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長野県南相木村/村の自然を守り続けていくために

印刷用ページを表示する 掲載日:2025年7月21日更新

立原高原に咲き誇るレンゲツツジ

▲立原高原に咲き誇るレンゲツツジ


長野県南相木村

3326号(2025年7月21日)
南相木村役場
総務課


  1. 南相木村の概要
  2. 林業への取組の背景
  3. 事業内容
  4. 森林分野の新たな取組として
  5. 立原高原が誇る2万株のレンゲツツジと満点の星空
  6. さまざまな表情を魅せる南相木の滝

 

  ● ポイント ●

  • 村内のカラマツから種を採取・育苗・植樹する循環型林業をめざしている
  • 村内の新規生産者によるカラマツ育苗に対して支援
  • 天候・地温等を記録し、どのような状況で発芽しやすいか・成長に適しているのかをデータとして記録・分析、今後の林業分野へ活用

1. 南相木村の概要

立岩湖で見られるアイスバブル

 南相木村は長野県の東南端、群馬県境に位置しており、東西20km、南北5kmの細長い地形で、千曲川の支流、南相木川が谷間を縫うように東から北西へ流れています。総面積は66.05km²でその約9割を山林原野が占めており、川に沿って10の集落が点在している小さな山村です。南相木川に沿ってさまざまな観光スポットが点在しており、大規模な水力発電ダムとしては日本一標高の高い1,532mに位置する「南相木ダム」や、高さ60mの奇岩「立岩」が名前の由来でシナノユキマスの氷上釣りなどが楽しめる湖「立岩湖」、長野県の名勝「おみかの滝」を始めとした見ごたえのある大きな滝が村内に6つ点在しています。「立岩湖」では冬季、日本で数カ所しか見ることのできない「アイスバブル」を見ることができます。アイスバブルは、1982年の台風が原因で発生するようになりました。上流から流れてきた草や木等が腐り、湖底にガスが溜まることで発生する非常に珍しい幻想的な光景です。

 また、隣村である北相木村との境に位置する日本200名山のひとつでもある「御座山」(おぐらさん)、5月末から6月中旬にかけて2万株を超えるレンゲツツジが一斉に咲き誇る「立原高原」等雄大な自然に囲まれた魅力的な景勝地がそろっています。村の基幹産業は豊かな自然環境が生みだす標高1,000mで生産する高原野菜をはじめとする農業や、カラマツを中心とする林業であります。地域資源を活用する取組は、過疎や人口減少が進行する当村においては地域振興の一助となっています。住民基本台帳による各年の人口推移を見ると、平成22年からの10年間ですべての年代の人口がおおむね減少傾向にあります。産業人口の高齢化や後継者不足の課題を解決するためには、地域資源を活用した産業の確立と、それに伴う雇用を促進し若年層の移住定住を進めることが大きな柱のひとつとなります。

2. 林業の現状と課題

 山林原野が村の総面積の9割を占める当村では、戦後に植林されたカラマツが伐期を迎え、更新伐が盛んに行われています。持続可能な循環型林業を確立させるためには、専門家や(有)南相木村故郷ふれあい公社事業部をはじめとする民間企業・団体と連携し、地域おこし協力隊制度を活用するなどUIJターンによる林業従事者の獲得・育成が今後の大きな鍵となってきます。小さな村ならではの持続可能な産業及び雇用を創出するために、森林資源の効果的な活用に取り組んでいくことが今後の大きな課題と考えています。

3. 事業内容

左:村内で大きく育つカラマツ 右:カラマツ育苗ハウス

 以前まで植林されるカラマツ苗は村外で生産されたものでしたが、現在は村内で育苗された苗が一部使用されています。村内のカラマツから種を採取し、村内で育苗し、植樹するという域内循環型の林業をめざすとともに、カラマツ苗の育苗が村の新たな産業となると期待されています。

 当村の育苗事業は、地域おこし協力隊として村に来られた方が、任期終了後それまで村で進めていたカラマツ育苗事業を引き継ぎ、令和6年度には法人化しさらなる規模拡大をめざしています。今では当村の林業分野において必要不可欠な人材となっています。

カラマツ苗3年目

 令和5年のカラマツ種子採取数は約10万粒で、そのうち発芽に至ったものは約2万数千株でした。発芽率は20~30%と非常に低く、年によりバラツキがあり発芽率を上げるためにどうしたらよいか日々研究を続けています。その取組の一つが情報収集です。カラマツの播種は冬から春にかけて行い、ハウス内で発芽するまで育成します。ハウス内では室温・湿度・水温等を記録し今後につなげていくためのデータ収集を行っています。

 苗はおよそ2年で15㎝まで成長し、夏を迎えた苗は屋外で育てます。この間も気候に合わせて水管理や霜よけ等を行い、出荷できるまでには3年程度かかります。この工程を経て無事に令和6年度出荷された苗は約2万本です。

佐久地区森林祭の様子

 当村で生産された種苗は、長野県佐久地域振興局が企画する佐久地区森林祭においても使用されました。出荷された苗の成長度合いや定着率について、利用された方には非常に好評をいただいております。当村で起業したカラマツ生産事業者は、令和6年度に長野県山林種苗協同組合の準組合員になることができました。今後の事業展開として年間5万本生産ができるように事業拡大をしていきます。

