
▲ブランド米 雪ほたかの里
群馬県川場村
3343号(2025年12月15日)
群馬県川場村
まちづくり振興課
川場村は、群馬県の北東に位置し、武尊山の南麓に広がる自然豊かな農山村です。村内には源を有する一級河川が4本、各地区の山裾からは武尊山の伏流水が湧き出ており、川の多い場所であることが村名の由来です。また、川場温泉など六つの温泉が古くから村を潤しています。村では「農業プラス観光」の基本施策に「林業」をプラスし、環境に配慮したむらづくりを推進しています。また、1981年に東京都世田谷区と「縁組協定」を締結し、都市と農村が相互理解のうえ、交流連携を深め、全国的にも先進的な取組として評価されています。

農業では、米・果樹・こんにゃくを中心に栽培しています。特に米については、川場産こしひかり「雪ほたか」の名称でブランド化され、米食味分析鑑定コンクール国際部門で16回の金賞を受賞するなど全国的に知名度が向上しています。
また、村の86%を占める森林を活用するため、木材コンビナート事業を開始し、製材所・木質チップを燃料とするバイオマス発電所・発電所の廃熱を利用した温室イチゴ栽培に取り組んでいます。
そして、全国的に知名度の高い、道の駅川場田園プラザには年間約300万人の観光入込客があり、直売や観光産業育成を推進しています。

道の駅は、休憩機能・情報発信機能・地域連携機能の三つを併せ持つ重要な拠点です。川場田園プラザは、豊かな自然と農山村の暮らしを活かし、地域の魅力を広く伝えるとともに、むらづくりの核として地域の活性化をけん引してきました。近年は、観光と農業の新たな連携モデルとして、地域の資源を循環させる取組を一層強化しています。
川場田園プラザは、官公庁長官表彰をはじめ、じゃらん道の駅グランプリを3回受賞するなど全国でも人気の道の駅です。約5haの敷地の中に、川場産新鮮野菜などを販売する「ファーマーズマーケット」や「ミート」「ミルク」「ビール」「ベーカリー」「チーズ」といった食品加工・販売所、地場産品を活かした各種レストランなど、川場ならではを味わえる施設が建ち並んでいるのが魅力の一つです。
利用者アンケートによれば、景観が綺麗でゆっくりできること、美味しいものが揃っていることが支持される理由になっています。景観は川場村がもっとも重視している点であり、独自に美しいむらづくり条例を制定し、民間資本による乱開発を抑えてきた経緯があります。広大な敷地にゆったりと施設が配置され、展望台からは眼下に広がる田園風景を望むことができます。さらに魅力を高めているのが、個性あふれる工房です。「農業プラス観光」を標榜する川場村らしく、地場の農畜産物を活用した加工品、料理を提供することで差別化を図っています。各製造部門は基本的に社員による内製化をめざしており、各施設において県内外のメーカーなどで製造ノウハウを学ばせるなど、基本的に地場産品を利用したミルク・ミート・ビール・チーズなどの製造工場を有しています。このほか、園内には川場産の地粉を使った手打ち蕎麦を振る舞う「そば処虚空蔵」、食事処あかくら、川場産コシヒカリ「雪ほたか」で作るおにぎりを販売する「かわばんち」、そして物産館などの施設が建ち並びます。また、敷地内には子ども向けの遊具や、5千本のブルーベリーが植えられたブルーベリー公園があり、夏にはブルーベリーの摘み取りが無料で体験できるなど、一般的な道の駅とは異なり、買い物や休憩に留まらず園内を散策していただける施設になっております。
ぜひ一度、道の駅田園プラザ川場に足をお運びください。お待ちしております。

東京都世田谷区では基本計画の重点事業の一つとして「第二のふるさとづくり」を位置づけ、1979年より調査研究を重ねておりました。候補地選定に当たり52市町村の候補地が立候補しました。最終的に本村に決定したわけですが、理由としては世田谷区とのアクセス性(関越道沼田ICからの利便性)、村のロケーション(田園風景)そして村の取組姿勢が評価されたと聞いております。
そして群馬県・東京都両知事立ち会いにより「健康村づくり相互協力協定」(通称:縁組協定)を昭和56年に締結して、宿泊施設「ふじやまビレジ」と「なかのビレジ」を交流事業の拠点として、都市と農村の交流を積極的に展開してきました。
健康村づくりの活動はすでに44年を迎え、来村した区民は161万人を数えるまでになりました。区立小学校の移動教室では71万人の児童が川場村を訪れてさまざまな体験学習を行っております。最初の頃参加した児童はすでに結婚し、今では我が子、そして孫と訪れるようになりました。
縁組協定以来、開設に向けて山村留学や区内でのホームステイ、手作り食品づくり、キャンプ交流等の予備活動が行われ、健康村施設の設置後には、自然環境、農林業、教育、文化、スポーツ等を通じた本格的な相互交流へと発展しております。阪神淡路大震災を教訓として、災害時の相互協力協定や村有スポーツ施設の区民利用の協定等も締結されました。これらの交流は、川場村のむらづくりに多大な影響を与えております。

