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北海道新篠津村/「空のまち」の挑戦!新篠津村が自治体単独では全国初の表彰

印刷用ページを表示する 掲載日:2026年8月3日更新

新篠津の星空と田園風景

▲新篠津の星空と田園風景


北海道新篠津村

3368号(2026年8月3日)
北海道新篠津村
企画政策課 商工観光係 係長 田口 雄


  1. 「空のまち」の6つの取組
  2. 官民一体の取組が受賞の決め手に
  3. 農業が産んだ「空のまち」

 北海道と聞いて思い浮かべる風景は何でしょうか?多くの人は「広大な大地に大空」を思い浮かべるのではないでしょうか?

 札幌から車で45分走らせればそこはもう別世界。まさに北海道らしい広大な田園風景と包まれるような青空が出現します。人口約2,700人で面積の半分以上が水田。高い建物や山も坂もない道内一標高差がないといわれる、非常に平坦な地形です。

 新篠津村が注目したのは広大な田園風景が産む、包まれるような「空」。空を活かした街づくりとブランディングを推進し、その取組が評価され令和7年10月に環境省らが主催する「星空の街、あおぞらの街全国大会」で最高賞に次ぐ協議会会長賞を受賞(単独自治体の表彰は全国初)しました。表彰にあたり評価されたポイントや取組を紹介していきます。

1.「空のまち」の6つの取組

左:しんしのつ天文台 右:50cmカセグレン式反射望遠鏡「そらみちゃん」

①しんしのつ天文台
 2023年秋に完成した「しんしのつ天文台」は、まさに「空のまち新篠津」を象徴する観光スポットです。街灯が少なく農家が点在しているため光害が少なく、前後左右の地平線の低い位置まで星が見える、包まれるような星空を味わうことができます。

 天文台というと半球のドームをイメージされる人も多いと思いますが、しんしのつ天文台は全国の天文台を探しても稀な形状をしています。

 建物にレールが付いており建屋(両壁と屋根)がレール上にスライドして床と望遠鏡だけが現れる、いわば屋外型フルオープン式天文台で、遠くから見ると巨大な望遠鏡が大草原から生えているように感じます。この天文台の凄いところは、いわば「天然プラネタリウム」を利用した、望遠鏡での観望を待つ人もワクワクする仕掛けがあることです。例えば観望を待つ間、これから望遠鏡で観る天体に解説員がポインターを当て解説し、肉眼や双眼鏡で観察した後に望遠鏡で観ると、その観え方の差やリアルさを一層実感することができ、「この上空にはリングのある土星や縞模様のある木星が実際に存在する」というのをはっきりと感じることができます。また遮るものがない屋外で星に包まれながら巨大な望遠鏡で観望しているとまるで星を観望しているのに、星々に観られているような感覚になります。札幌近郊の夜間の体験型人気観光スポットになりつつあり道外からのツアーの申込みや問い合わせも急増しています。
 

左:点火式の打上ランタン 右:舞い上がるランタンと花火

②新篠津天灯(ランタン)祭り
 「新篠津天灯(ランタン)祭り」は2021年に始まった人気のイベントです。ランタンとはいわば燃料を付けた紙風船。願い事を書いて飛ばすとかなうといわれる、海外では「コムローイ」等と呼ばれ台湾等で人気のお祭りです。

 ランタンのイベント自体は日本各地で開催されておりますが、そのほとんどがヘリウムガスやLEDの利用、紐付きの形で開催されています。しかし周囲を水田に囲まれた新篠津村の冬は山火事の心配もなく、電線や高い建物も少ないため、燃料に火を点け空に飛ばすという伝統的な手法で開催しています。さらにランタンは自然で分解する素材を利用しているのと、当日と翌日雪原に落ちたランタンを回収することで、紐の付いていないランタンを空高く飛ばすことができます。

 このイベントはもともと2020年石狩振興局と北海学園大学、新篠津村の3団体が地域の魅力を上げるための取組で連携し、そのために何度も村を訪れた学生のアイディアから生まれたイベントです。都市部にすむ学生だからこそ、新篠津の雪原と空を当たり前に思わずに価値を見出してくれたことで、回を重ねるごとに大きなイベントとなり今や北海道最大級のランタンイベント(2025年に開催した第5回は全道最多の打上個数と思われる約1,200個のランタンを打上)となりました。

 ここ数年はランタンと同時に冬花火を打上しています。空高く舞い上がる無数のランタンは冬の天の川のようで花火とのコラボレーションに多くの方が感動していました。これまで1日のみの開催でしたが、2027年2月はその人気を鑑み毎週土日に打上体験を開催する予定で、道内外から多くの観光客が集まることを期待しています。
 

着陸するグライダー

③新篠津グライダー滑空場
 1986年に完成した、上空からの圧巻の風景を味わうことができる「新篠津グライダー滑空場」。上空から見た新篠津は時期によって景色が変わります。田植え後の緑の大平原。花畑が織り成すパッチワーク。収穫期の黄金色に広がる一枚の絵のような風景を見ることができます。遠くには札幌の街並みや山々が見え北海道の雄大な景色を一望できます。札幌航空協会が活動の拠点としており体験搭乗も可能です。
 

大迫力の山車パレード

④新しのつ青空まつり
 1979年に第1回目がスタートした新篠津村自治センター駐車場で開催される最も長い歴史を持つ村の祭りです。さまざまなステージイベントの他、気球体験等「空のまち」ならではの体験、また街馬車等さまざまな体験ができます。メインイベントは道内有数の巨大な山車パレード。宝船やねぶた絵、巨大魚の姿等、きらびやかに飾り付けされた山車がメインストリートを練り歩き、花火が祭りの最後を彩ります。

