▲酒匂川流域に形成された扇状地に広がる、人と自然が調和した「田舎モダン」なまち開成町
神奈川県開成町
3309号(2025年2月10日)
神奈川県開成町
企画政策課
開成町は、神奈川県西部の足柄上地区中央部に位置し、東京から70km圏内、横浜から50kmの距離にあり、町域は東西1.7km、南北3.8km、総面積6.55km²と東日本でいちばん面積が小さな町です。
町域の東には酒匂川が流れ、西には箱根外輪山、南には相模湾、北には丹沢山塊を望むなど、自然に恵まれたなだらかな平坦地です。
昭和30年(1955年)2月1日に、酒田村と吉田島村が合併して誕生した開成町は、令和7年(2025年)に町制施行70周年を迎えました。
合併当時の人口は4,633人でしたが、土地区画整理事業等の市街地整備を計画的に進めてきたことにより、人口の増加傾向が続いており、現在は人口18,743人(令和6年10月1日現在)の町に成長しています。
とくに平成17年(2005年)、平成22年(2010年)、平成27年(2015年)、令和2年(2020年)の国勢調査では、4期連続で神奈川県内の市町村の中で人口増加率がトップとなっています。
また、開成町の年少人口割合は14.8%(令和2年国勢調査)となっており、こちらも神奈川県内の市町村の中で最も高い割合となっています。
開成町では、平成27年(2015年)の町制施行60周年を、「町の新たなスタート」と位置付け、町のさらなる飛躍のために町そのもののブランド化(=ブランディング)に取り組むこととしました。
今後も選ばれる自治体であり続けるために、「開成町らしさ」とは何かを追求し、デザインの力で磨き上げ、ビジュアル化することで、「住みたい」、「住み続けたい」、「訪れたい」、「戻ってきたい」という思いを増やすことを目的にブランディングの取組を進めています。
開成町の魅力は、都市部からの絶妙な距離感の中で、ほどよい田舎の雰囲気を楽しみながら、便利な生活を送っている町民のライフスタイルと、小さな町ならではの家族のような町の一体感です。
当たり前のようにある日常空間の「魅力」や「らしさ」は、表現しにくいものですが、広報紙等の町民生活に密接に関わるものから、人を呼び込むための町外への発信ツールまで、あらゆるものを「田舎モダン」というブランディングコンセプトに基づきデザインし、町のブランドイメージの向上を図っています。
都市部からの絶妙な距離感の中で、ほどよい田舎の雰囲気を楽しむことができる施設やイベントをご紹介します。
(1)あしがり郷「瀬戸屋敷」
築300年の古民家「瀬戸屋敷」は、この地域の名主を代々勤めてきた瀬戸家のお屋敷。
約1,800坪の屋敷内には茅葺の大きな主屋、土蔵等があり、ひなまつり、端午の節句、七夕等の伝統的な年中行事を再現しています。
平成29年度(2017年度)から指定管理者による管理運営に移行し、「なつかしいって、あたらしい」をテーマに、カフェ(カフェハッコ)の運営、新たなイベントの企画など民間事業者のノウハウを生かした取組を進めています。
また、令和2年度(2020年度)には、地方創生の一環として、案内・販売・加工の3つの機能を備えた交流拠点施設(アトリエハッコ)を整備し、交流人口の拡大や6次産業化による農業経営の活性化を図っています。
(2)開成水辺スポーツ公園
酒匂川のほとりにある総合スポーツ公園。
関東で最初のコースが設けられたパークゴルフをはじめ、サッカー、野球、ソフトボール等多目的に利用でき、季節ごとの美しい草花も楽しめます。
(3)開成町瀬戸屋敷ひなまつり(2月・3月)
「瀬戸屋敷」で行われるひなまつりには、江戸時代の風情がいっぱい。
地元の蔵から発見された300年前の「享保雛」や瀬戸屋敷収蔵のひな人形、婦人会手づくりの「つるし雛」が7,000個以上展示されます。
(4)開成町あじさいまつり(6月)
東京ドーム約3.6個分の広大な水田地帯の中に、あじさいが5,000株。
田植えをしたばかりの緑に染まった田んぼと虹色に咲き誇るあじさいに見とれながら、カタツムリになった気分でゆっくりと散策することができます。
(5)開成町納涼まつり(8月)
夏のおわりをしめくくる納涼まつり。
風が吹き抜ける気持ちのいい川辺で、食べたり飲んだり、音楽を聴いたり、芝生に寝転んだり。フィナーレはほぼ真上に打ち上がる迫力の花火。夏のおもいでがギュッと詰まった一日です。
(6)開成町阿波おどり(9月)
自治会や事業所ごとに一致団結した町内連をはじめ、町外連も参加し、約1,000人の踊り手が役場周辺の道路を練り歩きます。
東日本でいちばん小さな町が一年でいちばん熱くなる夜に、きっとあなたのこころも踊りだします。
(7)酒蔵の再生
開成町は酒田村と吉田島村が合併して誕生しました。かつて酒田村と呼ばれていたように酒米栽培が盛んな地域でした。
平成30年(2018年)に、町内唯一の酒蔵である瀬戸酒造店が自家醸造を38年ぶりに再開しました。
開成町産の酒米、酒蔵に根付いていた酵母、開成町のおいしい地下水を使って、瀬戸酒造店を代表する幕末からの伝統銘柄「酒田錦」が復活するなど、農業経営の活性化と交流人口の拡大につながる民間事業が進んでいます。
