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山形県三川町/小さな町が叶える安心な子育て、確かな健康づくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2025年11月3日更新

三川町の全景

▲三川町の全景


山形県三川町

3339号(2025年11月3日)
山形県三川町
総務課・健康福祉課・健康福祉課子育て支援室 


町の概要

鳥海山と両田川橋

 三川町は、山形県庄内平野のほぼ中央に位置する、面積33.22km²の県内では2番目に小さな町になります。広大な空と大地が織りなす四季折々の美しい田園風景は町民に深く愛されています。北に秀峰・鳥海山、東に霊峰・出羽三山を望み、その名の通り、赤川、京田川、大山川の「三つの川」の流域に位置したことが名前の由来となっています。

 昭和30年(1955年)の「三川村」誕生から、今年で70周年を迎えます。現在、人口は6,984人(令和7年8月31日現在)と減少傾向にありますが、世帯数は増加しているのが特徴です。

交通の要衝として発展する町の機能

 広大な庄内平野の中央に位置し、鶴岡市・酒田市・庄内町という主要三市町に隣接しています。国道7号三川バイパスなどの主要道が縦横に通り、庄内空港や日本海東北自動車道へのアクセスも容易なため、庄内地方の交通と物流の要衝地として発展してきました。

 町内には、山形県庄内総合支庁をはじめとする行政機関、庄内青果物地方卸売市場などの経済・物流機能、大型商業施設や工業・産業団地が集積しています。また、道の駅や温泉、宿泊機能を持つ交流拠点「いろり火の里」も充実しており、これらが町の経済と賑わいを支える基盤となっています。

左:なの花温泉田田「岩風呂」 右:町の花「なの花」といろり火の里 「なの花温泉田田」

「子育ての安心」を地域で育む~三川町の挑戦~

 三川町は、全国的に人口減少や少子化が進む中、「あふれる笑顔 みんなが住みやすいまち ハートフルタウンみかわ」を将来像に掲げ、特に「子育て支援」と「町民の健康づくり」を最優先課題として取り組んできました。

 令和6年4月に民間有識者による「人口戦略会議」が公表した『消滅可能性自治体』リストにおいて、山形県内の町では唯一、三川町が該当しませんでした。その背景には、「すべての子どもの幸せの実現に向けて地域社会全体で子育て世帯を支援していくまちづくり」という基本理念のもと、小さな町だからこそできる、「顔の見える」「切れ目のない」「きめ細か」な支援体制を築いてきた成果であると言えます。

「出産祝金制度」で子育て世帯を応援

 町が子育て施策の柱としたのが「出産祝金制度」です。出産を迎える家庭には、

  • 第1子 10万円、
  • 第2子 30万円
  • 第3子以降 50万円(10万円×5年間)

をそれぞれ支給し、子育て世帯の経済的な支援を行っています。保護者の方々からは、「子どもに一番お金がかかる時期にいただけるのは本当に助かる」、「町も誕生を一緒に喜んでくれてうれしい」といった喜びの声が寄せられています。

 この制度の導入後、本町の合計特殊出生率は高水準で推移しており(平成26年2.24から令和元年2.04まで6年間2.0を上回る)、子どもを産むきっかけとして大きな成果を上げているものと推察されます。さらに、令和6年度には、第4子の出生割合が5・7%を記録し、多子世帯への支援が着実に成果として表れています。

子育て支援と地域交流の複合拠点「テオトル」誕生

 令和2年度に、子育て交流施設「テオトル」が完成しました。屋内型の大型遊具を備え、天候に左右されず子どもたちがのびのびと遊べる空間を提供しています。施設内には「子育て支援センター」を設置し、専門の支援員によるきめ細かな対応が図られています。

 また、講演会やイベントに対応できる多目的ホールや、施設の老朽化に伴い要望のあった学童保育所も併設。子育てと地域交流の拠点となる複合施設として、町内のみならず町外からも多くご利用いただいています。さまざまな子育て交流機会が設けられる中で、町保健師との連携による育児相談なども開催され、子育て世代を多面的に支援しています。

左:子育て交流施設テオトル 右:テオトルの大型遊具

左:学童保育所の様子(テオトル内) 右:子育て支援センター(テオトル内)

地の利を活かした若い世帯の定住促進策

 子育て環境の整備を目的に、若年層の定住促進策として町と民間が連携し、住環境の充実に力を入れています。町内でも、核家族化が進む中で、若い世帯が町内に新たに住宅を建築し、安心して子どもを産み育てられる基盤が整いつつあります。

 具体的には、実家近くに住むことで、祖父母からの育児支援を受けやすくなることは、町外への転出を防ぎ、町内での定住を後押しする要因となっています。こうした家族間の子育てに関する支え合いは、子育て世帯の精神的・経済的な安定にもつながっていると考えています。

 また、三川町は鶴岡市・酒田市の中間に位置し、就業にかかる通勤圏としての利便性が高いことも大きな魅力となっています。勤務先の選択肢が広がり、共働き世帯にとっても魅力的な立地条件であり、隣接する2市に比べ比較的安価な土地価格も相まって、「三川町に住みたい」という動機付けにつながっています。

