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北海道白糠町/地産地消型防災から広域連携まで 白糠町の防災・減災対策

印刷用ページを表示する 掲載日:2026年6月29日更新

 ​岬の森東山公園から望む、白糠の街並みと太平洋

▲岬の森東山公園から望む、白糠の街並みと太平洋


北海道白糠町

3364号(2026年6月29日)
北海道白糠町 危機対策部 危機対策課


  1. 白糠町の沿革
  2. 本町が進める防災・減災対策
  3. 地元企業「札鶴ベニヤ」と共同開発した合板製「避難所用防災ベッド」
  4. 独自施策「ふれあい連絡票」による要援護者支援
  5. 多様な「災害支援協定」による広域連携
  6. 命を守る「津波避難タワー」と「津波救命艇」
  7. 最後に

1.白糠町の沿革

 北海道の東部に位置する白糠町は、太平洋の豊かな海と、町の約83%を占める広大な森林に囲まれた「食材の宝庫」として知られるまちです。地名の由来はアイヌ語の「シラリ・カ(岩磯のほとり)」にあり、その名の通り、荒波が寄せる美しい海岸線と豊かな山々が織りなす自然環境が大きな魅力です。

 この恵まれた自然を背景に、白糠町では農業、漁業、林産業といった第一次産業が盛んです。漁業においては、暖流と寒流が交わる絶好の漁場を持ち、一年を通じて多種多様な海産物が水揚げされます。特に「秋サケ」や「柳だこ」、「灯台つぶ」、「毛がに」などは全国的にも高い評価を受けており、豊洲市場などをはじめとした全国へと出荷されています。また、ししゃもの産地としても有名で、その質の高さは折り紙付きです。

 陸の恵みも多彩で、特に全国的な知名度を誇るしそ焼酎「鍛高譚」の原料となる赤しそは、町内の鍛高地区で丹精込めて栽培されています。9月の収穫前には一面に紫色の絨毯が広がる美しい風景を楽しむことができます。また、酪農も盛んで、「白糠酪恵舎」が手掛ける本格的なイタリアンチーズは、本場イタリアの人々も認める深い味わいが特徴です。広大な土地を活かしためん羊では、臭みが少なく柔らかなラム肉が生産されており、さらに日本でも有数の生息地で林業被害に苦慮していたエゾ鹿については熟練のハンターが仕留めた個体を、徹底した衛生管理のもとで高級食材に生まれ変わらせるなど、白糠ならではの山の幸を存分に堪能することができます。

 観光面では、2025年4月、国道38号沿いにリニューアルオープンした道の駅「しらぬか恋問館」が拠点となっており、ここで特産の海産物やチーズ、お土産品を購入できるほか、名物の「この豚丼」を味わうことができます。近年では「子育て応援日本一のまち」をめざして策定した子育て支援策や、移住定住を促進する町有地の無償提供、最大750万円の定住奨励助成金の創設など、各種施策を充実させており、豊かな自然と食、そして温かな暮らしが共存する魅力あふれる町づくりを進めています。

2.本町が進める防災・減災対策

 本町は、太平洋に面した地理的条件から、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震に伴う最大16メートル超の津波リスクを抱えています。この脅威に対し本町では、地元企業との防災ベッド共同開発、要援護者支援、広域連携、津波避難タワーの整備など、ソフト・ハード両面からの防災・減災対策を推進しています。​

3.地元企業「札鶴ベニヤ」と共同開発した合板製「避難所用防災ベッド」

左:防災ベッド内部の収納  右:防災ベッド

 避難所生活の質を向上させるため、本町では地元の合板製造企業である札鶴ベニヤ(株)と共同し、ベニヤ板(合板)製の「避難所用防災ベッド」を開発しました。

 この取組は、単なる物資の備蓄にとどまらず、地域の産業力を防災に直結させた「地産地消型防災」のモデルに成り得るものと考えております。

 東日本大震災や熊本地震を経て、避難所の床からの冷気を防ぎ、エコノミークラス症候群を予防する「簡易ベッド」の重要性が広く認知されました。一般的には段ボール製が普及していますが、本町では、積雪寒冷地での長期避難の対応、避難者の睡眠ストレスを減らし、貴重品などを人目にさらさない手法の検討、避難生活の長期化で強度を保てなくなる段ボールベッドへの危惧などを想定し、より堅牢で衛生的な素材を求めました。

 そこで、国内屈指の合板製造技術を持つ地元企業の札鶴ベニヤ(株)と協力し、「木(合板)ならではの強み」を活かしたベッドの開発を依頼しました。

 この防災ベッドは、針葉樹の構造用合板を使用しており、段ボール製に比べて湿気や水分に強く、冬場の結露や濡れた衣服での使用でも強度が低下しません。幾度となく試行を重ね、強度を保ちながら5.5mmまで合板を薄くすることに成功し、大柄な大人でも安心して横になれる安定感があります。

避難所用防災ベッド

 複雑な工具は一切使用せず、板を組み合わせるだけの「はめ込み式」でマニュアルを見ながら5分程度で組み上げることができ、発災直後の混乱した避難所でも、迅速に設置できるよう配慮されています。ベッドの高さは高齢者が立ち上がりやすく、膝への負担が少ない約40cmの「ユニバーサルデザイン」に基づく数値に設定されており、ベッドの天板の下は中空構造になっていて、限られた避難スペースの中で、個人の荷物や貴重品などを保管することが可能で、プライバシーを守ることで安心感にもつながります。

 また、従来の段ボールベッドと比べてもほぼ同重量のうえに、大きさは約半分程度で、平積みも可能なため、保管する際の備蓄庫等のスペースも確保できます。

 そのほかにも、ヘッドボードやサイドパネルを高く設計したり、オプションのパーテーションを組み合わせたりすることで、周囲の視線を遮り、プライベート空間を確保する工夫がなされています。

