
▲西日本有数のススキ草原・砥峰高原の初夏
兵庫県神河町
3361号(2026年6月1日)
兵庫県神河町 総務課
神河町は、兵庫県のほぼ中央に位置する「ハート型」のまちです。面積202.23平方キロメートルの約9割を山林が占め、砥峰高原や峰山高原、越知川名水街道、日本遺産「銀の馬車道・鉱石の道」など四季折々の景観と歴史資源に恵まれ、播磨と但馬を結ぶ交流の拠点として発展してきました。人口は令和8年3月末現在9,846人と県内で最も人口の少ない自治体である一方、豊かな観光資源を背景に年間約80万人が訪れる交流のまちでもあります。
一方で、人口減少や高齢化の進行、担い手不足、地域経済の縮小など、本町を取り巻く環境は厳しさを増しています。こうした中、地域資源を磨き上げて交流人口を拡大し、交流から関係、さらには移住・定住へとつなげる人の流れを創出するとともに、子育て支援や産業振興、地域交通、医療福祉など、安心して暮らし続けられる地域づくりを進めていくことが、持続可能なまちづくりに不可欠です。
本町では、「兵庫のまんなかでキラリと光るまち」として、地域の活力向上と住民サービスの充実を図りながら、さまざまな施策を展開しています。以下、その主な取組をご紹介します。

本町では、人口減少対策と並行して、まずは多くの人に本町を知ってもらい、町を訪れる人を増やし、町とのつながり(関係人口)を生み出すことを目的に、観光交流施策を重点的に進めてきました。平成29年には、日本国内で約14年ぶりとなる新設スキー場「峰山高原リゾート ホワイトピーク」の整備をはじめ、マラニックやヒルクライムなど、本町の自然や地形を活かした体験型イベントを継続的に開催しています。峰山高原リゾートホワイトピークは全国的な注目を集める新たな誘客拠点となり、これまで本町を訪れる機会の少なかった若年層など、新たな来訪者の流れを生み出しています。また、夏季中心であったアウトドア利用に加え、冬季の観光需要を取り込むことで年間を通じた誘客が可能となり、宿泊施設や飲食店への波及効果も高まっています。さらに、創業支援や空き家・空き店舗改修補助を活用した飲食店、カフェ、ジェラート店など新たな民間店舗の出店も進んでいます。観光客の受入環境の充実により、町内での滞在・消費が促進されるとともに、本町を訪れ、知ってもらう機会の拡大にもつながっています。こうした取組を通じ、将来的な移住・定住にもつながる基盤づくりをめざしています。

若い世代の流出を抑制し、地域の将来を担う世代を確保することは、本町にとって重要な課題です。観光交流によって町を訪れる人とのつながりを広げる一方、実際に「住み続けたい」「住んでみたい」と思える受け皿を整えることが移住・定住促進には不可欠であると考え、安心して暮らせる住環境の整備を進めてきました。平成26年度から若者世帯向け家賃補助制度(月額最大2万円)を開始するとともに、若者世帯向け地域優良賃貸住宅32戸を整備しました。さらに令和4年度からは宅地開発支援事業により民間事業者の15区画の宅地整備を支援し、若者世帯や子育て世代の住宅確保を進めています。加えて、住宅取得補助(最大290万円)や既存住宅リフォーム補助(最大90万円)を実施し、賃貸から住宅取得、定住後まで切れ目のない支援制度を整備しています。また、空き家対策についても県内でいち早く空き家バンク制度に着手し、多用途に対応した改修補助により空き家活用を進めています。このように、住まいの確保にとどまらず、安心して暮らし続けられる基盤づくりを進めています。

