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新潟県湯沢町/観光立町・湯沢町が描く「君と一緒に暮らす町」ー観光と暮らしを結ぶ地方創生の実践ー

印刷用ページを表示する 掲載日:2026年9月28日更新

​湯沢町を走る上越新幹線

▲湯沢町を走る上越新幹線


新潟県湯沢町

3374号(2026年9月28日)
新潟県湯沢町


はじめに

 新潟県の南端、群馬県との県境に位置する湯沢町は、豊かな自然環境と温泉、スキーリゾートを有する観光地です。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という有名な一節ではじまる川端康成の小説『雪国』の舞台となった町としても知られています。上越新幹線を利用すれば東京駅から越後湯沢駅まで最短で約70分という優れた交通利便性を備えながら、四季折々の雄大な自然に囲まれた暮らしを実現できる地域でもあります。

アルペンスキーワールドカップ(苗場スキー場)

 令和8年6月末現在の人口は7,664人ですが、年間観光客数は360万人を超えます。特に冬は国内外から多くのスキー客が訪れます。町内にある11のスキー場は、アルペンスキーワールドカップが開催されるワールドクラスのゲレンデから、スキーデビューや雪遊びに特化した施設まで、お客様の多様なニーズに応えられることが最大の魅力となっています。

 また、夏には日本最大級の野外音楽イベント「フジロックフェスティバル」をはじめ、季節の魅力を活かしたイベントの開催や、スキー場を活かしたグリーンコンテンツの造成など、年間を通じて多くの人々が訪れる観光地として知られています。

 しかし、湯沢町がめざしているのは、単に観光客が訪れる町ではありません。観光によって培われた交流人口、交通インフラ、宿泊施設、雇用、情報発信力などを地域の暮らしに活かし、「訪れたい町」から「暮らしたい町」へ発展することをめざしています。

 その思いを象徴する言葉が、湯沢町のブランドスローガンである「観光立町宣言 湯沢町 君と一緒に暮らす町」です。

 観光と移住・定住、来訪者と住民、地域資源と生活環境。それぞれを結び付けながら地方創生を進めている湯沢町の取組をご紹介します。

1.雪国の暮らしを支えた交通と砂防

 現在の湯沢町の発展を支える基盤として欠かせないのが、「交通網の整備」と「砂防事業」です。昭和6年の上越線全線開通は、豪雪地帯であった湯沢町を首都圏と結び、観光地として発展する大きな契機となりました。

 一方で、当時の湯沢町は豪雪だけでなく豪雨災害にも悩まされていました。昭和10年9月の暴風雨では総雨量328ミリを記録し、山崩れを伴う大洪水が発生しました。田畑や住宅が被害を受け、開通したばかりの上越線にも大きな被害が及びました。これを契機として、昭和14年竣工の大源太川第一号砂防堰堤からはじまる魚野川上流域の砂防事業が本格化し、多くの砂防堰堤や流路工が整備されました。

 河川の安全性が高まったことで、限られた平地を有効に使えるようになり、道路や橋梁などのインフラが整備されました。現在の関越自動車道湯沢インターチェンジ周辺や湯沢中央公園、湯沢学園、リゾートマンション群なども、こうした治水・砂防事業の成果の上に成り立っています。

大源太川第一号砂防堰堤

 中でも大源太川第一号砂防堰堤は、全国でも初期のアーチ式砂防堰堤として知られ、国の登録有形文化財および土木学会選奨土木遺産に認定されています。近年実施された補強工事では、歴史的景観や自然環境への配慮が行われ、工事用仮排水トンネルはインフラツーリズムの資源としても活用されています。

 防災施設を単なるインフラとしてではなく、地域の歴史や技術を伝える観光資源として活用している点も、湯沢町らしい特色の一つです。

2.冬だけではない、四季を楽しむ観光地へ

▲左:フジロックの観客 ▲右:フジロック入場ゲート

 湯沢町は長年にわたりスキー観光を中心に発展してきました。平成4年度には年間観光客数が過去最高の1,045万6,000人を記録したものの、その後は減少傾向が続き、令和2年度には新型コロナウイルス感染症の影響で178万900人にまで落ち込みました。

