▲北部田園地帯から南方向を臨む精華町の風景
京都府精華町
3301号(2024年11月18日)
京都府精華町 総務部財政課
西川 和裕
本町は、京都府の南西端、京都・大阪・奈良の3つの都市圏のちょうど中間点に位置し、町域面積が25.68km²の比較的コンパクトな都市近郊型のまちで、人口は36,259人(令和6年9月1日現在)です。
京都と奈良を結ぶ旧街道筋に位置していることもあり、古くは万葉の時代からの農村集落として記録が残っており、古事記等にも地名が残っている歴史的な背景も深い地域性を有しています。
その一方、昭和の後期から国家プロジェクトとして京都・大阪・奈良の3府県にまたがる京阪奈丘陵に文化、学術、研究の新しい拠点形成をめざす「関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)」の建設が始まり、その中心に位置する本町は学研都市建設と共にまちづくりを推進してきました。その中での新市街地の形成により、平成17年国勢調査において人口増加率が日本一となる29.9%増を記録しました。
その後も、人口増加傾向が続きましたが、住宅地開発が落ち着いたこともあり、近年は緩やかな減少傾向に転じ、今後の少子高齢化への対応が課題となりつつあります。
学研都市開発に合わせて施設等の立地が進み、国立国会図書館の関西館や国際電気通信基礎技術研究所をはじめとする文化学術研究施設、民間企業による研究開発型産業施設が47施設(令和6年4月1日現在)立地していて、地震等の災害が少ない地域であることも大きな誘導要因となって、近年は用地需要が高まっており、企業等の進出希望に対して用地が不足している状況があることから、現在は北部地域における「学研南田辺・狛田地区」の開発が民間デベロッパーにより進められています。
「古事記」の伝承に由来し、奈良時代の起こりと伝えられる神事で、毎年1月に祝園神社で行われる「祝園の居籠祭」は、「音無しの祭」とも言われる天下の奇祭として京都府の無形民俗文化財にも指定されており、長さ3.6m、直径80㎝、重さ75㎏以上となる巨大な大松明を用いた「御田の儀」は祭りの最大の見どころです。
また、1485年に京都府南部で起こった「山城の国一揆」は、我が国における地方自治の先駆との評価もある大規模な国一揆で、約8年にわたる自治的支配が終焉を迎える際、国衆数百人が籠城し最後の抵抗を図った「稲屋妻城」が本町にあったと伝わっています。
このように、歴史的な地域である一方で、現在は学研都市建設に伴い国や民間の先端技術に関する施設が集積する地域である面も注目されており、学研都市のメインストリートとして整備されたメタセコイア並木の連なる「精華大通り」が通る精華・西木津地区は、国の都市景観100選にも選ばれました。
同じく学研都市のシンボル施設として整備された「けいはんな記念公園」は24.1haの広大な敷地を有する府立公園で、整備区域内に元々あった永谷池の一部と周辺の森をそのまま生かしつつ、京都が誇る伝統的な造園技術を駆使した日本庭園「水景園」は四季を通じて楽しむことができます。
毎年5月下旬には、本町と隣接する京田辺市をまたいだ約17kmの周回コースを6.5周する国際自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン」の京都ステージとして、世界で活躍する国内外のトップ選手の走りを観に、毎年約5万人の観客が集まり、ゴール地点のある精華大通り沿いの「けいはんなプラザ」は大賑わいとなります。
そして、11月中旬には本町の秋の風物詩でもある学研都市地域最大のイベント「せいか祭り」が恒例行事となっています。他府県からも多くの人たちが訪れ、地元グルメや特産品販売などが軒を連ねる「学研せいか商店街」、バンド演奏やダンスといった多彩なパフォーマンスが繰り広げられる「学研ミュージックストリート」などで賑わいます。
また、本町は京都府有数の苺の生産地でもあり、12~5月末頃の季節には、町内のいちご狩り農園に家族連れなど多くの方が訪れています。腰を屈めずに楽しめる高設栽培の苺もあるので、こどもから高齢者までが楽しめる人気スポットとなっています。
本町では、国の「まち・ひと・しごと創生法」に基づく総合戦略の政策の柱として「シティプロモーション」を掲げ、「学研都市精華町」の都市ブランド確立に向けての5つのプログラムを設定して取組を進めています。
そのプログラムの一つ「地域に誇りを持つ教育の推進」の一環として、未来を担うこどもたちに、世界最先端の科学と文化が集積する学研都市に相応しい学びの機会を提供し、地域で活躍する人材の育成を図る取組「科学のまちの子どもたち」プロジェクトがあります。
