役場前の水辺で休む白鳥たち
3019号(2017年10月30日) 邑楽町長 金子 正一
群馬県は、ご当地かるたの上毛かるたでは「つる舞う形の群馬県」と読まれており、邑楽町はその「つる」の目の部分に位置します。都心から北に約70㎞の距離にあり、東西約6㎞、南北約7.7㎞で面積は31.11平方キロメートルを有し、利根川と渡良瀬川に挟まれた平坦地です。
町内には平地林が多く点在し、町の東端には毎年白鳥が飛来する多々良沼があります。また、町のほぼ中心には役場や町立図書館をはじめとする公共施設が配置され、自然豊かな田園地帯と、住宅地などの市街地が、程よいバランスで調和した景観を形成しています。
交通は、隣接市町を経由し東武鉄道や東北自動車道、及び首都圏中央連絡自動車道(圏央道)などの交通網で首都圏とつながっています。そのため首都圏へのアクセスも良く、通勤や通学も可能な位置であり、物流にも適した場所に位置しています。
主な産業として、工業については隣接する市町に大きな自動車会社があることから、町内にも自動車関連の工場があり、県内工業出荷額での町村第2位(平成26年群馬県工業統計調査より)を支える主要産業のひとつです。農業については、この地域は古くから米麦が中心の二毛作を行っており、近年では転作としてそばの栽培が多く見られるようになってきました。また、野菜の生産にも力を入れており、中でも特産の白菜を「邑美人(むらびじん)」というブランドとして売り出しています。TVや新聞などの多くのメディアに取り上げられるなど、大変好評をいただいています。
白菜の収穫の様子
ブランド白菜「邑美人」
邑楽町の人口は、平成12年の27,512人をピークに、それ以降は減少に転じています。平成27年には1,086人減少して26,426人、国立社会保障人口問題研究所の推計によると、平成52年には、約20,500人と試算されており、平成12年と比較すると24%も減少してしまうという計算です。
そこで町では「まち・ひと・しごと創生法」に基づき、平成27年に「邑楽町人口ビジョン・総合戦略」を策定しました。この戦略の中には、人口減少を何とか食い止めようと、子育て、雇用、まちづくりなど、まさに「まち・ひと・しごと」に必要な内容が詰まっています。中でも最重点施策として、総合計画にも掲げている「子どもを産み育てやすい環境」の整備を推進しています。具体的には、出産祝い金の給付制度の拡充や、多子世帯の保育料等に係る負担の軽減、また、子にかかる医療費負担の軽減を図りました。
やはり人口の増加のためには、子どもたちの元気な声がたくさん聞こえてくることが一番だと考えます。そのために、子育てをしやすい環境を作り、子育て世代の負担を少しでも軽減できるような取組に力を入れています。
子どもたちは町の宝物です
役場庁舎の北側には高さおよそ60mの高い塔がそびえ立っています。これは「ふるさと創生事業」を活用して、平成5年に完成したシンボルタワー「未来 MiRAi」です。町のランドマークであり、その文字通り町のシンボルとなっています。このタワーは地上約40mに展望室があり、上毛3山(赤城山・榛名山・妙義山)をはじめ、浅間山や男体山、さらには筑波山など、関東の名だたる名山を見渡すことができます。また、最近では冬場の空気が澄んでいるときには、東京スカイツリーを肉眼で確認できることもあります。
広場を彩るイルミネーションとシンボルタワー
しかし、このシンボルタワーは展望台としての役割しか果たせていなかったのが現状で、観光資源や、人が集える場としてはもうひとつ「何か」が足りませんでした。そこで、3年前から冬期限定でイルミネーションイベント「光のページェント HiKARiMiRAi」を開催しています。これは、タワーの周りをイルミネーションで飾りつけるとともに、おうら中央多目的広場の芝生にイルミネーションによる巨大地上絵を描き、タワーの展望室から眺めてもらうというものです。あわせてイベント期間中にはタワー内でコンサートを開催するなど、イルミネーションを眺めながら幻想的な世界の中で音楽を楽しめるイベントになっています。これらのイベントの効果もあって、タワーの来場者数は年々増加傾向にあります。
シンボルタワーの活用についてもう少しお話したいと思います。毎年夏に開催している町の最大のイベント「おうら祭り」では、およそ8,000発の迫力ある打ち上げ花火が目玉となっています。事前応募いただいた中から抽選になってしまいますが、この打ち上げ花火をタワーの展望室で真横から鑑賞できるという、一夜限りのプレミアムな時間を過ごすことができる企画も用意しており、皆さまに大変好評をいただいています。また、元旦にも展望室を開放しており、初日の出を見ることができます。年の初めの大きな太陽が顔を出した時には展望室中に「おぉ~」という歓声が響き渡ります。
光をまとい幻想的な姿を見せるシンボルタワー
町のランドマークシンボルタワーの足元には「あいあいセンター」があります。これは、毎週水・土・日曜日の限定営業ですが、町内の農産物や加工食品を取り扱った直売所で、営業時間中はいつも賑わっており、その季節ごとの人気の商品は早いうちに売り切れてしまうこともあるほどです。