 しかし、現在はインバウンド需要を中心に回復が進み、令和7年度の観光客数は361万900人となり、そのうち外国人観光客は全体の13.5%にあたる48万7,700人に達しました。特に冬の宿泊施設や飲食店では、外国人観光客の存在感が年々高まっています。

 一方で、日本人観光客の回復は道半ばとなっており、また、観光客の足元が冬期に集中し、季節による観光需要の格差が大きな課題となっています。そのため湯沢町では、冬だけに依存せず、年間を通じて安定した集客をめざす「オールシーズン型観光地」への転換を進めています。その象徴の一つが、平成11年から苗場地区で開催されている「フジロックフェスティバル」です。令和8年は延べ12万3,500人が来場し、夏の湯沢を代表するイベントとして定着しています。

 また、関連する「フジロックの森プロジェクト」では森林保全活動にも取り組み、間伐材を活用したワークショップなどを通じて環境保全の重要性を発信しています。単なるイベントにとどまらず、地域資源の保全と活用を両立する取組となっています。

ナショナルサイクルルートにも指定され、サイクルツーリズ ムとして期待される「雪国魚沼ゴールデンサイクルルート」※

 さらに温泉、登山、キャンプ、スポーツ合宿、サイクリング、砂防施設を活用したインフラツーリズムなど、多様なコンテンツを融合し、年間を通じて滞在を楽しめる観光地づくりを推進しています。

 ※雪国魚沼ゴールデンサイクルルート(雪国GCR)は湯沢町・南魚沼市・魚沼市を通る広域サイクリングルートです。
 令和8年7月、日本を代表し世界に誇りうるナショナルサイクルルート(NCR)として、国から指定を受けました。

3.「訪れる町」から「暮らす町」へ

湯沢町の移住定住ポスター(赤湯・山口館)

 平成26年、日本創成会議が公表した「増田レポート」において、湯沢町は消滅可能性都市の一つとされました。観光客数の減少や地域経済の停滞とともに人口減少も進み、大きな危機感を抱くこととなりました。

 そこで町は地方創生を本格的に推進し、「若者が生活の場として選択するまち」を重点目標に掲げました。特に力を入れたのが子育て世代の移住・定住促進です。

 移住・定住ポータルサイトの開設やプロモーション動画の制作、首都圏での広告展開などを積極的に実施しました。さらに、住宅取得補助や家賃補助に加え、全国的にも先進的な取組として新幹線通勤補助制度を創設しました。

 本制度は、新幹線定期券の購入費に対して月額最大5万円を最長10年間支援するものです。「東京圏へ通勤しながら、大自然に囲まれた湯沢町で子育てをする」という、新しいライフスタイルを強力に後押ししています。

 新幹線による首都圏との高いアクセス性を最大限に活かしたこの取組は、その手厚い支援内容から、全国の自治体の中でも類を見ない特色ある移住支援施策となっています。

4.民間と進めるワンストップ移住支援

 移住施策を進める上で重要なのは、制度だけではありません。湯沢町では、移住希望者に寄り添ったきめ細かな支援を実現するため、移住関連業務を町内で起業した民間事業者に包括委託しています。

 仕事や住まい、子育て、教育などに関する相談をワンストップで受け付け、SNSやオンライン相談にも対応し、さらに、移住後のコミュニティ形成支援まで行っています。

 この結果、年間20件程度だった移住相談は100件を超える規模となり、令和2年度からの5年間で155人の移住者を受け入れ、その97%が子育て世代となっています。

 また、バブル期に多数建設され、かつて「東京都湯沢町」と称される要因となったリゾートマンションを、現在は移住や定住の受け皿として活用していることも特徴です。観光によって生まれたストックを移住促進に活かすことで、「観光」と「定住」をつなぐ独自の地方創生モデルを形成しています。

5.子育て世代を引き付ける湯沢学園

▲左:湯沢学園の強みである学年を超えたつながり(中学生と園児) ▲右:湯沢学園外観

 移住先選びにおいて教育環境は重要な要素です。湯沢町では、保育園から中学校までを一体化した「湯沢学園」を整備し、特色ある教育環境を提供しています。

 町内に点在していた五つの保育園、五つの小学校、一つの中学校を統合し、保・小・中一貫教育を実現しました。同じ敷地内で学び育つことにより、異年齢交流や継続的な成長支援が可能となっています。