●協働による森林整備(友好の森事業)
世田谷区との縁組協定10周年を迎えた平成4年、世田谷区と川場村は「友好の森事業に関する相互協力協定」を締結しました。これは縁組協定を支える川場村の自然環境の恵みを享受するだけでなく、交流事業の一環として保全育成しようとするものです。具体策として、自分たちの身近なところにある森林を自分たちで守り、育てていくことを通して環境問題の新しい取組のあり方を追求しようと、区民健康村施設「なかのビレジ」周辺の約80 haを友好の森区域に定め、ここを主な活動のフィールドとして森林作業や自然体験、環境に関する調査観測等を実施しております。
美しい川場村を舞台にさらなる交流が花開き、川場村の豊かな自然環境を次世代に残していけるよう今後も推進してまいります。

川場村は面積の86%を山林が占めており、1980年ごろまで林業が栄えていましたが、輸入木材の増加に伴って国産材の価格が低迷、山の手入れができなくなりました。川場村は、コシヒカリやリンゴなどの特産品に恵まれており、水源を守る意味でも山を蘇らせたいという思いがありました。そこで、地域資源である木を有効に活用することで、新たな産業やエネルギーを創出し、林業を活性化させ、地域振興にも繋げていこうという木材コンビナート事業が始動しました。
まず初めに、事業主体となる株式会社ウッドビレジ川場を設立しました。これは、川場村が株式の52%を保有する第三セクターになります。ウッドビレジ川場では、利根沼田森林組合から未利用間伐材・低品位材を入荷し、製材と木質チップ生産を行っています。
製材事業では角材を中心に出荷しており、ガーデニングの資材(枕木など)が主な出荷品です。木質チップ生産事業になりますが、入荷した間伐材と端材でチップ製造をし、発電事業者などに出荷をしております。発電事業ですが、設備関係はドイツ製の木質ガス化装置・発電機・乾燥装置を使い、FITにより1kw/h44円で売電、発電出力は45 kw/hになります。当初、稼働率は低迷しておりましたが、現在では80%ほどの高水準に達しています。発電した電力ですが、この電力を本来ならば地産地消したかったのですが、規模が小さいなどの理由があり、縁組協定を締結する世田谷区の一般家庭50軒ほどに買っていただいてます。交流事業の発展系として、川場村と世田谷区でこの仕組みづくりをしました。

また、冬期の12月中旬~翌年5月中旬くらいまで、ビニールハウスによりイチゴの温室栽培を行っています。生産したイチゴは道の駅川場田園プラザに出荷しており、冬場の商品棚に彩りを加えています。
豊富な森林を所有する山村が先頭をを切ってモデル地域となれるようにチャレンジを続けております。

川場村では100年先を見据えた自主自立のむらづくりを進めており、行政と経済の拠点を集約した「川場ベース」を建設しました。川場ベースには、防災機能を備えた「役場庁舎」、世代や地域を越えた活動が期待される「交流ホール」、人々が集い・学ぶ「むらの学習館」などがあります。役場庁舎は地元木材を積極的に利用し、村の顔となる施設を「川場らしく」表現しました。また、積極的に自然エネルギーの活用を図りました。エネルギーセンターでは、村の産業である林業から生まれる木質チップを燃料とする木質バイオマスボイラーと太陽光発電などの再生可能エネルギーを採用しています。川場ベースは、住民が安心して生活できるための拠点施設として期待されています。

また、近年の少子化の進行により児童生徒数が減少し、教育環境にも変化が生じておりますが、川場村では県内で五校目となる義務教育学校(小中一貫校)の川場学園を開校しました。増築した校舎には、児童生徒が百年にわたり手入れを続けてきた学校林の木材が使用されています。長年大切に育てられた木々が活用された教室は、自然とのつながりを感じられる温かみのある空間となっています。早速県内外からの問い合わせをいただくなど、今後の移住定住対策の一つとしても期待されています。
群馬県川場村
むらづくり振興課