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岡山県美咲町/林業の担い手確保に向けた森林環境譲与税の活用

印刷用ページを表示する 掲載日:2024年7月1日更新

360度すり鉢状に広がる大垪和西の棚田

▲360度すり鉢状に広がる大垪和西の棚田「日本の原風景」に魅せられ、
古民家やカフェもオープンしました


岡山県美咲町

3285号(2024年7月1日)
岡山県久米郡美咲町 産業観光課
主査   林田 祐樹 


● ポイント ●
【美咲町の森林環境譲与税を活用した取組】
・森林所有者へ森林管理についての意向調査、地区単位での住民説明会、森林調査の実施
・周囲の市町と共同で、航空レーザーで得られた森林情報や資源量を解析し、その情報を町の森林GISに搭載して林業振興に活用
・林業の担い手確保、移住・定住の促進を目的として、現場体験を行う「1日林業体験」、実践的な講習を行う「林業実務研修会」を開催
・イベント参加者が町内の林業事業体に新たに令和5年度に2名、令和6年度に1名が就業

美咲町の概要

 岡山県のほぼ中央部に位置する美咲町は、平成17年3月22日に久米郡の中央町、旭町、柵原町の3町が合併し、「美しく咲くまち」を目指して誕生しました。人口は13,053人(令和2年国勢調査時)で、65歳以上の高齢者が多く高齢化率は40%を超えています。

 岡山県北部の中心都市である津山市と北接し、東は美作市と勝央町、西は真庭市、南は久米南町や吉備中央町、赤磐市、岡山市と隣接しており、県北部や南部とはJR津山線、国道53号、国道374号、国道429号等で結ばれています。

 総面積は232.17km²で、二上山(689.1m)をはじめとした山間地となだらかな平坦地が続く地形となっており、岡山県三大河川である吉井川と旭川がそれぞれ東部と西部に流れています。山間部には農水省の「日本の棚田百選」、「つなぐ棚田遺産」にも選ばれた大垪和西の棚田、小山の棚田等の田園風景が広がっており、年間を通じて美しい自然が楽しめるまちです。

 主な産業は農業で、米のほか、ピオーネやシャインマスカット等のブドウを中心とした果樹、黄ニラやアスパラガス等の野菜、鶏卵を中心とした畜産物の生産が盛んです。

 主な観光スポットは、駅舎がカメの形をした「JR亀甲駅」、約5,000本の花が咲き誇る桜の名所「三休公園」、アスレチック広場やラベンダー畑、そしてバーベキューが楽しめる「まきばの館」、旧柵原町の鉱山の歴史を学ぶ資料館や旧片上鉄道の駅舎と車両のある「柵原ふれあい鉱山公園」といった施設があり、多くの観光客が訪れています。

左:棚田の風景 右:亀の形をしたユニークな外観の亀甲駅

たまごかけごはんの聖地

 美咲町出身で明治時代を代表するジャーナリスト岸田吟香が「たまごかけごはん」を愛好し、日本に広めたとされる説があること、町内に西日本最大級の養鶏場があり新鮮なたまごが手に入ること、日本の棚田百選に選ばれた棚田から「棚田米」がとれること等から、たまごかけごはんによるまちおこしに取り組み、今では「たまごかけごはんの聖地」と呼ばれるようになりました。

 たまごかけごはんが食べられる「食堂かめっち。」では、おかわり自由の「黄福定食」等のメニューが人気を博しており、平成20年のオープン以来全国から多くの観光客が訪れ、令和5年12月には来場者100万人を達成しました。

左:美咲たまごかけごはん 右:食堂かめっち。

子育てのしやすいまち

みさキッズパーク

 こどもの笑顔が輝きあふれるまちづくりを目指して、令和5年2月にベビーファースト宣言を行い、「こどもの笑顔は、みんなの幸せ」を町のキャッチフレーズとして、地域ぐるみでこどもの成長を支え子育て世代を応援する気運の醸成や環境づくりに努めています。また、同年10月には「こどもまんなか応援サポーター」宣言も行いました。

 美咲町では、これまでにも、18歳までのこどもの医療費無償化にいち早く取り組み、3人以上お子さんのいる家庭に対する水道料金の助成や、公営の無料体操教室であるみさきっこたいいく教室等のユニークな事業を実施するなど子育て支援策を充実させてきました。令和3年度には出生率が「2.23」と岡山県内でも2番目に高く、全国平均と比べると、ほぼ1人多くお子さんが生まれている計算となります。しかし、こどもの絶対数は年々減少しており、引き続き、対策を講じる必要があります。

 令和5年4月に「こども笑顔課」を新設し、同年5月に町長を本部長とする「こども笑顔推進本部」を設置して、全庁的に子育て支援対策を実施する体制としました。現在、中高生や子育て世代の方と町長が直接対話する「フラッとトーク」の実施や、町独自の子育てアプリ「みさキッズ」の運用、「みさキッズスマイルフォトコンテスト」の開催、みさキッズ応援自動販売機の設置など新たな施策に取り組んでいます。

小中一貫義務教育学校の整備

森林整備についての意見交換会

 令和5年4月に開校した「旭学園」は岡山県教育委員会管轄で岡山県北初の小中一貫義務教育学校です。児童・生徒が減少傾向にあった旭地域の小学校と中学校を統合して小中一貫教育を実施し、9年間を4・3・2のステージに分け、義務教育期間を見通した弾力的なカリキュラムの運用により、これからの時代に対応した主体的・対話的で深い学びを展開し、地域に貢献する人材を育てる教育を実施することとしています。少子化や過疎化の進む中山間地域における先進事例として、開校以降、70件余りの視察がありました。中には、モンゴル教育大学やインドネシア教育大学からの訪問もあり、多くの教育機関から高い関心を集めています。