人口減少社会においては、住まいの確保だけでなく、世代を超えて人が集い、日常的につながりを育む拠点づくりが重要です。本町では神崎公民館の閉館を契機に、要望の高かった「図書施設」と「公園」を一体的に整備し、粟賀小学校跡地に神河町図書コミュニティ公園「桜空(おうぞら)」を開設しました。令和7年7月にオープンし、「多世代が集うまちのリビング」をコンセプトに、地域内外の人が自然に集う新たなランドマークとなっています。施設は町の中心部に位置し、公立病院や歴史的景観形成地区にも隣接する重要なエリアにあります。公園部分には企業版ふるさと納税を活用して大型遊具や健康器具を配置し、芝生広場にはヘリコプターの離着陸が可能なスペースも確保しました。さらに、地元大工と学生の協働により東屋を整備するなど、地域の力を活かした施設づくりも進めました。建物の内装には町産材を活用し、読書や学習、休憩、会話など多様な過ごし方ができる居場所を設けています。オープン以降は各種イベントや日常利用を通じてにぎわいが生まれ、地域の新たな交流拠点として機能しています。

人口減少や少子高齢化が進む中、将来を見据えた明確な方向性を持つことが、持続可能なまちづくりの出発点であると考えています。本町では、令和5年に策定した「2050神河将来ビジョン」を理想の未来を示す羅針盤として位置づけ、その方向性のもと、第2次長期総合計画や第3期地域創生総合戦略に基づく各種施策を展開しています。「変わらない風景を未来の世代へ」を基本理念に、本町が誇る森林や清流、歴史ある景観を守り継承しながら、生活環境の向上と地域経済の活性化を両立させる持続可能なまちづくりをめざしています。

高齢化や担い手不足の進行により、従来の単独自治会だけでは地域課題への対応が難しくなりつつあります。こうした中、本町では町内を7つの行政ブロックに分け、それぞれに「地域自治協議会」を設立し、持続可能な地域運営体制の構築を進めています。地域自治協議会では、福祉、防災、生活環境、地域活性化など身近な課題について住民自らが話し合い、地域づくり交付金を活用しながら実践的な取組を進めています。ブロック単位で連携することで、単独自治会では対応が難しい課題にも取り組める体制を整え、地域の自立性と持続可能性の向上を図っています。

豊かな森林資源を有する本町にとって、脱炭素の推進は環境政策であると同時に、地域資源を活かした地域振興策でもあります。本町では、令和2年7月に「クールチョイスなまち」宣言を行い、令和4年3月策定の地球温暖化対策実行計画に基づき、2050年CO2排出量実質ゼロをめざすゼロカーボンなまちづくりを進めています。再生可能エネルギーの導入や省エネルギーの推進に加え、三菱UFJ信託銀行株式会社および山田林業株式会社と連携したバイオ炭事業など、森林資源の新たな価値創出にも取り組み、環境と経済の好循環をめざしています。

持続可能で活力あるまちづくりには、民間企業の知見やノウハウを活かした官民連携が重要です。その一例が、令和8年4月にトヨタカローラ姫路株式会社が町有地を活用してオープンしたオートキャンプ・グランピング施設「COROHIMERIVER kamikawa(カロひめリバーかみかわ)」です。
関西電力大河内発電所PR館跡地に整備された本施設は、「クルマと共に体験を深める」をテーマに、自然景観を活かした滞在型アウトドア施設として整備された新たな交流拠点であり、行政資産の有効活用と民間投資により実現しました。地元事業者との連携や周辺観光施設との周遊促進による地域経済への波及効果も期待されています。
令和8年度、本町では新たなキャッチフレーズとして「突き抜けよう!かみかわ」を掲げました。これには、常に挑戦する姿勢を持ち、厳しい財政状況の中にあっても、短期・長期の双方の視点から必要な施策には果敢に投資し、未来に向けたまちづくりを進めていくという思いを込めています。人口減少という大きな課題に直面する中にあっても、小規模自治体には機動力と柔軟性という強みがあります。交流から関係、そして定住へとつなぐ循環をより確かなものとし、地域資源を活かした持続可能なまちづくりを着実に進め、「突き抜けよう!かみかわ」を旗印に、未来に誇れる神河町を築いてまいります。
総務課