ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 町村の取組 > 鹿児島県知名町/“ふるさと”と“ひと”をつなぐ“まち”

鹿児島県知名町/“ふるさと”と“ひと”をつなぐ“まち”

印刷用ページを表示する 掲載日:2026年7月6日更新

知名町田皆岬・奄美十景

▲知名町田皆岬・奄美十景


鹿児島県知名町

3365号(2026年7月6日)
企画振興課 吉田 雄輝


  1. 花と鍾乳洞の島「沖永良部島・知名町」
  2. 知名町の歴史と文化
  3. 知名町の特産品
  4. 知名町ふるさとワーキングホリデー
  5. おわりに

1. 花と鍾乳洞の島「沖永良部島・知名町」

左:テッポウユリ(えらぶゆり) 右:ケイビング(洞窟探検)

 知名町は、鹿児島市から546km南にある隆起サンゴ礁の島・沖永良部島の南西部に位置し、琉球文化が色濃く残る自然豊かな潤いと安らぎのある町です。町内は21の字(集落)で構成されており、人口は令和8年4月1日時点で5,179人です。

 気候は、最高気温31℃、最低気温13℃で平均気温22℃という温暖な気候に恵まれています。年間降水量は1,900mmを超え、梅雨や台風の時期、特に5~6月や10月に雨が多いのが特徴です。最高標高は、町の中央に位置する大山の240mで、比較的平坦な地形が多く農地にも恵まれています。

 本町の基幹産業は農業で、さとうきびを主要作物に輸送野菜、花き、果樹、葉たばこ、肉用牛など幅広い品目が栽培されています。特に、えらぶゆりとしても知られるテッポウユリは「かごしまブランド」の指定及び「地理的表示(GI)」に登録され、花の島としての知名度を高めています。また、本町の農業生産額の半分を占めるバレイショは、日本一早く出荷される「春のささやき(かごしまブランド)」の名で知られ、春の訪れを告げる新じゃがいもとして島内外で愛されています。

 観光では、昇竜洞やダイビング、ケイビング(洞窟探検)が有名です。県天然記念物に指定されている昇竜洞は600mが一般公開されており、全体として鍾乳石の発達が素晴らしく特にフローストーンは全国最大級を誇ります。ダイビングでは、南国特有の強い太陽の光が、海中深くまで届き、カラフルな海中生物達を描き出します。珊瑚の種類が豊富で、魚影も濃く、絶壁や穴が無数にあるダイナミックな地形で浮遊感を楽しむことができます。

2. 知名町の歴史と文化

左:正名のヤッコ踊り 右:瀬利覚の獅子舞

 知名町の近代史は、1879年(明治12年)の戸長役場設置から始まり、1888年(明治21年)に知名村役場が開設されました。その後、1908年(明治41年)に和泊村と区分され、1920年(大正9年)には普通町村制へと移行しました。戦後はアメリカ合衆国の統治下に置かれましたが、その最中の1946年(昭和21年)9月1日に町制が施行され、本年で町制施行80周年という大きな節目を迎えます。

 本町の文化として、沖永良部島はかつて14世紀後半〜1609年(約200~300年間)まで琉球王国の統治下にありました。その後、1609年(慶長14年)の島津氏による琉球侵攻により、薩摩藩の直轄領となりました。

 こうした歴史的背景から、町内には琉球と薩摩の文化が溶け合い、独自の発展を遂げた伝統芸能が数多く存在します。

 特に、県指定無形民俗文化財には、薩摩の役人をもてなした歴史を持つ勇壮な男踊り「ヤッコ踊り」や、300年以上前に明国(中国)へ漂着した幸山政孝氏が伝えたとされる「上平川の大蛇踊り」があります。また、約300〜350年前に琉球から伝わったとされる「瀬利覚の獅子舞」は、町指定無形民俗文化財として今に受け継がれています。

3. 知名町の特産品

左:シマ桑茶  右:芭蕉布

 知名町は、地域資源を活用した特産品開発にも力を入れており、その1つが「シマ桑茶」です。シマ桑は古くから島に自生してきた植物で、糖の吸収を抑えてくれる桑特有の成分「DNJ」等の健康栄養成分が多く含まれています。本町では、健康促進、地域活性化、新たな雇用創出をテーマに、6次産業化の推進としてシマ桑の商品化を実施しました。シマ桑はノンカフェインで飲みやすく、島の自然を感じられる健康特産品として、島内外で親しまれています。

 他にも、伝統工芸品である芭蕉布も存在します。芭蕉布は、芭蕉科・糸芭蕉の茎の繊維を使った南西諸島の伝統的な織物です。沖永良部島は静かな平地でハブがおらず、台風が来ても通り抜けていくという、芭蕉布にとって最高の条件が揃った島です。本町の芭蕉布は、糸芭蕉の原木栽培から織に至るまでのすべての工程を手作業で行い、染料も島の草木だけを使い古くから島に伝わる心技を継承しつつ、よりしなやかな風合いを求めて新しい技法を追求しています。本町の芭蕉布商品は、軽くて通気性・肌触りに優れた芭蕉繊維で制作した高級品から日常使いの雑貨まで、幅広く展開されています。

4. 知名町ふるさとワーキングホリデー

ふるさとワーキングホリデー

①人がつながり、島の未来を創る

 知名町は全国の離島地域と同様に、人口減少や少子高齢化、人材不足という課題に直面しています。若年層の島外流出や担い手不足は、農業や建設業、地域コミュニティの維持にも大きな影響を与えており、地域の持続可能性をどのように確保していくかが重要な行政課題となっています。

 そのような中、本町では「交流から定住へ」という考えのもと、関係人口の創出に力を入れています。移住者だけでなく、「地域と継続的につながる人」を増やすことで、将来的な移住や二地域居住、関係人口の拡大につなげていく取組です。その代表的な事業が「知名町ふるさとワーキングホリデー」です。

