▲一級河川山国川の空撮(左:吉富町 右:大分県中津市)
福岡県吉富町
3311号(2025年3月3日)
福岡県吉富町
未来まちづくり課・福祉保険課
九州で一番小さな町は、東西に1.8km、南北に4.0km、面積5.72km²の車であれば5分弱で通り過ぎてしまうほどのコンパクトさ。そんな九州一小さな町、吉富町の特徴は小さいけれど田舎すぎず都会すぎない、歴史や伝統文化等の魅力がたくさん詰まっているところです。また、一級河川の山国川を県境にからあげの聖地で有名な大分県中津市、海の幸が豊富な豊前海に面していて、美味しい食文化や美しい自然に恵まれているところもこのまちの魅力のひとつと言えます。そしてこの町では、オリンピックの開催年と同じ4年に一度、神様が相撲をとります。鎌倉時代などに作られた古い傀儡子(くぐつ/操り人形の原形と考えられるもの)を使い、相撲を奉納する神事は大変めずらしく、この貴重な遺産を一目見ようと町の北部に位置する八幡古表神社に全国から多くの人が訪れます。
気候は年間を通じて雨量も少なく、瀬戸内海型に区分される乾燥・多照の平均気温16~17℃で冬は暖かく、夏は涼しい暮らしやすい温暖な地域です。吉富町も人口減少は続いていましたが、町の子育て支援、移住定住支援の施策の充実で、平成29年には増加に転じるなど、人口減に一定の歯止めがかかりました。吉富町では、今後も人口減少・少子高齢化の進行による影響への対応を重点化した政策とこどもたちが夢を抱き、将来も住み続けたいと思えるまちづくりを進めていきます。
吉富町では医療費及び介護給付費の増高が課題となっています。国保医療費においては、平成29年度よりほぼ毎年度、高医療費市町村に指定され、令和4年度の1人あたりの医療費は約47万円となっており、高い状況です。疾患別内訳では、悪性腫瘍、精神疾患、生活習慣病に比重が大きく、これに付随するように介護保険においても認定率は17.8%、1人あたりの介護給付費は31.2万円と5年前と比較して増加の一途を辿っています。そのため、町をあげて健康づくりや介護予防、生活習慣の改善に取り組むことが重要だと考えています。
ここでは医療費・介護給付費の抑制をめざした吉富町の取組をご紹介します。
令和5年12月1日から運用を開始した介護予防ボランティアポイント事業は、65歳以上を対象に、日常の通いの場におけるさまざまな取組の中に「自助や共助」といった意識の醸成につながることを目的に計画し、高齢者が行う健康づくり・ボランティア活動・介護予防活動をポイントにより評価し、取得したポイントを商品券や地域の公共交通機関の利用券に交換できるものです。参加申込をした方にポイントカードを交付し、町や地域包括支援センターが開催するイベントや介護予防教室に参加したり、住民主体の活動団体が行う介護予防につながる活動に参加したりするとポイントを取得できます。現在の受付団体は54団体、参加者数は364名となり、町の65歳以上の人口の約17.6%にあたる数字であり、いまだ増加傾向です。
介護予防ボランティアポイント事業の検討過程において重視してきたことは、大きく分けると①すべての住民のための仕組みとなること、②これまでの地域住民の取組を活かす仕組みとすること、③運用展開において創意工夫が生まれやすい環境を整えること、の3つです。
同時に、住民同士が気にかけあう関係性を深めるための「地域づくりへの支援」を重視しています。既にある地域のつながりや支え合う関係性を共有し、地域住民の主体性を最も尊重し、関わる住民の意見を聴いたうえで、行政から必要な範囲で活動を応援するというボトムアップの視点を重視するために、5回の住民懇談会を開催しました。町民の間で口コミにより事業が浸透していくという副次的な効果が生まれています。
基盤体制を支える「互助や共助」といった意識の醸成も通いの場の担い手へボランティア等のポイント付与によるインセンティブ制度の導入、将来の医療・介護に対する課題解決策を、小さな町であるからこそ一人ひとりの顔が見える、ちょっと良い町、ちょうどイイ町“九州で一番小さな町”から発信したいとの考えから、新たに取り組むものです。