 また、令和6年4月には、柵原地域において2つの小学校と1つの中学校を統合し、岡山県北2校目の小中一貫義務教育学校として「柵原学園」が開校しました。

森林環境譲与税を活用した取組

現状と課題

伐採についての座学風景

 本町の山林の面積は町総面積の約70%に当たる16,259haで、民有林面積は15,459haあり、このうち人工林面積は5,588haで町内の山林全体の約34%を占めています。

 このうち、戦後の造林事業により植林されたヒノキを中心に、林齢およそ5~35年生の立木が約15%を占めており、間伐・保育等を積極的に推進するとともに、複層林施業等を導入して伐採林齢を多様化・長期化し、林齢構成の平準化を図る等、人工林資源の保続培養を進めています。

 しかし、近年、林業従事者の高齢化・減少による労働力不足や木材価格の低迷等の要因により、森林所有者の林業に対する関心と森林施業意欲が減退し、保育作業の遅れが加速している等、林業をめぐる情勢は極めて厳しい状況となっています。

 本町では、林業生産活動を通じた適切な森林整備を図り、森林の有する公益的機能が高度に発揮されるよう、森林環境譲与税を活用した対策に取り組んでいます。

 森林環境譲与税は、間伐や林業人材の育成・担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発等の森林整備及びその促進に関する事業の財源に活用されることを目的に、令和元年度から都道府県及び各市町村に譲与されている地方譲与税です。本町では令和5年度までに89,522千円が譲与されており、これまでに合計58,380千円(見込み)を活用し、残額は積み立てています。

森林環境譲与税を活用した取組

①森林経営管理について

「森林経営管理事業」として令和元年度から森林所有者向けに今後の森林管理に関する意向調査を実施しており、旧町単位での説明会や、地区単位での座談会(令和3年度:3地区、令和4年度:3地区、令和5年度:3地区)を通じて森林経営管理制度等について周知を行っています。その後、承諾を得られた地区では森林現況や境界の調査(令和3年度:1地区、令和4年度:3地区、令和5年度:4地区)を実施し、森林所有者が林業経営に適した森林を把握し、今後の森林管理に活かせるよう支援をしています。

​②森林資源解析について

 津山市、鏡野町、勝央町、奈義町、久米南町、美咲町で協定を結ぶ「津山圏域定住自立圏」において、令和4年度から森林資源解析業務事業を実施しており、航空レーザーで得られた森林情報の解析や得られた木材の資源量等のデータを町の森林GISへ搭載する作業を進めています。令和6年度の運用開始以後は、森林の状況を正確に把握するツールとして、森林整備事業等の各種林業施策に活用していく予定です。

③林業の担い手確保について

左:講師から伐採法について学ぶ参加者 右:チェーンソーを分解し組み立てる参加者

左:木材市場を見学する参加者 右:ロープの使い方を習う参加者

左:林業用の重機を操作する様子 右:木の伐採に挑戦する参加者

 本町では、林業の担い手確保やそれに伴う移住・定住の促進を目的に3種類の体験会及び研修会を実施しています。1つ目が林業の簡単な作業体験、林業関係者との座談会等を通じて森林や林業へ関心を持ってもらうための「1日林業体験」(令和3年度:18名、令和4年度:9名、令和5年度:12名が町内外から参加)、2つ目が林業に興味を持った方向けに実践的な技術教習や実地見学を通じて林業への就業イメージをつかんでもらうための「林業実務研修会」(令和4年度:8名、令和5年度:7名が町内外から参加)、3つ目が町内林業者向けに安全講習や技術実習を通じて林業への定着を目的とした「林業技術向上研修会」(令和5年度:8名が参加)です。事業効果として令和5年度から2名が就業し、令和6年度から1名が新たに町内の林業事業体に就業予定です。

木の材積、森林の状況について専用の機器を使っ た森林調査体験

 「1日林業体験」及び「林業実務研修会」の開催にあたっては、久米郡森林組合と企画段階から連携し、経験豊富な講師や多様な林業機械類による、充実した指導と柔軟な講義プログラムの設定ができたことから、参加者アンケートにおける満足度も高くなっております。また、町の広報誌やホームページによる周知に加え、岡山県や林業関連団体への協力依頼や、林業イベントへのブース出展等、周囲を巻き込んで取組を展開したことにより、より多くの参加者を確保できたと考えています。

今後の展望

林業体験型の見学ツアーの様子

 令和6年度より森林環境税が導入され、これまで以上に森林や林業への関心の高まりが予想されるため、本町では森林環境譲与税の適切で効果的な活用に向けて全町的に取り組むため「森林環境譲与税の活用に向けた基本方針(仮)」の策定を予定しております。

 方針では、庁内の検討会での議論や町内林業関係者の意見等を踏まえ、今後の森林環境譲与税の使途及び関連施策の展開について、町の方針を公表する予定です。

 今後も、本町の適切な森林整備を進めるとともに、こどもたちに笑顔を届けられるような森林環境譲与税の活用を目指して取組を進めていきたいと考えています。


岡山県久米郡 美咲町役場
産業観光課
主査 林田 祐樹