 

左:Kensuke Takahashi作「約束の地(ほし)へ」 右:広い空に舞い上がる凧

⑤街並みアート
 「空のまち」新篠津村の芸術はストリート(青空)アート。自然風景が素晴らしい新篠津村は街中の景観にも力を入れております。地域おこし協力隊の企画で2023年にスタートした事業で、毎年著名なストリートアーティストや壁画家を招聘し、村のメインストリートの電話ボックスや農業倉庫に壁画を制作。2025年には北海道最大級の建物壁画が新篠津村自治センターに描かれました。10年後はハワイのカカアコ地区のような世界中のストリートアーティストが集まる通りになるかもと注目を集めています。

⑥新しのつたこあげデー
 かつては全国のこどもが楽しんでいた凧揚げも揚げることができる場所を見つけるのが難しくなっています。このイベントでは凧を作る・揚げる・見るの3つの楽しみがあります。凧作り教室で作った凧や長い連凧を揚げる、また専門家が揚げるスポーツカイトや大凧を見ながら飲食を楽しむというのんびりした雰囲気を楽しむイベントです。

2.官民一体の取組が受賞の決め手に

 「空のまち」というキーワードが初めて村で公式に提唱されたのは2022年に天文台の建設を決定する段階になったときです。天文台を単なる1つの施設で終わらせないため「空のまち」という、いわば旗印となるものを村が提唱しブランディングを始め、さらに長期目標として「星空の街・あおぞらの街全国大会」等での表彰を目標としました。そして前述の事業を「空のまち」の取組とし村の観光政策の新規重要事業として打ち出したことでさまざまな効果が生まれました。

 例えばしんしのつ天文台は、屋外型の天文台であり星空の観望には光害が大敵です。天文台周辺は夜間の光源がかなり少ないのですが近所の灯で一部観望の際気になる箇所がありました。そこで住宅街の街灯には住民の理解を得て消点灯できるスイッチを取り付け天文台開館中はスタッフが消灯して、営業が終わると再び点灯することで光害を無くし、さらに付近の法人へは実際に施設の消灯をお願いして開館中敷地内の電灯を消していただく等、地域の方の協力によって良好な星空観望環境を維持することができました。

 また自治区が主催で役場が事務局をしていた「青空まつり」では山車の引手や担い手の不足、マンネリ化し、縮小傾向でしたが、一昨年から商工会、農協、福祉会、観光協会が事務局としてそれぞれ分担を持って参画したため自治区と役場の負担が軽減され、意見が反映されやすい持続可能な祭りになりつつあります。

 令和3年に初めて開催した天灯祭りは当初は北海学園大学と石狩振興局と新篠津村の連携事業でしたが、連携事業が終わり主催が新篠津村観光協会に移管後も同大学からはボランティアが多く参加し、さらに毎年参加人数や打上個数が増え、全道で最大規模のランタンイベントになりました。

 まちなみアートは企画者の地域おこし協力隊員の退任後も、商店街の活性化のための継続事業として引き継がれ、昨年は新篠津村に北海道最大級146m²の壁画が描かれ、3回目になると段々と変化していく商店街に対して期待のイメージが膨らんだのか村民からの評判も良く、マスコミ等から取材の依頼が入るようになり、毎年増えていく本格ストリートアートをどこの壁に描くのか、誰が描くのかとかなりの反響を得ています。

 グライダー滑空場は昔からあるにもかかわらず村民にも観光客にも認知度が低いことが課題でした。札幌航空協会が主に活動している施設でしたが、「空のまち」の取組の一つとして村と協会とがPRすることにより体験搭乗の人気が上昇し、協会の入会者も増加し、新篠津でパイロットをめざす方もたくさんいます。

 「空のまち」で盛り上げるという村の姿勢が村内外に浸透し、村民や村外の関係者の協力があり、官民一体の取組になったことが今回の受賞の最大のポイントだと思います。そして「星空の街・あおぞらの街全国大会」という全国区での表彰、しかも市町村単独としては史上初という一つの成果を得たことで誇りが生まれ、それが地域のブランドになり、まだ村に訪れたことがない方にも例えば「新篠津といえば星が美しい所」等のイメージを抱かせるものになっていくことを期待しています。

3.農業が産んだ「空のまち」

自治センター大壁画と天の川

 新篠津村の基幹産業は農業ですが、歴史を振り返ると新篠津村は元々米が獲れない泥炭の地であり、土地改良等の努力を苦労しながら重ね、道内有数の米処となりました。現在も農家の方が努力し農地を維持し、農協や役場・議会・商工会等、農業や街づくりの関係者がいたずらに開発路線に走ることなく、農業を継続できるような街づくりをめざしたからこそ、包まれるような空が産まれたと言えます。

 「新篠津村には天文台があり、非常にたくさんの星が観える」→「それは農業が盛んで非常に広大な田園が広がり、空が広いから」→「だからそこで獲れた米はおいしい」等、農業が産んだ空で観光を盛り上げ、観光で向上させた村の認知度で農業を盛り上げる、それを実現させていくことが今後の重要な課題です。

 先人が残してくれた空、そして村民や村外の関係者の理解と協力があってこの度は名誉ある受賞に至りました。今後も「空のまち」というブランディングを推進し、その魅力を全世界にPRしてまいります。
 

​​企画政策課商工観光係
係長 田口 雄