▲ 桜並木を走行するカナちゃんバス
大阪府河南町
3307号(2025年1月27日)
大阪府河南町
秘書企画課
●● ポイント ●●
―簡易型IC決済端末のメリット―
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河南町は大阪府の南東部に位置し、大阪市の中心部から約25km圏内にあります。
金剛・葛城山脈に連なる山地部とその前面に広がる丘陵地、大和川支流の石川水系によって形成された段丘地等で構成されており、町域の3分の1の山地部が金剛生駒紀泉国定公園に指定されているなど、みどり豊かな景観に恵まれています。
大都市近郊に位置しながら、今なお多くの緑に囲まれた豊かな自然と歴史を感じることができる環境は、本町の住民のみならず、本町を訪れる人々にとっても貴重な財産となっています。
河南町の歴史は古く、約1万年前の縄文時代早期の土器の出土に始まり、弥生時代には高所に集落が営まれるようになりました。そして古墳時代には、世界遺産である百舌鳥・古市古墳群に近接し、大和王権の影響を受けながら、史跡一須賀古墳群や寛弘寺古墳群等の300基以上の古墳が築かれる地となっていきます。
大和の飛鳥が「遠つ飛鳥」と呼ばれたのに対し、難波(なにわ)の宮と大和の飛鳥をむすぶ最古の官道である竹内街道に近い河南町を含む一帯は、「近つ飛鳥」と呼ばれ、国際色あふれる繁栄を誇っていた地であったことを感じることができます。
さらに古代には、役行者(えんのぎょうじゃ)の開基と伝わる高貴寺、西行法師ゆかりの弘川寺等の山深い地に法燈が灯り、江戸時代には、広く大阪や京都で活躍した高僧、慈雲尊者(じうんそんじゃ)が高貴寺に入山し、国際的にも評価されるサンスクリット研究や個性的な筆跡を残しています。河南の峻厳静謐な金剛・葛城の山々が神聖視され修行の場であったことは、日本遺産「葛城修験」の経塚や天孫降臨の「天磐船(あまのいわふね)」、役行者が一言主に奈良に通じる橋を架けさせようとした「久米の岩橋」といった伝説の残る奇岩群にも見て取ることができます。
その一方、南北朝時代には楠木正成の根城に近く、多くの山城が築かれるなど戦乱の地と化し、寺社や町もその戦火にさらされました。その戦乱がおさまった後に、大ヶ塚寺内町が興り、石川の水運を背景に市場町が形成され、再び発展をはじめました。
江戸時代には、一万石の代官所としての陣屋が築かれ、次第に農業を基盤とする都市近郊型の農村として発達しました。明治22年に市制・町村制により4村が誕生し、さらに昭和31年に4村が合併し、現在もみどり豊かな河南町として続いています。
河南町には“オンリーワン”があります。その名は、「金山古墳」。2つの円墳をつなぎ合わせた瓢形双円墳で、日本国内で双円墳と確認されたのは、「金山古墳」の1基のみであり、貴重な古墳となっています。
前方後円墳が衰退する古墳時代後期の築造とされており、墳丘長85.8m、周壕を含む総長が102mと、日本最大規模の大きさを誇ります。
北丘の石室内には横穴式の石室があり、2つの家型石棺が安置されていて、副葬品が出土しました。南丘にも石室があることが確認されましたが、未調査のため石室内の様子などはわかっておらず、未知の魅力が詰まっています。
平成3年には国の史跡に指定され、公園として保存・整備されており、憩いの場や歴史学習の場として親しまれています。
河南町にある「平石峠(ひらいしとうげ)経塚」と「高貴寺香華畑(こうきじこうげばた)経塚」が構成文化財に含まれる『「葛城修験」―里人とともに守り伝える修験道はじまりの地』が、令和2年に日本遺産の認定を受けました。
こうした歴史資源を活用したまちづくりを地域住民とともに展開していくことを目的に、近隣市にある阪南大学国際観光学科の学生たちと協力してPRを行っています。
町内の歴史・観光資源を巡るフィールドワークを実施し、学生目線で各観光資源の紹介文を作成してもらい、単に行政が文化財を紹介するのではなく、若者目線でも読んでいて楽しい広報を協働で行っています。
古い文化と歴史的環境に恵まれた河南町の象徴(町の木)として、河南町にはたくさんの「さくら」が植えられています。
さくらの持つ“優しさ”や“美しさ”に触れ合う場と、みんなで育てる意味の大切さを学びながら良好な景観を創出するため、町では「かなん桜プロジェクト」という組織を立ち上げています。このプロジェクトでは、さくらを町内外に発信する各種事業の実現に向けた推進方策の検討を行っています。
桜ガイドマップを作成し、おすすめの桜めぐりコースの紹介や、特製巻き寿司「桜まき」等の桜を楽しめる季節限定商品を地元店舗と協力しながらPRしています。また、桜の維持管理についてもこのプロジェクトの重要課題と位置づけ、外来害虫であるクビアカツヤカミキリの対策や木の世話をするさくら守の育成等の研究を進めています。