よしとみ介護予防ポイント事業は65歳以上を対象としたグループ活動を対象としているのに対し、今年度より開始した「吉富町健幸ポイントアプリ事業」は個人の活動を評価するものになります。お気付きの方もいるかもしれませんが、 “健康”を“健幸”としているのは、「町民の皆さまがいつまでも健康で幸せな生活を送っていただきたい」という願いが込められています。
この事業では、株式会社タニタヘルスリンクに事業を一部委託しており、40歳以上の参加者が専用のスマートフォンアプリや活動量計を用いて計測した日々の歩数や、町の保健センターに設置している体組成計で自身の健康状態をチェックすることでポイントが付与され、取得したポイントに応じて商品券等と交換できます。
専用アプリでは、日々の歩数等のデータがグラフ等で確認できることに加え、健康コラムや健康レシピ、ショートドラマが閲覧でき、楽しみながら自然と健康的な生活習慣を送るようになれるような工夫がなされています。
7月から12月までの半年間を50人を対象としたモニタリング期間としています。効果検証や事業見直しをした後、今年度中に本格実施へ移行する予定です。また、交換できる報奨品について現在は商品券だけですが、町の特産品や町内で使える食事券等のラインナップを増やし、地域経済の活性化につなげることを視野に入れています。
なお、財源としてはデジタル田園都市国家構想交付金を活用しており、事業を通してデジタルデバイスを活用した健康づくり・健康管理の推進を図りたいと考えています。
吉富町は、一級河川の山国川と二級河川の佐井川に抱かれた自然豊かな町です。特に吉富海岸は、その遠浅な地形が生み出す独特の環境を持ち、私たちの暮らしと自然との関わりを考えさせてくれる大切な場所です。
26年前の1998年、町民の皆さまの「美しい海を守りたい」という思いから始まった海岸清掃活動。今では人口の約1割を超える方々が参加する地域の誇れる取組へと成長しました。この活動は、国連のSDGsが採択される17年も前から、すでに環境保全という世界共通の課題に向き合っていた先進的な取組だったのです。
そして2024年、この長年の活動と町全体で進めるSDGs教室の取組が実を結び、吉富町は内閣府の「SDGs未来都市」に選定されました。九州で最も小さな自治体である私たちの町が、環境保全、脱炭素、地域コミュニティの活性化において、全国の模範となる取組を行っていると認められたのです。
吉富海岸再生プロジェクトを軸とした私たちの挑戦は、規模は小さくとも、確かな成果を上げています。町民一人一人の環境への想いと行動が、26年の時を経て、国が推進するデジタル田園都市国家構想の中で重要な役割を担うまでに発展したと言えます。
これからも吉富町は、「小さくてもキラリと光る町」として、地域の個性を活かしながら、持続可能な未来づくりに挑戦し続けます。近隣自治体との連携を深めながら、私たちの経験と知恵を活かし、全国の地方創生のモデルとなることをめざしてまいります。
私たち吉富町は、「誰一人取り残さない」という想いを胸に、経済産業省の「ガバメントピッチ」を通じて、新たな町づくりに挑戦しています。
特に力を入れているのが、高齢者の見守り支援とデジタル技術の融合です。最新テクノロジーを活用しながらも温かみのある支援の実現と、行政サービスのペーパーレス化による環境にやさしい町づくりを進めています。
九州一小さな町だからこそ、地域企業やヘルスケア企業との絆を大切にしながら、実証実験から着実に成果を積み重ねていく方法を選びました。この経験は、今後の町づくりにおける貴重な財産となり、さまざまな課題解決にも活かせると考えています。
吉富町は、規模は小さくとも、未来に向けた大きな夢を持っています。デジタル技術を活用しながら、「人」を中心に据えた温かみのある町づくりを進めています。ぜひ、伝統と革新が調和する私たちの町へお越しください。
町民の皆さまの健康で豊かな暮らしのために。
私たちは、これからも挑戦を続けます。
福岡県吉富町
未来まちづくり課・福祉保険課