②「ホンネ」の「シマ」暮らしを体験するワーキングホリデー事業

 本町が実施するワーキングホリデー事業は、都市部の若者が一定期間島に滞在し、地域で働きながら島暮らしを体験する取組です。単なる観光ではなく、「働く」「暮らす」「地域と関わる」という実体験を通して、本町との関係性を深めて移住定住を視野に入れた関係人口の創出を目的としています。

 特に、進学や就職を機に島を離れた若者が戻る機会は乏しく、Uターンの減少を招き、担い手不足を深刻化させていることから、若年層(18~29歳)をメインターゲットとして本事業を実施しました。そのため、対象者に対し、若者ワークショップや事前ヒアリングを通して、島内滞在時の満足度向上を図り、滞在時に幅広い地域交流を行うことによる地域魅力の最大化をめざしました。

 また、知名町(離島)への興味がある方が島外でも本町と関わりを持ち続けられるようなコミュニティ形成をめざしました。

左:農業での就労体験 右:建設業での就労体験

左:地域交流会 右:三線教室

 受け入れ先は農業、建設業など地域産業を支える事業者が中心で、参加者はジャガイモ収穫や農作業、建設現場での作業補助などを経験しました。加えて、歓迎会や送別会、地域行事への参加、三線教室など、島文化に触れる交流プログラムも実施しました。

 令和7年度に実施した事業では、2~3月の農繁期の受け入れで全国各地から19歳から28歳までの若者15人が参加しました。参加理由は「離島で暮らしてみたかった」「地域での働き方を体験したい」「自然の中で自分を見つめ直したい」などさまざまでしたが、多くの参加者に共通していたのは、「人とのつながり」を求める思いでした。

 実際に参加者からは、「島の本当の良さは人にあると感じた」「初めて会ったのに家族のように接してくれた」「第二の故郷ができた気がする」といった感想が数多く寄せられました。

 ある参加者は、畑仕事を通して「自分にも合う仕事があるかもしれない」と前向きな気持ちになれたと語っていました。また別の参加者は、「スマートフォンを見る時間が減り、自然とデジタルデトックスのような生活になった」と述べ、都市部では得られない時間の流れや人との関係性に魅力を感じていただきました。

 事業終了後も参加者同士や受入事業者との交流が続いており、再訪を希望する声も多かったです。短期間の滞在であっても「また帰ってきたい」と思える関係性が生まれていることは、本事業の大きな成果です。

農作業

③受け入れ地域と行政の連携

 本事業を進める上では、地域住民や受入事業者の理解と協力が不可欠です。本町では、地域団体や民間事業者、若手有志らと連携しながら、受入体制づくりを進めてきました。

 特に農業分野では、繁忙期における人手不足が深刻化しており、参加者による労働力支援は一定の効果を生みました。一方で、単なる労働力確保ではなく、「交流を通じて地域の魅力を知ってもらう」という意識共有を大切にしました。

 受け入れ事業者からは、「若者との交流が地域の刺激になった」「普段当たり前と思っていた島の良さを再認識できた」といった声も聞かれ、参加者を受け入れることで、地域側にも新たな気づきや活力が生まれました。

農作業

④関係人口から移住へ

 本町では、関係人口を「移住の前段階」として捉えています。いきなり移住を決断することは容易ではないですが、まずは島に来てもらい、人や文化、仕事に触れてもらうことで、地域との心理的距離を縮めていくことが重要です。

 近年では、ワーキングホリデー参加者の中から、将来的な移住や長期滞在に関心を示す若者も現れています。参加後に再訪したり、地域行事へ自主的に参加したりするケースもあり、継続的な関係性が生まれつつあります。

 また、本町では移住相談や空き家活用など、移住支援施策も併せて進めています。島での暮らしは、豊かな自然や人とのつながりがある一方で、医療、交通、所得など都市部とは異なる現実もあるため、本町では「良い面だけを伝える」のではなく、実際の暮らしを体感してもらうことを重視しています。

本事業は、まさにその“リアルな暮らし”を知ってもらう機会となっています。

おわりに

見送りの様子

 人口減少時代において、2040年代を境に東京も人口減少を迎えます。超少子高齢化社会に突入している日本において、地域間の人材確保が喫緊の課題だと思います。ただ、地域における人材(交流・活用・確保)において重要なのは、「人を奪い合うこと」ではなく「地域と関わる人を増やすこと」だと感じます。

 全国的に人手不足が深刻化している状態で、地理的なハンデがある離島地域で若者人材を確保するハードルは高いです。しかし、魅力的な地域資源が豊富で島ならではの文化や人の温かみのある離島地域だからこそ、何度も訪れてくれる人、地域を応援してくれる人、島を第二の故郷として想ってくれる人を増やしていくことは、都市部にも負けない知名町の強みであると思います。

 前段で説明した知名町ふるさとワーキングホリデー事業のように、島外の若者が島で働き、暮らし、人と出会う中で生まれる感情や記憶は、確かな「つながり」として残っていきます。

町政80周年ロゴ

 離島だからこそできることがあり、人口規模が小さいからこそ、一人ひとりとの距離が近く、深い関係性を築くことができます。そうすることで、「数」に囚われない「質」が高い担い手の確保につながると思います。

 本町はこれからも、人と人とのつながりを大切にしながら、関係人口の創出と持続可能な地域づくりに取り組んでいきます。

 また、本年は町制施行80周年という節目の年を迎えます。町民をはじめ、島外で暮らす知名町を愛する方々とも手を取り合って、町の歴史や文化を次世代へ継承していきます。

企画振興課 吉田 雄輝