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山形県最上町/地域資源を活かした持続可能なまちづくりの推進

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年2月19日更新

地域資源を活かした持続可能なまちづくりの推進

国の重要文化財「封人の家」

国の重要文化財「封人の家」


山形県最上町


3031号(2018年2月19日)  最上町長 髙橋 重美

最上町の概要

最上町は、山形県の北東部に位置し、山間部では秋田県と、また町を東西に走る国道47号を通じて、宮城県大崎市と隣接しています。その宮城との県境には、おくのほそ道紀行の途上、松尾芭蕉が宿泊し、句を詠んだとされる国の重要文化財の「封人の家」が構えています。  

町は奥羽山脈に抱かれ、中央部に小国盆地が広がり、農業を基幹産業に、園芸や畜産が盛んであり、温泉資源に恵まれた農業と観光の町です。

町の面積は、330.37平方キロメートル、人口は約8千9百人です。冬季間の降雪量は多く、冬季国体が開催された町営赤倉温泉スキー場は、家族連れから競技スキーヤーまで、幅広い層のニーズに応えられる施設となっています。

町を東西に流れる最上小国川は、最上川に注ぎ、鮎等を求めて多くの釣り客を招き入れています。

古を顧みると、山形県縄文文化を代表する水木田遺跡が昭和53年に出土し、秀麗な完形土器が多数出土しました。中世には、最上義光の家臣、小国日向守が小高い山を利用して山城を築造し、現在はその形をとどめぬものの、地元ではその跡地を「お城山」と呼びならわしています。

近年、高齢化社会の到来が急を告げる中、町は平成3年から、保健・医療・福祉が連携し、地域包括ケアを目指す「ウエルネスタウン構想」のもと、生涯住み慣れた町で健康に過ごすことを目的に施設整備と体制の構築に取り組んできました。

平成17年からは、町域の84%を占める森林を保全すると共に、環境に配慮しながら経済の活性化につなげるため、間伐材由来の木質バイオマスエネルギー事業に取り組み、平成27年度には「バイオマス産業都市」の認定を受けるに至っています。

最上町を西から臨む風景

最上町を西から臨む風景

地域包括ケアに支えられる健康と福祉のまちづくり

町は、町民の皆さんが「健康な体・健康な心・健康な社会生活」を維持することを目指し、『ウエル』をもとに、より良いが名詞化された造語として『ウエルネス』を用い、全国に先駆けて保健・医療・福祉サービスを一体的に行うウエルネスプラザを整備しました。病院・健康センター・高齢者総合福祉センター・介護老人保健施設等が集うプラザでは、地域包括ケアシステムが構築され、「より積極的な健康づくり」を目指しています。健康センターでは居宅介護支援事業所への支援や福祉と介護に関する相談業務等を行い、高齢者の保健・医療・福祉のコントロールセンターの機能を果たす「地域包括支援センター」を配置しています。この他、「高齢者総合福祉センター」には、温泉入浴場・憩いの部屋・フィットネスルーム・トレーニングルームが整備され、老若男女が集い健康増進を図っています。

フィットネスルームの健康づくり

フィットネスルームの健康づくり

環境配慮を基軸に、林業と地域経済の活性化に向かうまちづくり

① 森林を取り巻く状況  

町域の16.8%が民有林、67.6%が国有林、合わせて84.3%が森林に覆われる最上町は、まさしく森と共に生きる町といえます。昭和50年前後には、木材需要の高まりと合わせ、造林が町内一斉に行われましたが、その後、森林整備(間伐)が進まず、日差しに乏しい、痩せた森林状況が至る所に見受けられるようになってしまいます。

② 木質バイオマスエネルギー事業への挑戦

その状況を改善するためには、間伐作業がまず求められ、町はその作業から発生する間伐材をエネルギー資源に代えることで、経済循環を起こそうと、平成17年からNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の実験事業に取り組みました。森林に光を投げかける間伐作業を効率的に行うため、高性能林業機械の導入はもとより、作業計画にGIS(地理情報システム)を用いることで、ルート設定からその数量の把握まで詳細に行うことができるようになりました。

間伐作業を行い、材をチップに製造する新たな企業の存在がそれらを可能にします。間伐チップが木質バイオマスボイラで燃焼され、地域熱供給することで、従来の化石燃料に置き換わり得ることが実証されました。そして脱二酸化炭素社会を実現しながら、間伐チップが燃料源として商品になることで、経済循環システムが確立されました。

