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長野県南箕輪村/人口が増え続ける謎の村

印刷用ページを表示する 掲載日:2024年2月12日

夏の経ヶ岳

▲ 夏の経ヶ岳


長野県南箕輪村

3269号(2024年2月12日)
長野県南箕輪村役場 地域づくり推進課
課長 高橋 里江


村の概要

保育園から小・中・高・短・大・大学院までの教育機関

 南箕輪村は、長野県の南部に位置し、西に中央アルプス、東に南アルプスを望む、伊那谷の中で最も広い平地の中心にあります。自然も豊かで四季の変化に富んでいます。

 他の特徴としては、中央自動車道伊那インターチェンジがあり、東京圏からは2時間30分、中京圏からは2時間程度の距離で、立地条件に大変恵まれていること、小学校が2校、中学校が1校、県立の農業高校、県立の工科短大、国立大学農学部、大学院までの教育機関があることが挙げられます。

 村の面積は40.99km²ですが、その半分の21km²が経ヶ岳という山岳を含む森林地帯の飛び地で人口はゼロという、全国的にも類を見ない形態となっています。

 村には大芝高原という平地林があり、年間を通じて住民の憩いの場になっています。

 明治8年に南箕輪村として誕生して以来合併も分離もなく今日に至り、令和7年には村政150周年を迎えます。平成の大合併では合併の是非に対して住民投票を実施し、村民の65%(約7割)が合併に反対した、という経過があります。

 令和5年10月1日時点の人口は、16,063人で、村が誕生して以来一貫して増加しています。高齢化率は23.9%、年少人口比率は15.4%、生産年齢人口比率は60.7%となっています。

グラフ 人口の推移

南箕輪村の子育て支援施策

 平成17年当時、村は、人口減少時代の到来を目前にし、自立を選択した村として、人口を維持していくことが村の存続につながるものと考えました。そして人口増加のためには子育てに優しい村にしていくことが必要であり、「働く母親が、安心して子どもを産み、育てられる環境の充実」がとりわけ重要であると考え、当時の村長が「日本一の子育て村」にしようと、子育て支援に力を入れ始めました。ただ当時は、人口増加に伴う子どもの施設整備等に対しての国の支援が全くと言っていいほどなく、財源の確保に苦労しました。

子育てに優しい村づくり

(1)財政的な支援

 子育てに係る財政的な支援の1つ目は、保育料の引き下げです。平成17年度からこれまでに、合計7回の引き下げを行いました。

 2つ目の支援は、福祉医療費の支給対象者の拡大です。平成17年度までは対象年齢が未就学児であったものを、平成18年度から段階的に拡大し、平成25年度からは高校3年生までとしました。

 この頃から「子育てをするなら南箕輪村」と言われるようなイメージが近隣市町村にも浸透していきました。

 令和2年度には現物給付化、令和4年度からは窓口での負担をなくし、完全無料化としました。

(2)環境づくり

すくすくはうすとたけのこ園

 平成17年度に、子育ての相談や親子の交流を目的とした子育て支援センターとして「すくすくはうす」を建設しました。

 南箕輪村には5つの公立の保育園があり、待機児童はいません。

 平成24年度には、「村の子どもは村で育てる」という信念のもと、それまで近隣自治体に通園していた発達障がい傾向の子ども達のため、6番目の保育園と位置づけた療育施設「たけのこ園」を整備しました。

 また、平成29年7月には、次代を担う子どもの健全な育成と成長段階に合わせた相談・子育て支援を図るため、隣接の伊那市、箕輪町と構成している伊那地域定住自立圏事業に位置づけ、「こども館」を建設し、オープンしました。

(3)相談体制の充実

こども館

 平成22年度に、「子育て教育相談室」を設置し、それまで、村長部局の福祉部門が受けていた未就学児の家庭児童相談と、教育委員会が受けていた小学生以上の教育相談の窓口を一元化しました。保健師や保育士、教員の資格を持った職員が、発達障がいや不登校、いじめの相談に、親身になって対応してきました。

 他にも、平成28年度からは「女性のための再就職トータルサポートセンター」を開設しています。この事業は平成28年度から令和3年度までの6年間は地方創生推進交付金を、令和4年度からは地域女性活躍推進交付金を活用し、箕輪町と連携して実施しています。サポートセンターは「こども館」に設置し、子育て支援と複合した形で、女性の就業にかかる一連の支援を行っています。事業開始の平成28年度から令和4年度の7年間で301人の再就職のお手伝いをすることができ、順調に成果を上げています。

