▲大自然に囲まれた緑豊かな町
北海道中標津町
3306号(2025年1月13日)
中標津町牛乳消費拡大推進委員会事務局
北海道中標津町農林課畜産係
係長 中川 由樹
中標津町は北海道の東部、根室管内の中部に位置し、東は標津町(根室振興局)、西は標茶町(釧路総合振興局)、南は別海町(根室振興局)、北は清里町(オホーツク総合振興局)に隣接しています。
町域は東西約42km、南北約27km、中標津町の総面積は684.87km²。
内陸性の気候で、夏の平均気温は20℃前後、冬の平均気温はマイナス10℃前後。積雪は道内でも少ない方です。
人口約22,300人に対し、牛の数が約43,000頭(いずれも令和6年8月時点)で酪農が盛んな「人より牛が多い町」としても知られています。
中標津町は、ひがし北海道地域の中核都市としての機能も充実していて、商業施設や中小企業等も多く立ち並び、買い物や食事にも大変便利で住みやすい町でもあります。
また、日本最東端の空港である「中標津空港」を有し、東京から100分、札幌から60分を直行便で結んでいます。
中標津町の開拓は明治44年から行われてきましたが、知床連山からの強風が穀物農業に影響を与えるため、開拓区画に基づく約550m四方の区画割に加え、約3,300mごとに約180m幅をもつ格子状防風林が計画的に形成されました。
昭和6~7年には、穀物農業が凶作により大打撃を受けたことをきっかけに乳牛主体の酪農へと転換が促進され、昭和40年頃までの第一次農業構造改善事業により、さらに牧草地が大幅に拡大しました。格子状防風林は草地を強風から守るだけでなく、草地の適切な保湿や害虫防止の機能があることから、植林が促進され、防風林の格子はいっそう明確となりました。
中標津町の第一次産業就業者は、一部が林業従業者によって占められているものの、大部分は農業従業者です。
中標津町の農業は北海道内3位の耕地面積を誇る平坦かつ広大な農用適地を有することから、草地型酪農を主体とした大型酪農地帯を形成しております。また、一部においては、馬鈴しょ、てん菜、大根、ブロッコリー、そば、小麦等の畑作も展開され、牛乳・乳製品をはじめとする、安全・安心で良質な食料供給基地としての重要な役割を果たしています。
中標津町は全国有数の酪農が盛んな町で、大自然に囲まれた環境のもと、格子状防風林が草地を守る役割を果たしていること等もあり、栄養価が高い牧草を食べて育った牛から搾られた生乳は生産量・乳品質ともに全国トップクラスを誇り、牛乳、チーズやヨーグルト、アイスクリーム等の乳製品をはじめとする特産品が数多くあります。
【『牛乳で乾杯条例』10周年記念事業内容】
(1)牛乳で乾杯!ミルクフォトでなかしべつを全国に発信しよう!(町民公募の乾杯条例紹介アイデア)(パンフレット参照)
(2)ミルク&チーズフェア(町民公募の牛乳消費拡大アイデア) 牛乳消費拡大、地産地消活動を支援することを目的に開催します。
場 所:中標津町総合文化会館
日 時:令和7年2月1日(土)10時~
※第50回なかしべつ冬まつりに合わせて、開催予定。
『牛乳で乾杯条例』制定経緯
~2014年に本条例をつくり、制定した当時の農林課長の手記より~
2013年に京都で初めて、日本酒の乾杯を推奨する通称「清酒で乾杯条例」が制定されたことをたまたま、自治体ニュースで知り、その時は漫然と中標津町なら牛乳で乾杯かな~と思ったんですね。その後、日本各地の酒どころで同じような条例が制定され始め、そのどれもがアルコールと言うことで、牛乳で乾杯条例を制定したらちょっと面白いかな~と本気で考え始めました。特に当地域の牛乳は美味しいだけでなく、乳質がトップクラスと言うのがあまり知られていなくて、ここをもっと知ってほしいと言う思いがありましたし。
また、本町には以前から、酪農家さんの団体で広めた牛乳で乾杯と言う習慣がすでに、その業界では根付いていて、例えば、選挙事務所開きとか、関係団体の会合だとかでは、普通に牛乳で乾杯していた土壌もありましたし。
直接牛乳の消費拡大につながらなくても、牛乳で乾杯の町で盛り上がることが出来たら、酪農を側面から応援すると言う条例の意義は大きいかなと思います。
おかげさまで、条例制定以降、たくさんのマスコミ報道にも取り上げていただき、酪農の町、中標津のPRにもつながったと感じています。
町をあげての取組を複数紹介いたします。
●なかしべつ牛乳プレミアムNA2 MILK
中標津町の青年酪農家たちが、牛乳を飲みたいけれど「お腹がゴロゴロするから苦手」と言う声に、牛乳の成分であるタンパク質(タンパク質βカゼインA2タイプの牛から搾ったミルク)に注目。たくさんの方に牛乳を飲んでいただきたい生産者の想いを日本で初めて製品化しました。
2024年日経トレンディヒット予測の第10位に「A2ミルク」が選ばれたことでも知られています。
・「βカゼインA2」とは
牛乳にはタンパク質が豊富に含まれており、タンパク質に含まれるカゼインのひとつにβカゼインがあります。このβカゼインには、A1とA2の2つのタイプがあります。
乳牛のうち一般的なホルスタイン牛にはA1タイプのみを出す牛、A1タイプとA2タイプの両方を出す牛、A2タイプのみを出す牛の3タイプに分けられ、通常の牛乳にはA1とA2の両方が含まれています。このうちA2タイプはお腹を壊しにくいと言われています。オーストラリア等をはじめとした海外ではA2タイプの牛乳は好評で年々需要が高まっており、日本国内でも話題のミルクです。
