電力大崎発電所敷地内に、大崎クールジェン(株)(中国電力及び電源開発が共同出資により設立)が、酸素吹石炭ガス化複合発電実証試験発電施設を建設し、平成29年3月に試験運転を開始しています。

木江十七夜祭での櫂伝馬競漕
木江十七夜祭での櫂伝馬競漕

観光分野では、伝統文化である櫂伝馬競漕がメインの木江十七夜祭、東野住吉祭りなどがあり、大串、野賀海岸の海水浴と共に、毎年7月8月は観光客でにぎわいます。

平成28年7月には、観光案内所がオープンし、利用者が月1、000人を超えるなど、島の魅力、情報を発信し続けています。

継続的な情報発信の効果も徐々に表れており、Iターン者の方が島内で、ウェブデザイナー、コンサルタント等の新たな仕事を展開しています。

また、体験型修学旅行の誘致により、平成25年から積極的に取組を開始し、現在は、年間3、000人を超す修学旅行生が島で民泊の体験をし、島の魅力に触れていただいており経済効果も生まれています。

「教育」をキーワードとしたまちづくり

平成17年3月に、すべての政策の最上位計画として「海景色の映えるまち~地域資源を活かした理想郷の実現~」を掲げ、元気に住み続けたい気持ちを実現するまちの他、5つの基本目標を設定し、大崎上島町第1次長期総合計画が策定されました。現在は、第2次長期総合計画を策定し(計画期間:平成27年度~36年度)、第1次の計画を継承しつつ、各種事業・政策を実施しています。

神峰山からの眺め
神峰山からの眺め

この中で現在、大崎上島町が最も力を入れているのは、「教育」による島の活性化です。

国が進める地方創生事業で、大崎上島町地方人口ビジョン、まち・ひと・しごと総合戦略を平成27年10月に策定し、同戦略の中で最重要項目として掲げた「多様な人材を育てる教育の島づくりを進める」というキーワードのもと、教育機関の誘致を目標に掲げ、各種事業に取り組んでいます。

「教育の島」創造事業

地域再生計画を策定し、地方創生推進交付金を活用して、平成28年度より3か年の期間で「教育の島」づくりを本格的に実施しています。

教育の島創造コーディネーターを設置し、島内の保育園・幼稚園・小学校・中学校・高等学校・高等専門学校・大学誘致団体が一同に介して、「大崎上島町教育の島創造協議会」を設立し、教育交流の推進を目指して、28年度から事業を展開しています。

平成29年度は、交流の指針となる「教育の島交流構想」を策定し、団体間の具体的な交流のあり方をまとめていく考えです。例えば、教育関連企業との連携による教育教材の開発、教育交流・定住体験・保護者の職業体験を合わせた家族向けモデルツアーの実施、海外向け観光PR(HPの作成)、アショカ認定大学の教授陣と地元高校生との交流等も実施しています。

公営塾の風景
公営塾の風景

大崎海星高等学校魅力化 推進プロジェクト

平成26年2月に、広島県教育委員会から「今後の県立学校の在り方に係る基本計画」が発表され、その内容は、全校生徒数が80人以上となることを目指して「学校活性化地域協議会」を設置し、市町と連携しながら運営を進めるというものでした。

併せて、平成29、30年度の2年連続で、全校生徒数が80人未満の学校は、統廃合も含めた検討を行うという、厳しい内容のものでもありました。平成23年度は全校生徒が81人であったのに対し、平成26年度は67人まで減少し、地元中学からの入学率も平成23年度の39%に対し、平成26年度は30%に落ち込んでいる現状もありました。

こうした現状の中で、町では、高校への入学者を増やす対応策として、大崎上島学の推進、公営塾の運営、教育寮の整備の3本の柱をメインとした高校の魅力化プロジェクトに取り組み、推し進めてきました。