(4)その他

 令和2年度から小中学校給食に、令和5年度からは保育園給食に、村の特別栽培米「風の村米だより」を提供しています。この米は、減農薬、無化学肥料で栽培され、しかも美味しく栄養価の高いコシヒカリ品種です。

 また、令和4年度から、小学校の体育専科教員を村職員として採用しています。

 さらに、令和6年度からは、母子保健、子育て支援、学校教育とそれぞれ分散していた子どもに関する窓口を一元化する予定です。

子育てに優しいばかりではない

 「子育て」のイメージが強い南箕輪村ですが、高齢者・障がい者にも優しい施策を実施しています。

 福祉移送サービスは、車いすの方もそのまま利用できる福祉車両を使い、買い物、医療機関などへ送迎する、高齢者、障がい者ともに利用できるサービスです。往復で月4回まで無料で利用できます(年間保険料が1,000円必要です)。

 在宅で介護している方には、介護度に応じて介護慰労金を給付しています。
アパート等に1人で暮らす障がい者に、家賃を補助しています(月額上限1万円)。
 令和6年度からは、複雑・多様化している事例や組織横断的な事例に対応するため、福祉の窓口を一元化する予定です。

なぜ人口が増えたのか

 人口が増えていくには、転入者数が多いこと、出生者数が多いことが必要です。

 南箕輪村の場合は、宅地の価格が近隣自治体に比べ低く住宅を持ちやすいこと、他の自治体に先駆けて、子育てのための施設整備やソフト事業を充実してきたこと、交通の利便性や平坦な地形などの立地条件に恵まれていることなどから、「子どもを育てるなら、南箕輪村が良いらしいよ」といったクチコミが広がり、子育て世代が転入し子どもを産むという好循環が生まれました。

これからの課題

 人口の増加対策として整備してきた保育園や学校施設を維持していかなければならず、現在は、給食数の増加により新しい学校給食センターを建設しており、それらの施設整備費の負担が大きくなってきます。

 また、南箕輪村は移住者の割合が73.3%(令和4年度地域福祉計画策定時のアンケート結果)と高く、上手に移住者を受け入れてきた訳ですが、自治会については、役員の負担が重く、なり手が見つからない、高齢者の自治会離れなどの課題を抱えています。さらに住民が暮らしやすくなるよう、自治会の在り方の見直しを始めます。

 南箕輪村は、今住んでいる住民が幸せになるような施策を行うことが、移住者も長く幸せに暮らせることにつながると考えています。そのため、他の市町村で実施しているような補助、例えば新築住宅に対する補助や、移住者への家賃補助などは行っていません。

大芝高原

バーティカルリミット

 前述の大芝高原では、南箕輪村の三大イベントとして位置づけている、5月のトレイルランニング大会「経ヶ岳バーティカルリミット」、8月の「大芝高原まつり」、10月の「大芝高原イルミネーションフェスティバル」が開催され、村内外からの多くの来場者で賑わいます。一方、全体の6割を占めるアカマツの松枯れ被害が深刻で、その対策も含め、誰でも1日中遊べる、自然の美しい憩いの場所を守っていかなくてはなりません。

大芝高原まつり(おまつりパレード) 大芝高原イルミネーションフェスティバル

VC長野トライデンツ

VC長野トライデンツ

 南箕輪村は、バレーボールのV1リーグで活躍するVC長野トライデンツの本拠地です。昨シーズンの成績は、10チーム中9位でしたが、全日本に3人も選抜されました。村とも連携協定を結んでおり、保育園や高齢者の運動教室など、村の事業に積極的に関わっています。

まっくん

まっくん

 最後に、南箕輪村のイメージキャラクター「まっくん」を紹介します。「まっくん」は、村の木であるアカマツの松ぼっくりの妖精です。ゆるキャラ・グランプリ 2011では、かの有名な「くまモン」が優勝しましたが、当村のキャラクター「まっくん」は、最下位という結果でした。なかなか取ることのできない最下位を逆手に取ったプロモーションによって、今では全国からご声援をいただくほどになっています。

おわりに

村政150周年記念ロゴ

 南箕輪村にも、いつかは人口が減少するときが訪れます。そのときに、いかに住民が幸せでいられるか、これから知恵を絞っていかなくてはなりません。現在、次期総合計画の策定に向けて準備中ですが、村のあるべき姿を求めて、住民の皆さんとともに計画を作っていきます。​


長野県南箕輪村役場 地域づくり推進課
課長 高橋 里江