▲五湖テラス
福井県若狭町
3296号(2024年10月7日)
福井県若狭町 産業振興課
●● ポイント ●●
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平成17年3月31日に「三方郡三方町」と「遠敷郡上中町」が合併し、「三方上中郡若狭町」が誕生しました。この若狭町は、福井県の南西部に位置した面積17,865haの町です。
人口は、令和6年4月現在で13,499人となっており、合併した平成17年4月時点の17,321人から大きく減少しています。
当町は、若狭湾国定公園の中心部にあり、福井県美浜町と若狭町にまたがる「三方五湖」は三方湖、水月湖、菅湖、久々子湖、日向湖の5つの湖の総称です。5つの湖は水質や水深が違い、すべて濃さの違う青色に見えることから「五色の湖」と呼ばれています。全長11.2kmの県道三方五湖レインボーライン線からその違いがよく分かり、リフト・ケーブルカーでさらに昇った「レインボーライン山頂公園」では三方五湖と日本海のダイナミックな景観が楽しめます。また、三方五湖は国際的に重要な湿地を保全するラムサール条約に平成17年に登録され、さらにそこで生業にされている持続的な漁業文化が評価され、令和元年には日本農業遺産にも認定されました。ほかにも全国名水百選「瓜割の滝」、近畿一美しい川とされる一級河川「北川」などを配する水資源の豊富な町です。また、この地の歴史は1万年以上昔の縄文時代にまでさかのぼり、「縄文遺跡」や「古墳」が数多く点在しています。
かつて日本海と畿内を結ぶ「若狭街道」の国道303号線は、多くの物や文化が行き交い、この街道に沿って宿場町「熊川宿」が栄え、平成27年には熊川宿を含む鯖街道が「~御食国若狭と鯖街道~」として日本遺産第1号に認定されるなど、伝統的な建造物群が残っています。
また、梅や梨等の果樹栽培が盛んであり、特に梅に関しては福井梅発祥の地であり、その歴史は古く、江戸時代までさかのぼります。戦時中には、重要軍需品として舞鶴海軍に納入され、戦後も「青いダイヤ」と呼ばれ重宝されました。
ほかにも民宿や旅館も多数あり、観光産業にも力を入れています。
本町は、滋賀県境に位置する三十三間山や駒ヶ岳等の山々に囲まれ、総面積のうち森林面積は11,854haで総面積の66.4%を占めています。民有林面積は11,292haで、そのうちスギを主体とした人工林の面積は5,554haであり、人工林率が49.2%と県平均43.0%と比較して高くなっています。
本町の森林は、地域住民の生活に密着した山里から林業生産活動が積極的に実施されるべき人工林帯、さらには、奥地の広葉樹が林立する天然性までバラエティーに富んだ林分構成になっていますが、森林に対する住民の意識・価値観が多様化し、求められる機能が多くなっていることからさまざまな課題が生じています。
まず、三方地区及び熊川・瓜生地区は、町内における農業・生活用水の重要な水源となっており、水源涵養の機能を図る森林整備を実施していくことが重要であるとともに、熊川地区や三方地区の西側は急峻な地形を有していることから、山地災害防止機能を高度に発揮する森林づくりが必要です。
若狭湾に突き出た半島にある西田地区及び三宅地区は、林道や作業道など木材搬出の条件が整備されており伐期を迎える林分も多くあり木材生産機能の増大を図っていく必要があるため、今後、森林経営計画の策定等を通じた間伐等の適切な森林整備を実施していく必要があります。
熊川地区や三方五湖及び三方石観音周辺については、住民等の憩いの場としての森林レクリエーション機能や鳥獣保護区指定の森林が存するため野生鳥獣保護機能など保健文化機能の高い森林に整備していく必要があります。特に熊川地区の駒ヶ岳周辺については自然と調和したレジャー施設や「森林公園河内の森」までつながる遊歩道が整備されており、森林レクリエーション機能を十分に発揮させていく必要があります。
また、昨今、里山林の整備が遅れ、獣害が頻繁に発生しています。森林経営計画対象外森林である里山二条森林の針葉樹を伐採・整備し、里山林を混交林化するためにも経済林と里山林を把握するデータの作成が必要となっています。混交林化には時間がかかりますが、生物が多様になり水源涵養・土砂流出防止にもつながると考えています。
さらに、令和元年度に創設された森林環境税及び森林環境譲与税制度により、これまで補助金の対象とならなかった里山林の整備についても安定した財源が確保できるようになりましたが、嶺南地域で林業に携わる施業主体がれいなん森林組合のみとなっており、林業の担い手不足も大きな課題となっています。そのため、今後、林業の担い手となる若人の人材確保や素材生産に携わる民間事業体の育成が急務となっています。
若狭町への森林環境譲与税の交付額は、令和元年度から令和5年度までで、57,713千円となっており、令和6年度以降についても毎年21,110千円が譲与される見込みです。