冒頭の概要でも触れましたが、邑楽町の農業は昔から米麦が中心で、転作としてそばの栽培も見られます。そのため、この地域では古くから粉食文化が根付いており、そばやうどんなどの粉を使った粉食文化が栄えてきました。その文化を広める意味もこめて、土・日曜日限定でセンター内に「そば食堂」を営業しています。こちらもとても人気があり、営業時間中は行列ができるほどです。
また、農産物等の地産地消の促進を図るため、今年の3月からランチ提供型の「農村レストラン」を水曜日限定でオープンしました。町内産の安全安心な野菜を中心としたランチメニューを、週替わりで2種類ずつ提供し、各メディアにも取り上げられるなど、開店直後から多くのお客様でいつも賑わっています。また、野菜だけでなく、お米や豚肉も町内産を使用し、他の食材のほとんどを群馬県内産にこだわって提供しています。おしゃれな料理というよりも、どこか懐かしい家庭の味が味わえるというところが人気の秘密なのだと思います。
農村レストランを特集した町広報紙
地域の活性化にはもうひとつ主役がいます。こちらも概要で少し触れましたが、町の東端に位置する多々良沼とそれに隣接するガバ沼に、毎年シベリアから飛来する「白鳥」です。初めてやってきたのは昭和53年でした。それ以降、毎年邑楽町に訪れるようになり、今では観光ツアーが組まれるなど町の人気スポットになっています。最近では100羽を超える飛来数を確認できるようになり、見学に来る多くのお客様やカメラマンの目を楽しませてくれています。
この陰には「白鳥を愛する会」の皆さんによる協力が欠かせないものとなっています。沼周辺の環境整備や白鳥の世話、観光客の対応などを行っていただき、町の観光PRのためにご協力をいただいています。また、毎年1月の最終日曜日には会の主催で「白鳥まつり」が開催されています。毎年1,000人を超えるお客様にご来場いただき、白鳥たちの優雅な姿を楽しんでいただいています。また、役場庁舎のあるおうら中央公園内にも水辺があり、そこにも白鳥が羽を休めに来ることがあります。役場庁舎から白鳥が間近に見られるという環境は、県内で唯一といってもいいでしょう。公園の利用者はもちろん、役場に来庁されたお客様の目も楽しませてくれています。
毎年多々良沼に訪れる冬の使者たち
現在、邑楽町では役場庁舎の西側で、中央公民館の建設が進んでいます。昨年の12月から工事に着手し、来年の4月末に完成予定です。完成後備品搬入や音響の調整などを経て平成30年9月にはオープンできるよう、鋭意準備を進めています。
来年のオープンに向けて建設中の中央公民館
邑楽町はこれまでも社会教育の活発な町として知られてきましたが、残念ながら町民の皆さんが一堂に会してイベントを行ったり、芸術文化に親しめたりするような施設がなかったため、特に、中央公民館に備えられるホールには多くの期待が寄せられています。
この中央公民館ホールは、約350席の電動可動席と約140席分の昇降床を備え、少人数のイベントから約500名の催しまで、様々な利用形態での活用が可能となっています。また、舞台から客席、バックヤードの楽屋まで含めて全てフラットな空間となっており、足が不自由なお年寄りや車いすをご利用の方など、どなたでも出演や鑑賞がしやすいように配慮されています。また、県内でも数少ない難聴者支援システムも備えていることから、町内にとどまらず、広域の福祉イベント等での活用を期待しています。
このホールは、日常的な使い勝手を優先して、約500席の中規模ホールとしたため、著名なアーティストや大規模なクラシックの公演などには向きませんが、その分町民の皆さんや近隣のアーティストの皆さんが気持ちよく発表できる素晴らしいホールになると思います。
町では、この中央公民館を使って全国に発信ができるよう、町民の皆さんの自主的な活動を育てるため、音楽、ダンス、演劇の3部門を柱として「中央公民館開館準備事業」に取り組んでいます。既に30名を超える町民吹奏楽団が活動を開始し、町民劇団も活動を開始しました。県内でも珍しい1対1のダンスバトル大会は、遠く宮城県仙台市や長野県松本市からの参加者も含め100人以上が集まり、注目を集めています。これからも、こうした「邑楽町ならでは」の特色ある文化活動を育て、「文化と教育の町おうら」を推進していきたいと考えています。
建設中の中央公民館の完成予想図
邑楽町は来年、町制施行50周年を迎えます。
町制施行当時、人口は1万5,000人、世帯数は3,100世帯ほどでしたが、およそ半世紀という時間を経て、現在人口は約2万7,000人、世帯数は約1万世帯となりました。しかし、先述しましたが決して全てが順調に伸びているわけではなく、全国的な少子高齢化は邑楽町でもさまざまな課題をもたらしています。
課題解決に向けて、これまでの取組を継続、推進していくのはもちろんですが、これまで以上に町民の皆さんと協働のまちづくりを進め、町の魅力をさらに高め、町に暮らす誰もが未来に向かって夢と希望が持てる「やさしさと活気の調和した 夢あふれるまち“おうら”」を町の将来像として、次の50年へ向けたまちづくりのスタートの年にしたいと思います。