この実験事業が、前述する「ウエルネスプラザ」において行われ、よりクリーンな環境が健康を目指す施設エリアにて実現出来たことは意義深いものと考えます。

高性能林業機械による間伐作業状況

高性能林業機械による間伐作業状況

  

③ 総合的な再生可能エネルギー導入に向けて

木質バイオマスを活用した再生可能エネルギー導入の成果が実証され、森林整備(間伐)の進捗も勢いを増す中、平成23年に東日本大震災が発生し、いよいよエネルギーの分散化が求められるようになりました。当町においては、改めて再生可能エネルギーの導入に明確な目標を設定するため、平成24年に「最上町スマートコミュニティ構想」を策定し、2020年までに、町のエネルギー使用総量の20%を再生可能エネルギーに代替し、更に20%の省エネ目標を掲げ、次代に責任を持って環境を守るまちづくりを目指し取組を強化しました。

その方向性を産業の振興につなげながら、持続可能なまちづくりを推進するため、これまで培ってきた木質バイオマスの利活用に加え、作物残渣や堆肥等の農業系バイオマス、生ゴミ等の廃棄物系バイオマスも含めたエネルギー利用を目指す構想を打ち出し、平成27年には「バイオマス産業都市」の認定を受けることが出来ました。

木質バイオマスボイラ

木質バイオマスボイラ

子育て大国を目指すまちづくり

町は、次代を担う子ども達が健やかに育まれる環境の整備に、いち早く取り組んできました。平成20年には幼保一元化のもと、子育てをする世代の幅広い応援に資するため、保育所・幼稚園・子育て支援センターを「すこやかプラザ」として一体的に整備開始。中学生までの医療費の無償化を平成23年から、保育料の無償化も平成27年から行い、きめ細かな支援を通じて、子育てしやすい環境づくりを目指して来ました。  

町は、森と共に生きる意義を幼少の頃から伝えようと、これまで継続して来ている出産育児応援交付金に加え、今年度から木をかたどった積み木のプレゼントを始めました。町の木材を使い、町の方々に心を込めて製作いただく中には、地元高校生の皆さんがヤスリ掛けから彩色まで行い、手紙を添える過程も含まれています。このように地域全体で子育てを応援する姿勢が着実に広がっています。

木をかたどった積み木

木をかたどった積み木

子育て支援センター「ひまわり」

子育て支援センター「ひまわり」

移住・定住の促進

町は、平成27年度から28年度にかけて、「若者定住環境モデルタウン」を整備しました。現在、国・地方を挙げて取り組む地方創生の背景には、進む少子高齢化に適切に対応して行かなければならない差し迫った社会情勢があります。  

当町においては、これまで培ってきた環境配慮型のエネルギー施策をこのモデルタウンへ意欲的に導入しています。分譲地譲渡7世帯分、建売モデル住宅6世帯分、賃貸住宅10世帯分の合わせて23世帯全ての住居には、木質バイオマスを燃焼させて取り出す熱によって暖房と給湯が行われます。民間住宅への木質バイオマスエネルギー供給は、全国に先駆ける取組といえます。

更に、モデルタウン内の道路には、地下水を利用して熱を取り出しながら路面を温める融雪設備を導入しています。雪の多いこの町でも、冬の日常生活を快適なものとする必要があります。モデルタウンは、前述する子育て支援施設「すこやかプラザ」に隣接しており、これまで町が指針として取り組んできた環境に配慮され、子育てに優しい場の創出と言う形で実を結んできています。

若者定住環境モデルタウン

若者定住環境モデルタウン

結びに

急速に進む少子高齢化による人口減少局面は、今後益々地方の町村におけるまちづくりに、より大きなインパクトを与えることは間違いのないところです。そうした中、そこに無いものを願っても叶わない現実があります。やはりその地に培われてきたもの、その地が生み出してきたものに磨きをかけ、町民の皆さんが自信と誇りを持って暮らし続けられる環境の創出が、「地方創生」そのものと言えます。  

当町のまちづくりの基本姿勢は、町民の皆さんとの協働にあります。町民の皆さん一人ひとりが主役となり、まちづくりに参画することが、持続可能なまちづくりを支える基盤です。町民の皆さんとの協働による「地方創生」の前進に向け、なお一層努力して行きます。