 本町ではこの防災ベッドを、「株式会社町おこしエネルギー」など、本町の取組に理解を頂けた事業者からの寄贈を通じて着々と配備を進めており、ハード面の整備と並行して、「避難所生活の質(QOL)」を支える仕組みを整えています。

4.独自施策「ふれあい連絡票」による要援護者支援

ふれあい連絡票

 白糠町が全国に先駆けて展開をしている独自の取組が、「ふれあい連絡票(災害時要援護者支援システム)」の活用です。これは、災害時に自力での避難が困難な高齢者や障がい者(避難行動要支援者)の情報をあらかじめ登録しておく制度です。

 ふれあい連絡票には、町内居住者で65歳以上の一人暮らし高齢者や高齢者夫婦世帯、障がい者、要介護認定を受けている方を対象とし、現在約2000人を登録しています。本人の同意を得たうえで、消防や警察、町内会、民生委員などの関係機関などに情報提供し、地域全体で支援することにより、共助の体制を整えています。担当者が毎年登録されている世帯を訪問し、名簿情報を常に最新の状態に保っています。また、登録されたデータは地理情報システム(GIS)と連動しており、登録者の災害発生時の避難場所や避難所など防災情報も瞬時にパソコン上で表示することが可能で、避難先の特定、安否確認が飛躍的に迅速化されます。

 白糠町では「ふれあい連絡票」を国が各自治体に作成を促している個別避難計画として代用しており、災害時の迅速な避難行動や地域の助け合いの意識や防災意識の向上につなげています。

5.多様な「災害支援協定」による広域連携

左:本別町との防災共同訓練の様子  右:ピースウィンズ・ジャパンとの共同訓練の様子

 大規模災害時に単独自治体での対応には限界があることは自明の理であり、他の先進自治体と同様に本町でも多様な企業・団体等と「災害支援協定」を締結し、応急対応能力を強化しています。

 2013年に北海道内では希少な事例として、十勝振興局管内の本別町と防災関連を含めた包括協定を締結し、振興局を跨いだ防災訓練や事業等を相互に協力して実施しています。

 2025年には、国内外で災害支援を行うNPO法人ピースウィンズ・ジャパン様と協定を締結しました。このことにより、発災直後の「超急性期」における医師の派遣や、陸・海・空を活用した物資輸送・救助活動が可能となりました。そのほかにも、官民を超えたあらゆる連携により、ライフラインの早期復旧や物資供給、避難者の収容など、分野ごとに各種団体と協定を交わしています。

6.命を守る「津波避難タワー」と「津波救命艇」

避難タワーを活用した避難訓練

白糠地区に建設した津波避難タワー

 白糠町の津波避難対策として、「20分以内に高台避難」を掲げ、高台に津波指定避難場所を整備してきました。しかし今般の「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る被害想定」の結果、厳冬期や夜間の避難において、特に避難行動要支援者が20分以内に高台へ避難することが困難な地域の存在が浮き彫りになりました。このようなことから、この課題に対応するための施設整備も進んでいます。

 津波避難タワー(白糠地区・西庶路地区)は、2025年7月、白糠地区(収容210人)と西庶路地区(収容127人)の2カ所に建設しました。積雪寒冷地である本町では、避難室については風雪を凌げる構造とし、緊急用発電機やストーブなど寒さから身を守る備蓄品を数多く配備することで、北海道の厳しい冬季の災害にも対応できるような手立てを講じています。平常時は防犯上、施錠をしておりますが、震度5弱以上の揺れを感知するとキーボックスが自動で開錠される仕組みを採用したほか、4桁のダイヤル番号による開錠も可能で、複数の開錠手段により、津波警報等発表の際はスムーズに避難することができます。

左:実際の津波救命艇での避難訓練の様子  右:恋問地区に配備した津波救命艇

 また、庶路地域の恋問地区の集会所には、25人乗りの「津波救命艇」を配備しました。救命艇には、恋問地区の災害弱者と介助者の全員が乗船可能な大きさとなっています。救命艇は全長約8.7メートルの強化プラスチック製で、船内に海水が入らない構造になっており、最大クラスの津波に巻き込まれても海面を漂いながら、救命艇内に整備している衛星イーパブにより位置情報を発信し、救助を待つことが可能となっております。当初はこの地区にも避難タワーを建設する案がありましたが、避難タワーを上ることが困難な高齢者から救命艇を望む声があり、その声を受けて整備をすることとなりました。

 現在の取組としては、現行の役場庁舎が建設から40年を経過していることや、津波浸水域内に立地をしているため、大規模災害時の応急復旧対応に支障をきたす可能性があることから、災害対策本部を迅速に立ち上げ、発災直後の応急対応から復興活動に至るまでの司令塔機能を確保するための「防災拠点施設」の整備に着手しています。

7.観最後に

 本町が進めるこれらの防災・減災対策は、単なる施設整備や制度構築にとどまらず、「地域全体で命を守る」という強い意思にもとづいた総合的な取組です。地元企業との連携による実効性の高い備え、要援護者一人一人に寄り添う支援体制、そして広域的な連携による対応力の強化は、いずれも現実の災害を見据えた実践的な施策です。今後整備を進める防災拠点施設を核として、発災直後から復旧・復興に至るまで切れ目のない対応体制を確立し、どのような状況下においても迅速かつ的確に行動できるまちをめざし、住民、地域、関係機関が一体となった持続可能で強靱なまちづくりを着実に推進してまいります。


危機対策部 危機対策課