若狭町では森林環境譲与税を町や住民ニーズに沿った事業として活用するために、地元の林業有識者や森林組合、県等からなる「若狭町森林環境譲与税活用検討委員会」を組織し、行政・住民そして林業事業体一体となって、アイデアを出し合いながら事業の立案を行っています。現在、1.森林経営管理制度に伴う森林意向調査業務、2.里山林整備事業、3.沢沿いの危険木伐採除去事業、4.林道.作業道の維持修繕や機能向上に対する補助、5.木工活動や植樹活動に対する補助、6.竹林整備.危険木伐採に対する補助、7.主伐後の再造林に伴う獣害柵設置に対する補助の合計7つのメニューからなる「若狭の森づくり事業」として、当町における林業振興のために森林環境譲与税の活用を進めています。
また、森林経営管理法に基づく経営管理権集積計画を策定していくにあたり、現在、100ha延べ102人の所有する私有林人工林(スギについては県内での間伐材としての利用が少ないこと及び利用間伐の補助対象から外されているため、調査の対象外としています)に対して森林意向調査アンケートを実施し、回答があり森林組合等第三者へ経営を委託したいと回答のあった森林について、作業道の線形、立木調査や施業量、施業方法の決定などの森林現況調査を実施しています。
調査対象森林の選定については、未整備森林の早期解消を目的として、施業履歴が過去10年間なく、人工林資源が多い集落の森林を対象に行っておりますが、森林経営管理制度の認知度が低いことや、所有山林を把握していなかったり、関心がない等の理由により意向調査への回答がないこと、本町職員が他業務も兼務しており人員が不足しているなどの理由で調査が進まない現状があります。また、森林現況調査についても技術と知識のある森林組合へ業務を委託していますが、委託したいと回答のあった森林面積が小規模であったり飛び地であったりなどの理由で集積計画を立てることが難しいことも課題となっています。
現在、森林に対する関心の低下や、森林所有者の高齢化、相続による世代交代等から整備が行き届かない森林が増加している一方で、全国的に土砂災害や風倒木被害等が毎年のように発生し、住民の生活が脅かされています。このような中で地域住民の生活と密接な関係にある里山林の整備は最も住民ニーズの高い事業と捉えています。
当町においては、景観整備や獣害、森林災害の防止を目的として、二条森林の整備及び放置しておくと二次災害につながる危険性のある沢沿いの倒木及び危険木除去事業を前述した若狭の森づくり事業にて実施しています。実施にあたっては各集落より事業の要望調査や区長会での周知を行い、林道等作業路の状況や災害の規模、費用対効果などを考慮してより優先度の高い集落から順次取り組んでいます。事業実施後の集落からは「集落周辺の森林がすっきりしたことで獣害が減ったり、家に倒れてくる木の心配がなくなった」、「観光地において不要な雑木が伐採されたり枝打ちがされたことで景観整備につながった」といった声をいただいており、これまで補助の対象にならず放置されてきた里山林の整備については、住民生活に密接に関わることから重要な事業だと改めて感じております。
また、令和6年度より集落が実施する里山周辺の竹林整備及び危険木伐採に対する補助事業についても新規事業として実施しています。事業実施については請負による整備・伐採も補助対象としていますが、集落自治会の活性化を目的に集落自身が直営にて取り組む場合については40万円を上限に満額を補助するものとなっており、事業実施に必要なチェンソーなどの資機材費や日当など人件費も対象としています。これまで集落内で荒れた竹林や危険木に対する相談は毎年多く寄せられていたため、当事業については、各集落から事業内容の問い合わせや申請を多くいただいている状況となっています。
これらの事業と併せて今後についても「若狭町森林環境譲与税活用検討委員会」にて住民や町のニーズに沿った新規事業を検討・立案していき、未整備里山林の整備等に取り組んでいきます。
当町におけるその他の森林環境譲与税を活用した事業については、木工活動や植樹活動に要する経費の補助、町内の子育て支援センターへの県産材仕様の知育玩具や遊具の導入などの事業を実施しており、木材利用の向上や木や緑の普及啓発活動を支援する事業についても実施しています。
しかし、森林環境税については、今年度以降、国税として1人あたり年額1,000円が課税されることとなっておりますが、これを活用した若狭の森づくり事業については地域住民に対してまだまだ周知不足のため、今後、パンフレットを作成し各集落に配布するなど町民への周知についても図っていきたいと考えています。
未整備里山林の早期解消のためにも、引き続き里山林の整備を進めることで木材利用の活性化と森林災害に強い町づくりを進めるとともに、町民の木や緑に触れ合う機会を創出し、森林に対する意識向上を図っていけるような事業を実施していきたいと考えております。
福井県若狭町 産業振興課