開成町では、東日本大震災を契機に、役場庁舎が安全安心の総合防災拠点の役割を果たすことができるよう新庁舎整備の検討を開始し、平成27年(2015年)に「ひとと自然が調和した“みらい”への空間~『田舎モダン』を象徴する庁舎~」をコンセプトとする開成町新庁舎建設基本構想をとりまとめ、その後、令和2年(2020年)まで新庁舎建設に取り組んできました。
また、福島第一原発事故をきっかけに、行政が旗振り役となって再生可能エネルギーの普及を図っていく必要があるとの考えから、新庁舎整備の基本方針には、「地球環境への負荷、ライフサイクルコストを縮減するZEB庁舎」を掲げ、開成町の豊富な資源である水を空調熱源として利用するなど、高効率な省エネルギー設備を備えることにより、設計一次エネルギー消費量の81%の削減を実現しています。
その結果、建築物省エネルギー性能表示制度の「Nearly ZEB」及び「最高ランクの五つ星」の認証を庁舎として全国で初めて取得しました。また、令和2年度(2020年度)には新庁舎整備の取組が「かながわ地球環境賞(かながわスマートエネルギー計画部門)」を受賞しています。
山も森もない開成町は、二酸化炭素を吸収してくれる緑が少ない町です。
だからこそ町民の環境意識は高く、町を挙げての清掃活動である「クリーンデー」の実施や剪定枝をごみとせず資源として再生する「グリーンリサイクルセンター」の整備、平坦な地形を生かした「自転車のまちづくり」、町を縦横に走る農業用水路を活用した「小水力発電施設」の整備など、長年にわたって「地球にやさしいまちづくり」を進めてきました。
日本初のZEB庁舎での業務開始を好機と捉え、令和2年(2020年)3月5日に全国で79番目、神奈川県内で6番目に「ゼロカーボンシティ」を表明しました。
開成町は、平坦かつ狭小な町域の多くを住宅地と優良農地が占めており、メガソーラーを設置する広大な土地も、木質バイオマス発電のエネルギー源となる森林も、水力発電に必要な落差もないことから、再エネのポテンシャルが低いという課題がありました。
一方で、平成26年度(2014年度)に太陽光発電システムや家庭用エネルギー管理システム(HEMS)に対する補助制度を、平成28年度(2016年度)からゼロエネルギーハウス(ZEH)に対する補助制度を創設し、ゼロカーボンシティの表明や日本初のZEB庁舎の整備によって、町民の脱炭素への関心は非常に高い状態にありました。
令和2年(2020年)10月に政府が「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現をめざす」ことを宣言したことを受け、開成町では脱炭素ドミノのファーストピースになることで「環境先進都市」として町そのもののブランド価値の向上をめざし、脱炭素に向けた取組を加速させました。
開成町では、脱炭素に向けてさまざまな補助メニューを整備しています。
また、「開成町ゼロカーボンシティ創成加速化計画」が、環境省の「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」に採択されたため、一部の補助メニューでは、国の「重点対策加速化補助金」を同時に交付しています。
(1)ゼロエネルギーハウス等導入補助金
断熱性の向上や省エネ、創エネを組み合わせることで、年間のエネルギー収支0以下をめざす住宅を新築・リフォームする方を対象に、その費用の一部を補助しています。
(2)既存住宅スマートハウス化補助金
築1年以上の既存住宅に太陽熱利用システム、太陽光発電システム、エネファーム(家庭用燃料電池システム)、蓄電池(定置用リチウムイオン蓄電池)、家庭用エネルギー管理システム(HEMS)等の創エネ・蓄エネ・省エネ機器を導入する方を対象に、その費用の一部を補助しています。
(3)ソーラーカーポート導入補助金
自宅の敷地内の車庫に太陽光発電システムを導入する方を対象に、その費用の一部を補助しています。
(4)電気自動車等導入補助金
自家用車として電気自動車や超小型モビリティを導入する方、町内の自宅用にV2HやV2Lを導入する方を対象に、その費用の一部を補助しています。
(5)気候変動適応エアコン導入促進補助金
熱中症対策として自宅にエアコンがない高齢者世帯等に、エアコンの購入・設置費用の一部を補助しています。
(6)中小企業GX戦略設備導入補助金
町内の中小企業が太陽光発電設備や電気自動車等を導入する場合に、その費用の一部を補助しています。
また、太陽光発電設備等の導入に際して、金融機関の融資を受けた場合の利子補給制度を設けています。
とりとめのない文章におつきあいいただき、ありがとうございました。
今回は、脱炭素の取組を中心に、東日本でいちばん小さな町である開成町の挑戦について、ご紹介させていただきました。
お近くにお越しの際には、一足伸ばして、開成町にお立ち寄りいただき、『田舎モダン』なライフスタイルを表現するまちを感じていただければ幸いです。
神奈川県開成町
企画政策課