▲2024年6月30日にオープンする美浜町運動公園陸上競技場と交流広場
愛知県美浜町
3281号(2024年5月27日)
愛知県美浜町 教育委員会
生涯学習課 戸田 典博
愛知県美浜町は、知多半島の南部に位置し、東は三河湾、西は伊勢湾に面し、その東西両海岸に向かって広がる平地と、ほぼ中央を南北に知多丘陵が連なる面積46.20平方キロメートルの温暖にして緑豊かな町です。昭和30年4月、河和・野間の両町が合併し、美浜町として発足。次いで同32年3月に小鈴谷町上野間地区が合併し、現在の美浜町域となりました。
三河湾国定公園として指定されている美しい自然が広がり、温暖な気候、海水浴場として利用されている白砂の浜辺、天然記念物「鵜の山鵜繁殖地」、源平合戦の歴史を物語る史跡「大御堂寺」、東海地方最古の霊場「時志観音」、本町小野浦出身の音吉、久吉、岩吉の3人の船乗りが、1年余り漂流の後、米国に漂着し、その後英国人に助けられ、聖書和訳に協力したことを称えた「和訳聖書発祥の碑」など多数の観光資源があり、四季を通じて訪れる観光客で活況を呈しています。
また、新南愛知カントリークラブなどのゴルフ場、南知多ビーチランド、食と健康の館を始めとするレジャー施設があり、いろいろな楽しみ方ができます。
一方、緑豊かな本町の自然環境の中で、日本福祉大学、愛知県美浜自然の家などの教育施設が立地し、文化都市として、また、鉄道の整備、自動車専用道路の知多半島道路・南知多道路の4車線化、伊勢湾の海上に中部国際空港(セントレア)が開港するなど住宅都市としての魅力も増しています。
これらの特性を活かすためにも、「スポーツでつなぐ、美浜の未来」というスローガンを打ち出し、美浜町のスポーツまちづくりの旗手として、美浜町と日本福祉大学が共同で「スポーツまちづくり推進室」を設立しました。令和6年(2024年)6月に先行完成予定の陸上競技場・交流広場を中心に、多角的なスポーツを活用したまちづくりを目指し地域の課題解決とスポーツ振興を同時に進めることで、地域の未来を切り開いていく計画を進めています。
令和5年度からは、国のデジタル田園都市国家構想交付金を活用して地域のスポーツ振興に向けた実証事業がスタートしており、インナー施策とアウター施策の両面からアプローチしています。ここで重要なことは、インナー施策からしっかりと構築していくことで、インナーから効果的なアウター施策へとつなげていくこととしています。よくアウター施策から入る事例を見かけますが、本町ではその方向性を最初にしっかりと設定し、機運醸成を図りながら進めていくことにしています。またその考え方は、進めるにあたりどうしても形骸化してしまいますので、ビジョンブックにまとめて、何かあればそこに戻り全員で考え理解を深めるように徹底しています。
●美浜町運動公園WEBサイト
(https://mihama-sportspark.aichi.jp)
目指すビジョンとして「多様な人々が集い、活気あふれる輝く町へ」を掲げ、私たちが想い描く4つの姿をイメージ。
具体的にインナー施策である実証事業の事例を説明していきます。まず子どもたちの体力向上や英語教育の充実に焦点を当てている事業となります。町内の小学生を対象に行われる「English Sports Camp」では、身体を動かしながら英語を学ぶ〝トータルフィジカルレスポンス〟をベースに、さまざまなスポーツ科学の要素を取り入れた新しいプログラムを導入し、地域の教育の質の向上を目指しています。いわゆる「授業」となると、整列したり話を聞いたりすることに時間が取られ、実際に体を動かす時間が短くなってしまいます。昔に比べ、現代の子どもたちは運動量が足りていないとの報道もありますので、動作を止めることなく常に動いていることを意識しています。運動量を確保しながら英語でコミュニケーションをとって発散するのですが、英語もインプット型よりアウトプット型を多めに取り入れており、ただ単に机に向かって読み書きをする学習方法では得られない、非常に理にかなった英語学習方法であると考えています。英語が好きな子が運動を好きになり、運動が好きな子が英語を好きになるといったような好循環も生まれやすくなっています。今は学校の校庭や体育館で行うことが多いですが、今後は本町の自然資源を活かして、海や山や畑のような子どもたちの五感を刺激するロケーションでEnglish Sports Campを実現することにチャレンジしていく予定です。既に令和5年度の実証事業を終えたところですが、参加者や保護者から高い評価をいただいており、2年目以降の継続事業となりました。小学2年生を対象とした授業と放課後活動と連動しており、多くの生徒が楽しそうに動き笑顔で英語を発していて見ている側も楽しくなる光景となっています。毎週生徒の英語の発音の上達や積極性の変化に驚きつつも何より嬉しい瞬間です。またこの取組は今後本町が予定している小中一貫校に向けた特色あるカリキュラムとしても期待ができるため、生徒や保護者へのヒアリングをもとに、教育委員会、学校などと協議しながら魅力ある取組へと進めていければと思います。
一方、アウター施策としては、スポーツ合宿の誘致として、筑波大学蹴球部にモニター合宿並びに日本福祉大学サッカー部との合同練習や交流会などを通して地域の魅力に触れてもらいながら、本町におけるスポーツ合宿受け入れの課題発掘を行っています。また大会の企画や地域との連携を踏まえたイベントなども実施していく予定となっています。
さらには地元食材を活用したメニュー開発ワークショップなど、地域資源を活かしたプログラム開発を進めており、サッカー日本代表専属シェフの経験を持つ西芳照氏をお招きしスポーツ合宿・大会誘致のためのおもてなし体制の構築と、町内宿泊関係者の知識・意欲向上に向けて検討もすすめています。これらの取組は地域住民にとっても普段では得られない経験となっており、着実な機運醸成にも寄与していることを実感しています。
その他、成人向けのアウトドアフィットネスプログラムや高齢者向けのデジタル運動教室など、地域住民全般を対象としたプログラムも開発し、これらのプログラムを通じて、地域住民の健康増進と生活習慣の改善を図っていきます。
今回、本町の取組がスポーツを活用した地域づくりに取り組む自治体として、スポーツ庁より「スポーツ・健康まちづくり優良自治体表彰(スポまち!長官表彰)」を受けることができました。東京都内において、昨年の11月10日に開催された式典に八谷町長が出席し、室伏広治長官から直接表彰されました。これは、東京五輪とパラリンピックのレガシー(遺産)を継ぐためスポーツ庁が設けた表彰制度で、今回は全国26の自治体が選ばれました。
今後の展望としては、これらの取組をブラッシュアップしつつスポーツを入口に健康・福祉、教育、経済に波及効果をもたらしスポーツまちづくりの好循環としていきます。そのためにも地域と大学との産官学連携強化が大きな鍵となってくるため、常に近い距離で話し合いながら、スポーツでつながる美浜町の可能性を最大限に発揮していきます。
愛知県美浜町 教育委員会
生涯学習課 戸田 典博
●みはまスポーツまちづくり推進室インスタグラム
(@mihama_sports_park)
●美浜町運動公園整備事業について
(https://www.town.aichi-mihama.lg.jp/docs/2022011100010/)