豊かな自然のなかに、歴史資源や観光資源が点在する河南町ですが、町内には鉄道駅がありません。そのため、町が運行するコミュニティバス(愛称:カナちゃんバス)が日常の移動手段として重要な役割を果たしています。
このカナちゃんバスは、大規模住宅団地や集落地等と町内の商業施設や公共施設等を結んでいます。
本町は人口戦略会議が公表したレポートでは「消滅可能性自治体」となっており、高齢化や人口減少等、さまざまな課題を抱えています。そのなかでも地域公共交通の確保は、住民生活を維持するために重要な課題となっています。
そうしたなか、働き方改革の観点から運転手の労務負担の軽減と、利用者の利便性向上を図ろうと導入したのが、カナちゃんバスのキャッシュレス化です。
運賃は一律で大人100円、小人50円(障がい者割引や乗継割引制度あり)となっています。従来は、降車時に現金または乗車券(事前に役場窓口で購入)を運賃箱に投入する形でのみ収納していました。
しかし、利用者から「他の公共交通機関と同様に、キャッシュレスでバスに乗りたい」という声があったこと、また、「運転手の労務負担軽減を図りたい」を実現するため、交通系ICカード決済の導入を視野に入れるようになりました。そんな折、地域のバス事業者を交えてキャッシュレス決済について検討する機会があり、交通系ICカードに対応している“簡易型IC決済端末”があることを知りました。
簡易型IC決済端末は、片手で持ち運べるサイズで、通常の交通系ICカード決済端末よりも低コストで導入ができ、新車購入を控えていた本町にとっては、車両ごとに簡単に持ち運べる点が決め手となりました。
他の公共交通機関を利用する人が多いため、交通系ICカードであれば、他の公共交通機関でも相互的に使えることも導入の後押しになり、新しく購入したバス2台と従来から代車として使用していたマイクロバス1台の計3台に簡易型IC決済端末を導入しました。
使い方の運転手研修や試験運転等を経て、利用者には、町ホームページや車内掲示、LINE配信で事前周知を行い、令和5年5月から本格運用をスタートしました。
簡易型IC決済端末は、交通系ICカードを1回タッチするだけで運賃が自動精算される仕組みです。据え付けの工事が不要なため、低コストでの導入が実現できました。
カナちゃんバスは、多い時には100人/日程度の乗客が利用されます。運賃が一律であるため、運賃計算自体は複雑ではありませんが、運転手自ら運賃を収納していたので、簡易型IC決済端末の導入が運転手の負担軽減にもつながりました。
運転手は、運転に集中できる環境がベストだと考えています。
さらに、カナちゃんバスは、利用者にわかりやすいよう停留所ごとに毎時の発車時刻を統一しています。天候や道路状況による誤差が生じやすいバスは、時間管理が容易ではありませんが、ICカード決済の導入により降車時間が短縮され、正確な運行にもつながっています。
高齢者が多いので、まだ現金払いの方が上回っている状況ですが、利用者の反応は好意的です。現金払いが減ることで、運転手の負担軽減や、乗客の利便性向上に一定の効果があったと評価しています。
簡易型IC決済端末では、どの時間帯に何人がキャッシュレス決済したか等のデータを取得することが可能です。今後も本町では、乗客数を維持するためのニーズ把握に努め、デジタル技術を活用して“愛される公共交通”をめざしていきたいと思っています。
高齢化による免許返納等で運転できない人を支えるなど、コミュニティバスは生活を維持するうえで必要不可欠な存在です。民間バス路線の廃止や運転手不足など、業界全体の問題があるなかで、交通事業者だけでなく地域全体で支え、協力し合って継続していかなければならないと考えています。
新しく購入したバスのデザインについて、町内にある大阪芸術大学デザイン学科の学生に提案をいただきました。提案のあった4つのデザインのなかから住民の皆さんの投票により決定しました。
<デザインのコンセプト~桜咲くカナバス~>
河南町の豊かな自然を表現した、川・風・桜吹雪がモチーフ。和服姿のカナちゃんを生かし、円満や繁栄、邪気を払う意味を持つ日本の伝統的な和柄を桜に取り入れました。走ることに意味のあるバスに。
地域公共交通を通じて「ニーズに応じた、誰もが移動しやすい、住みやすい公共交通サービスの確立により、町民の活動を支援する、持続可能なまち」の実現に向けて、今後も一歩先を行くまちづくりを進めていきたいと思います。
百聞は一見に如かず。ぜひ一度、といわず何度でも、河南町にお越しください。さくら色が可愛いカナちゃんバスでお出迎えいたします。また、春はイチゴ、夏・秋はイチジク、冬はミカン。河南町で育てられた美味しいものたちと心からお待ちしております。
大阪府河南町
秘書企画課