学研都市の立地施設で活動する研究者や企業が地域の学校で講義をする「出前授業」やこどもたちに研究現場を公開する「施設訪問」を展開するほか、科学を志す中高生が一堂に集まり、学研都市の研究者を前に日頃の研究成果を紹介し、助言などを受ける交流の場を提供するポスターセッションを開催しています。
また、研究者、大学教員、クリエイターなど、さまざまな分野の専門家がこどもたちに実際に「ものづくり」を体験することを通じて指導する「科学体験プログラム」の実施に積極的に取り組んでおり、平成30年度には「SEIKAクリエイターズインキュベーションセンター」をオープンし、こどもたちの新たな体験型教育と創作活動の拠点として活用しています。
「シティプロモーション」のプログラムのもう一つに「まちの魅力を引き出す情報発信の強化」があります。これは、本町における交流人口や関係人口に向けて、町内外を問わず地域の魅力をインターネットや動画等の多様なメディアで情報発信するほか、新たな創作活動支援など、学研都市ならではの多様な文化の創造と発信を促進するという取組ですが、そのなかで重要な要素となるのが「サブカルチャー振興」です。
本町では、平成25年度に「京町セイカ」という町の広報キャラクターを作りました。当時は全国的に「ゆるキャラ」ブームの真っ只中で、その時点からの参入では埋没してしまう懸念もあり、着ぐるみ等のコスト面も含めて判断したところ、行政ではあまりいなかった「萌えキャラ」系のデザインで、インターネット上での活用を主眼においたデジタルイラストを使ったものとなりました。
この「京町セイカ」がきっかけとなり、全国の民間を含めた萌えキャラとの交流が生まれたことで、さまざまなサブカルチャーイベントに参加する機会ができ、現在ではコミックマーケットやニコニコ超会議といった大規模なイベントにも出展してPR活動を行っています。
さらに、インターネット上を主な活動場所とすることをさらに活かすため、キャラクターを3Dモデル化して無償で利用可能な配布をしたり、キャラクターの「声」となる音声合成ソフトウェアを開発・販売したりすることで、全国のクリエイターにキャラクターを創作活動のツールとして活用してもらい、キャラクター「京町セイカ」を知ることで本町を知ってもらう、という効果が生まれています。近年は歌声合成ソフトウェアの開発も行い、音声合成技術と3Dモデルを使った映像と、フルオーケストラの生演奏を組み合わせた、学研都市ならではの先端技術とクラシック音楽の融合による音楽イベント「~歌は時空を超えてⅡ~ 京町セイカwith Style KYOTO管弦楽団オーケストラコンサート」を企画していて、令和6年9月には第2回のコンサートを開催し、全国からファンがお越しになったほか、オンライン配信でも多くの方に視聴いただきました。
また、せいか祭りとの連携イベントとして、「SEIKAサブカルフェスタ」を毎年開催しています。全国からご当地萌えキャラのブースが集まるほか、創作物の即売会イベントの誘致やeスポーツの体験会、動画配信サイトのニコニコ動画と連携して、会場からの公式生放送を配信するなど、さまざまなサブカルチャー要素が盛りだくさんのイベントを展開しています。
サブカルチャー振興から派生して、新たに進めている取組が「アニメ・アーカイブ・データ化及び利活用実証事業」です。
これは、産学公連携によりアニメーション原画のデジタルアーカイブと地域活性化の推進を図るプロジェクトで、歴史的な価値があるにもかかわらず、棄損や廃棄が危惧されているアニメーション原画をデジタルデータとしてアーカイブし後世に残すとともに、鑑賞や教育、地域活性化のための素材としての活用により、交流人口の拡大や技術継承による人材育成をめざすことを目的とした事業です。
大学機関及び民間アニメーション関係会社と連携し、アニメーション版権元と交渉のうえでアニメーション原画を借り受け、資料を撮影によるデジタルデータ化して保存(アーカイブ)し、作成したデータの教育・研究への利用やイベントでの展示、体験型教育への利用など、地域活性化へ活かすことができないかを模索しています。事業実施にあたっては、国のデジタル田園都市国家構想交付金(地方創生推進タイプ)を活用し、町内に立地する京都府のKICK(けいはんなオープンイノベーションセンター)内のスペースに事業拠点を整備し、資料の保管及び撮影、デジタルデータ化等の作業を3年間の時限的な事業として取り組んでいます。
深い歴史が残るまちと最先端の科学と文化のまち、二つの面を持つ「学研都市精華町」へ、ぜひ一度お越しください。
京都府精華町
総務部財政課 西川 和裕