 本事業は、かん水施設の設置やハウス設置費など森林環境贈与税を活用し行っています。今後も当村の地域特性にあった方法で持続可能な産業及び雇用を創出し、森林資源の効果的な活用を続けられるよう努めてまいります。

4. 林業分野の新たな取組として

カラマツ材を利用して建築された村営住宅

 村内における林業分野を活性化させ、今ある資源を無駄にせず有効活用するべく、支障木伐採の際に出た、ナラ・カラマツ・クリ・ケヤキ等の木で薪づくりをしています。この薪は、役場庁舎内をはじめ公共施設等の薪ストーブで使用しています。この取組は近年価格高騰している光熱費を低く抑えることができ、生産された薪はふるさと納税返礼品として寄附をいただいた多くの皆さまに喜んでいただいています。

 平成30年度に和田地区に建設した村営住宅は、村内のカラマツをふんだんに使用した木造二階建てで、一戸あたり89.42m²、木の温もりが肌で感じられる住宅です。かつては、カラマツの未成熟材を使用し反りやねじれが多く、カラマツは使いづらいという印象ができ上がってしまいました。しかし、近年では乾燥や製材技術の向上により、狂いの少ないカラマツ材が建築材として利用できるようになりました。強度と耐久性を備え、カラマツ特有の赤みを帯びた木目は見る者を魅了し、今後のさらなる利用拡大が期待されるところです。当村でもカラマツの伐採から製材・利用と、循環型林業のシンボル的建物になるよう、村営住宅に利用していきます。

 カラマツの建築材としての利用について、もう少し触れたいと思います。カラマツは芯部が直接的なねじれの最大の原因となるため、製材する際に芯部を除外した木取りを行うことでねじれを防ぎます。乾燥は中温セット人口乾燥により内部割れを抑え、柱・梁桁・土台といった建築構造材として安心して使用できるようになりました。芯去り構造材は芯持ち材に比べて構造強度が1.5倍になるという試験結果もあります。また、今までは木取り後余った部分は、木製チップ利用、または破棄されていましたが、今回の住宅建設では木取りの工夫により限りある資源を有効に活用しています。その他の構造材、間柱、野縁、銅縁、はがら材や仕上げに使用する造作材、床材、天井材等にもカラマツを使用することで、村産の木材使用率が100%可能となります。内部仕上げは建具を除く、すべての木部にカラマツを使用しています。また、構造材、外壁材、造作材もすべて南相木村産カラマツです。目で見えて触れる所に南相木村産カラマツを使用することで木への愛着がわき、自然とともにある南相木の暮らしを感じることができます。CO2排出抑制が世界的な課題となっていますが、日本の産業界全体における建築部門の排出比率はおよそ45%を占めています。村内や県内のカラマツを使用することは、住宅建設におけるCO2排出削減に非常に有効となります。見渡す限り山林、それらすべてが村の財産であり、これからの循環型林業を進めていくための大切な資源です。この宝を私たちは守り続け、後世に大切に受け継いでいきます。

5. 立原高原が誇る2万株のレンゲツツジと満点の星空

左:立原高原キャンプ場 右:標高1,000mで育つ高原野菜

 天狗山(てんぐやま)の麓に広がる標高1,300mを超える『立原高原』。毎年5月末~6月にかけて2万株を超えるレンゲツツジが一斉に咲き誇り、レンゲツツジ、白樺、新緑のコントラストが訪れる多くの人々の目を楽しませてくれます。そして、色鮮やかに咲き、一面赤褐色に染まるレンゲツツジが南相木村に夏の訪れを知らせてくれます。レンゲツツジの開花とともに楽しむことができるのが立原高原キャンプ場です。キャンプ場には大小19棟の貸コテージやオートキャンプサイト、林間キャンプサイト、テントサウナ、サニタリーハウスが整備されています。静まり返った夜、都会では見られない満点の星空をゆっくりと眺めることができるフリースペースキャンプ場は大人気です。夏にはバーベキューや魚釣りを楽しむ多くの家族連れで賑わっています。南相木村の観光名所のほとんどが、古くからその地で、守り続け、その魅力が活かされています。

6. さまざまな表情を魅せる南相木の滝

左:滝見の湯 右:滝見の湯から眺められる犬ころの滝

 急峻な地形に囲まれた相木渓谷には、さまざまな表情を見せてくれる多くの滝が点在しています。村には2つの流域があり、南相木川には千ヶ滝・犬ころの滝・立岩の滝・おみかの滝が、もう一方の栗生川には不動の滝・千が淵の滝があります。夏は滝巡りをしながらたっぷりマイナスイオンを浴び、冬は一面が凍り迫力のある美しい滝を楽しむことができます。中でも『おみかの滝』は長野県の名勝地に指定されている村を代表する観光名所です。滝は上淵、中淵、下淵と呼ばれる甕状をした3つの滝壺があり、高さ15m、深さ7m、幅14mの勇壮な滝です。遊歩道として岩盤を掘ったトンネルから滝を見ることができ、四季折々の景色を楽しむことができます。また、日帰り温泉施設の『滝見の湯』からは犬ころの滝を眺めることができます。

 これからも、かけがえのない自然を大切に守り続け、自然から得られる多くの恵みを受けながら、訪れる皆さんが楽しめ、生活する人も皆が笑顔であふれる村をめざしてまいります。ぜひ、一度南相木村へお越しください。皆さまにお会いできるのを楽しみにしています。


南相木村役場
総務課