令和6年3月からは東京・虎ノ門のホテル「The Okura Tokyo」様のクラブラウンジで提供されるなど、多くの皆さんに飲んでいただく機会が増えております。
※乳糖不耐症の方には効果がない場合があります。乳アレルギーの方は飲まないでください。
●根釧台地の格子状防風林
中標津町の格子状防風林の景観は、次世代へ引き継ぎたい北海道の大切な宝物として2001年10月に北海道遺産「根釧台地の格子状防風林」として選定を受けた中標津町が誇る、北海道開拓の歴史の証です。格子状防風林は、北海道開拓の長い歴史の中で、人間が創り出し、守り育ててきた産業遺産であり、自然遺産でもあります。
・根釧台地の格子状防風林データ
中標津町・別海町・標津町・標茶町の4町にわたり植林が行われ、その面積は15,708ha。最長直線距離は約27km、総延長約648kmとなっています。
●J-クレジット制度(持続可能な循環型社会 環境首都なかしべつをめざして)
中標津町には約33,000haの森林があり、町の面積の約半分は森林になっています。
中標津町では、生活道路と農地を守る格子状防風林(北海道遺産に認定)等の適切な間伐の実施によって森林の健全育成を図り、森林の二酸化炭素吸収量を高め、地球温暖化防止に寄与する『地域のくらしを守る格子状防風林における間伐促進プロジェクト』を実施しています。また本プロジェクトでは、知床世界自然遺産に近隣する地域として、ヒグマやシマフクロウ等の希少野生生物の生息環境保全を図ることで、生物多様性の維持にも寄与します。
本事業により得た二酸化炭素吸収量について、国から『J-クレジット制度※1』の認証を受けました。認証を受けた二酸化炭素吸収量は、二酸化炭素排出削減や温室効果ガス削減といった環境貢献に取り組む町内外の事業者や団体等にカーボン・オフセット※2への利用として販売しています。
1t-CO2あたりの販売単価:10,000円(消費税別)
販売収益は、町有林の間伐や植栽費用として活用させていただきます。
※1:J-クレジット制度~省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用による二酸化炭素の排出削減量や、適切な森林管理による二酸化炭素の吸収量を国が認証する制度。
森林経営活動で認証を受けたのは、中標津町が全国初となります。
※2:カーボン・オフセット~企業や団体が、自らの活動によってどうしても生じてしまうCO2を他者の省エネ設備の導入などにより削減されたCO2で相殺し、埋め合わせることで実質的にCO2の排出がないようにする取組(下図参照)
●旬の食材活用推進事業
地域の豊富な食材を調理することで付加価値を高めるとともに、観光客だけではなく地元の方々にも満足してもらえる“その時季にそのお店でしか味わえない”「旬の食材を活かした料理」をPRすることで、地域の「旬」の理解が深まるとともに地元産品の知名度と魅力の向上を図り、メニューの定番化による継続的な誘客等の観光振興につなげる、なかしべつ旬の食材活用推進協議会が取り組んでいる事業です。
・旬の食材として季節ごとに中標津町内の認定店で「旬の食材限定メニュー」が提供されています。(左図パンフレット参照)
●岩谷学園ひがし北海道IT専門学校
北海道根室管内初となる高等教育機関として2024年4月に中標津町に開校。
最先端ITで地域産業を牽引し、社会に持続可能な変化をもたらすグローバルなITリーダーを育成します。
学科は地域未来情報テクノロジー科、その中に農業酪農ITコースと商工業観光ITコースがあります。農業酪農系と商工業観光系の組み合わせは、日本唯一です。
続いて、町の観光地を紹介します。
●開陽台
開陽台は北根室の中心、中標津の市街より約15kmに位置し、標高270mの小高い丘陵にある展望台からは「地球が丸く見える、視界330度の眺望」として豊かに広がる牧場、北海道遺産に登録された格子状防風林、そして遥か北方領土の国後島までも一望できます。
北海道を旅するライダーたちの“聖地”としても知られています。
●ミルクロード
「牛乳を出荷するタンクローリーが走る一直線の道」からその名がついたミルクロード。地図上はあくまでまっすぐな直線道路ですが、実際は縦のワインディングロード。この起伏が、単なる直線道路にはない魅力をライダーやドライバーに与えてくれます。牧歌的な風景を見ながら車やバイクを走らせれば、北海道の雄大さを自身の肌で感じ取ることができるはずです。
●養老牛温泉
市街地から車で約30分。標津川上流の深い森に囲まれた原生の自然の中の「養老牛温泉」。川のせせらぎの音、幾種もの野鳥のさえずり、森のアロマテラピーと相まって、自然界に包み込まれて癒される野趣性に富んだ環境から、仙境と呼ばれている秘湯中の秘湯です。
中標津町には豊かな自然や素晴らしい景観、四季折々の魅力ある観光資源、美味しい食材がたくさんあります。
日本最東端の空港である「中標津空港」は、釧路、根室方面や阿寒摩周国立公園、世界自然遺産・知床など、道東の玄関口として旅行にも、そして、仕事の拠点としても、とても便利な空港です。
また、根室~中標津経由~札幌間を約8時間で結ぶ都市間深夜バスも運行しており、重要な交通手段として利用されています。
魅力いっぱいの中標津町にぜひお越しいただき、最高のひとときをお過ごしください。
中標津町牛乳消費拡大推進委員会
事務局:北海道中標津町農林課畜産係
係長 中川 由樹