 また、18歳までの医療費無償化、保育園・小中学校給食費無償化、すくすく子育て応援金の支給など、子育て支援施策も充実しています。さらに総合子育て支援センターや放課後児童クラブの整備に加え、こども家庭センター機能も開始しました。

 移住を促進するだけでなく、移住後も安心して子育てができる環境づくりに力を入れていることが、湯沢町の大きな魅力となっています。

6.人口動態に表れた成果と残る課題

 地方創生の取組は、人口動態にも成果として表れています。

 平成28年度から令和7年度までの人口減少率は2.5%にとどまりました。また、平成28年度以降は9年連続で転入者が転出者を上回る社会増を達成し、平均すると年間67人の増加となっています。

 これは移住・定住施策に加え、新幹線による交通利便性、リゾートマンションへの転入、観光産業で働く外国人住民の増加など、複数の要因が相乗効果を生み出した結果です。

 一方で、依然として自然減は続いており、出生数の減少が大きな課題となっています。若年女性人口の減少傾向は緩和しているものの、結婚・妊娠・出産・子育てを支える環境づくりをさらに進めていく必要があります。

 地方創生は短期間で成果が出るものではありません。だからこそ、継続的な取組が求められています。

7.観光を支える人材と地域交通

▲左:リゾートマンション群(岩原地区) ▲右:湯沢版MaaSの取組(トゥクトゥクの運行風景)

 観光地の持続的な発展には、人材確保と移動環境の整備が欠かせません。

 湯沢町では、短時間就労を希望する人と事業者をつなぐ公式アプリ「湯沢マッチボックス」を導入しています。導入当初からの登録者は1,700人を超え、令和7年度には5,008件のマッチングが成立しました。

 観光地特有の繁閑差に対応しながら、子育て世代や高齢者など地域に眠る労働力を活用する仕組みとして機能しています。

 また、地域交通については、上越新幹線や関越自動車道など広域交通は充実している一方で、町内の二次交通が課題となっています。

 そこで町では「湯沢町地域移動環境計画」を策定し、「湯沢版MaaS※」の実証事業を進めています。フジロックシャトルバスの一般開放や、リゾートマンションの多い地区をめぐるグリーンライン、越後湯沢駅周辺でのトゥクトゥク運行など、新たな移動サービスの実証を行ってきました。

 観光客向けの交通と住民向けの交通を一体的に考えることで、持続可能な地域交通の構築をめざしています。

  ※MaaS:「Mobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)」の略。「湯沢版MaaS」は複数の移動手段をシームレスに検索・乗り継ぎ・決済を一括で行う仕組み。

8.持続可能な観光を支える財源

 今後も湯沢町が世界に選ばれる観光地であり続けるためには、交通、景観、多言語対応、環境保全などへの継続的な投資が必要です。

 そのため町では、安定的な観光振興財源として宿泊税導入の検討を進めています。観光客から一定の負担をいただき、その税収を観光振興へ還元することで、さらなる魅力向上と地域経済の活性化につなげる考えです。

 「湯沢町観光振興計画」では、オールシーズン観光、国際競争力の高いスノーリゾート形成、景観整備、受入環境整備、自然環境保全、人材育成などを重点施策として掲げています。

 将来世代へ魅力ある観光地を引き継ぐための基盤づくりを進めています。

終わりに

観光立町宣言 湯沢町ロゴ

 湯沢町の地方創生は、観光と移住・定住を別々に考えるものではありません。

 「観光立町宣言 湯沢町  君と一緒に暮らす町」というブランドスローガンには、町民、移住者、観光客、事業者、外国人住民など、湯沢町に関わるすべての人とともに地域をつくっていくという思いが込められています。

 雪、温泉、自然、音楽、歴史、そして首都圏との高い交通利便性という強みを活かしながら、観光振興、移住・定住、地域交通、子育て支援、人材確保を一体的に進めていくこと。それこそが、観光立町・湯沢町が描く次の地方創生の姿です。

 これからも湯沢町は、「訪れたい町」から「暮らしたい町」へ、そして「住み続けたい町」へと進化し続けてまいります。