「大崎上島学」では、専門家の監修により、大崎上島の良さを生徒全体に実感させ、島を誇りに思う生徒を育てることを目的とした「大崎上島学」事業を推進しています。また、神峰学舎(かんのみねがくしゃ)を中心とした、「公営塾」を運営し、生徒の学力を高め、また、生きる力も併せて育てる教育を行っています。公営塾の講師として、地域おこし協力隊員4人を町が雇用しています。「教育寮」については、民間会社の単身寮を町が借り受け、通学が困難な生徒に対して、寮として提供しており、現在、宿泊機能を備えた大崎上島町学習交流センターを建設中で、平成30年度からは、基本的にはその施設を活用する予定となっております。

高校魅力化推進プロジェクトを進めた結果、現在、平成29年度の入学者数は39名となり、全校生徒は87人まで増加しました。

広島県立広島叡智学園の誘致

「多様な人材を育てる教育の島づくりを進める」という施策を進める上での重要評価指標(KPI)について、新たな教育機関の誘致を掲げていましたが、本町大串地区に、県立の国際バカロレア・ディプロマプログラムの資格を取得することが可能な併設型中高一貫校の誘致が決まりました。平成31年4月からの開校予定で、全校生徒は300人(中学校120人、高校180人)の全日制課程普通科です。全寮制で、自然豊かで快適な環境の中、プロジェクト学習や、実践的な英語学習、また、国際バカロレアディプロマプログラム等、グローバルな人材が多数育っていくことが期待されます。

COAサマースクール実施風景
COAサマースクール実施風景

COA誘致構想

アメリカメイン州にある、地域課題解決型プログラムを進めるアトランティック大学(アショカU認定校)は、本町と同等程度の面積、人口を有し、自然環境も非常に類似した大学です。

本町にこの大学のサテライト校誘致を進める団体((一社)東アジア初のアショカUを発足・支援する会、Ashoca U Sapporting Team)が設立され、様々な取組が始まりました。本町も平成28年1月18日に、MOU(覚書)を締結し、サテライト校誘致に向けた様々な可能性を探求するために誘致団体と連携して、誘致活動をサポートしています。平成28年度からは、COAを中心とした海外16名、日本8名の生徒により、10日間、大崎上島を舞台としてサマースクールのプログラムを開始し、本町が抱える課題解決に向けて、生徒たちから提案を受けるなど具体的な取組が始まりました(平成29年度も継続して実施)。

平成29年6月実施の「教育の島」を考える公開シンポジウムでは、COAの他、ハミルトン大学、コーネル大学、ブラウン大学、ニュースクールの教授陣を招聘し、地元高校生との積極的な交流活動の他、各学校の取り組んでいる事例発表が行われました。

泊体験学習の様子(シーカヤック体験)
泊体験学習の様子(シーカヤック体験)

新しい形態での教育

SNSが目まぐるしく進歩する現代では、教育の形も、多種多様に変化しています。

例えば、カドカワドワンゴ学園が手掛けるネットの高校(N高校)について、学園より、瀬戸内海の自然を使った職業体験を手掛けたいという要望がある中で、本町においても、教育交流の一環として、民泊を含めた体験活動プログラムに協力しています。28年度は、レモンのレシピを作って町のPRを行うという題材で研修を実施し、料理サイトクックパッドに実際にレシピを投稿し、町のPRを行っていただきました。

同様に、県内の複数の大学(広島大学、広島国際大学、安田女子大学等)とも、定期的に交流活動を実施しており、島の自然を活用した教育交流が広まっています。

美しい島々を望めるきのえ温泉
美しい島々を望めるきのえ温泉

二子島の夕日
二子島の夕日

おわりに

今、全国の市町村が、それぞれの町の特色を最大限に活用し、まちづくりを進めています。本町におきましても、今回ご紹介させていただいた事業内容のとおり「教育の島」として、全国的に認知いただけるようなまちづくりを進めていきたいと考えています。

自然と人情豊かな、そして海景色の映えるまち、「大崎上島町」に、ぜひ一度お越しください。心よりお待ちいたしております。