 今後は、「住環境」「家族支援」「交通利便性」の三位一体の強みを活かし、さらなる子育て支援施策の充実を図ることで、若年層の定住促進と出生率の維持・向上につなげていくことが期待されます。

母子保健から育む子育て環境や命の尊さ教育

 町では、保健師が中心となり、健診や相談会、乳幼児向けの教室を積極的に開催しています。また、教育委員会等関係機関と連携し、子どもの健やかな成長はもちろん、その家族にも寄り添った支援を行っています。

 特徴的な事業として、命の尊さを知り、赤ちゃんを慈しむ心を育てることを目的とした、「思春期ふれあい体験事業」を平成11年度から継続して実施しています。この事業は、町内の3つの小学校に保健師が出向き、赤ちゃんと保護者の方にご協力いただきながら、児童が実際に赤ちゃんとふれあう体験や、母親から出産の大変さ、そして子どもへの思いを直接聞く機会を設けています。最初は戸惑いや照れを見せていた子どもたちも、次第に慣れ、一生懸命に赤ちゃんをあやす姿が見られます。

 その姿を見るたびに、この取組が子どもたちにとって将来の「親育」につながっていることを感じています。三川町で育った子どもたちが親になった姿を見て、その重要性を改めて実感しています。

左:保健師との赤ちゃん相談 右:思春期ふれあい体験事業

健康寿命の延伸に向けた健康づくりと地域の活性化

 町では、住民の「健康寿命の延伸」をめざし、自主的な活動と連動したユニークな健康づくりを推進しています。

ミニ健康まつりの開催

 本町には27の町内会があり、その多くで「健康体力づくりのつどい(町内会ミニ健康まつり)」が開催されています。これは、昭和53年に国の第1次国民健康づくり運動の一環として、当時の町保健師の提唱により始まった、歴史ある町内会主体の健康イベントとして続いています。

 コロナ禍の影響で、一時開催が中止されていた時期もありましたが、現在では再開する町内会が増えています。健康に対する価値観の多様化や時代の変化を感じながらも、各町内会が工夫を凝らしたミニ健康まつりに取り組んでおり、町としても、こうした住民の自主的な活動を積極的に支援しています。

 この取組は、住民の健康意識を高め、体を動かす習慣づくりを通じて、健康寿命の延伸に貢献していると考えています。また、住民が「集い」「考え」「取り組む」貴重な機会となることで、地域のつながりを育み、コミュニティの再構築を促す場ともなっており、地域の活性化や地域防災力の強化にもつながることから、今後ますます重要な取組になるものと思われます。

からだつうしんぼ週間の様子

「みかわマイチャレ」で楽しみながら健康づくり

 平成28年度から「みかわマイレージチャレンジ事業(みかわマイチャレ)」を実施しています。町の健康寿命を延ばす3つの柱「生活習慣病予防」「こころの健康づくりとよりよいコミュニティ」「介護予防」をコンセプトに、先に紹介したミニ健康まつりをはじめ、健診受診、健康教室、ボランティア等へ参加するとポイントが貯まる、町民が楽しみながら取り組める事業です。

 

からだつうしんぼ週間「体組成計」

 その中で、特に好評なのは「健さんのからだつうしんぼ週間」で、「体成分分析装置(通称『健さん』と呼んでいます)」を、町民が集まる役場ロビーに配置し、年間3回、一週間にわたって測定会を開催しています。健康に関心のある町民が気軽に測定会に来庁し、生活習慣と健康状態を確認、時折保健師の温かい励ましを受けながら、にぎやかに健康づくりに取り組んでいます。また、ポイント達成者には、健康グッズや町内で使用できる商品券等と交換ができ、町民の健康づくりへの効果はもちろん、住民同士のコミュニティの活性化につながっています。

 

いつまでも自立した生活を送れる環境づくり

 一方で、「社会参加」が高齢者の健康に大きな効果があることから、「心豊かに元気で長生き」をモットーに、高齢者の健康づくりはもちろん、生きがいづくりにも注力しています。町や社会福祉協議会が中心となり、100歳体操や筋トレ教室、交流サロンやカフェ、老人クラブ活動、さらには住民主体の介護予防活動「よれちゃ家」といった高齢者のための「通いの場」と、高齢者が「輝ける活躍の場」を増やす取組も推進しています。

健康づくり

 このような取組が、高齢者の健康管理と介護予防意識の高まりにつながっており、令和6年度の後期高齢者健診受診率は39.58%で、県内トップクラスの高さを誇っています。また、介護保険の申請年齢が80歳前半となっており、全国平均の75歳前後より遅めであることは、町民が自立した生活を長く維持できる地域の取組が反映された結果といえるでしょう。

未来へ歩み続けるハートフルタウン

 三川町は、小さな町である利点を最大限に活かし、「顔の見える支援」「つながりのある支援」を大切にしています。子育てを孤立させない地域づくり、そして町民誰もが心身ともに健康でいられる健康づくり事業に積極的に取り組み、いつまでも元気で活気にあふれた地域をめざしています。

 子どもたちの笑顔とともに、すべての町民がいきいきとした暮らしがあふれる「ハートフルタウンみかわ」として、地域社会とともに力を合わせ、未来へと歩み続けてまいります。

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三川町総務課
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