▲「国指定重要文化財である「笠森寺観音堂」は岩の上に建てられ、
回廊からは雄大な房総の山なみを見渡すことができる
千葉県長南町
3268号(2024年2月5日)
千葉県長南町 企画財政課
千葉県長南町は、昭和30年2月に庁南町、豊栄村、東村、西村の1町3村が合併して誕生しました。県都である千葉市の南約25km、茂原市の南西に隣接した位置にあり、面積は65.51km²を有し、茂原市・長柄町・市原市・大多喜町・睦沢町の2市3町に接しております。
温暖な気候とホタルが飛び交う緑豊かな自然環境に恵まれた地域で、農業を基幹産業とし、米や蓮根等が生産され、町の特産品にもなっています。また、風光明媚な里山風景と、数多くの歴史的・文化的遺産のある町としても知られています。
町では、今後10年間のまちづくりの指針となる「第5次総合計画」(令和3年度から令和12年度)を策定し、町民の皆さまをはじめ、企業・団体等との協働、連携のもと、町の将来像である「人とつながり 地域とつながり 次代へつなげる『ただいま、おかえり』心のふるさと 長南」の実現に向けて、3つの基本理念、「豊かな自然・里山と調和したまちづくり」、「快適な生活環境で健康なまちづくり」、「心あたたかい交流で活気あふれるまちづくり」により施策を展開し、6つの基本方針によりまちづくりに取り組んでいます。
長南町が誕生した昭和30年当時は、人口1万5千人を超えていましたが、50年余が経過した平成20年には1万人を割ってしまいました。全国的にも少子高齢化は大きな社会問題となっておりますが、特に本町においては人口減少が著しく、平成22年には国から過疎地域に指定されました。
その中でも児童数の減少は、町の大きな課題となり、複数年かけて小学校の学校適正配置検討委員会等の検討を経て、平成26年に町内に4校あった小学校を1校に統合することを決定し、平成29年3月をもって4校を閉校することとしました。これまで各地域の拠点であり、歴史ある小学校が閉校することは時代の流れとは言え寂しさを感じた人は多かったのではないかと思います。
全国的にも少子化の影響を受け廃校が増加している中で、本町では一度に4校の廃校活用が大きな課題となりましたが、できるだけ早く企業を誘致するため、町長自らトップセールスを行うなど廃校活用には力を注ぎました。
廃校が生じた原因は「少子化・人口減少」であります。だからこそ廃校を活用して雇用の創出や交流人口増加といった地域活性化を図り、移住者・定住者を増やして、最終目的としては「人口増加」に結び付けたいという思いから、廃校に特色ある企業を誘致する「長南町廃校活用プロジェクト」をスタートしました。
1.旧東小学校の活用
最初に活用が決まった旧東小学校は、「越後屋長南東小学校スタジオ」として、学校の趣をそのまま活かしたスクールスタジオとして活用されています。学校を舞台としたドラマや映画、CM等のほか、インターネット動画配信等メディア環境の多様化により、大勢の撮影関係者が長南町を訪れることによる経済効果、撮影作品が放映、配信されることによるPR効果を期待しています。
また、スクールスタジオのほかにドローンスクールも月に2回行っており、令和4年度には役場庁舎の建設に伴う工事着工から完成までの歩みを1つにまとめた動画撮影にもご協力いただきました。
2.旧西小学校の活用
旧西小学校は、団体向け宿泊施設「仲間と泊まる学校 ちょうなん西小」として活用されています。最大で約80名が宿泊できる施設のほか、併設する「ちょうなん西小カフェ」では、宿泊しないお客様もジェラート等のスイーツ等を気軽に楽しめる場所として利用されています。
また、地域交流エリアとして図書室やキッズスペース等も設けられており、地域の方々が気軽に利用できるよう配慮されています。
3.旧長南小学校の活用
旧長南小学校は、IT交流施設「長南集学校」として、パソコンやスマートフォンの使い方がわからない方等への無料相談や、パソコンの修理、販売を行っています。
また、カフェやスケボーランプを併設しており、子どもから大人まで楽しめる憩いの場所となっています。特に、令和5年3月には町で青少年の健全育成とスポーツ振興を目的とした本格的なスケートパークを整備し、町内外からさらに多くの人々が交流できる施設となりました。
4.旧豊栄小学校の活用
旧豊栄小学校は、通信制高校の「精華学園高等学校 長南茂原校」と「専門学校マーキュリー情報コミュニケーションカレッジ」として活用されています。
通信制高校では、多様な生徒が進路変更して入学するといった学校となっています。
専門学校では、全日制の学科として、IT学科、観光学科、文化・芸術学科の3学科が設けられ、加えてIT学科と観光学科には、通信制の学科が設けられています。
令和5年4月には専門学校の入学式が行われ、海外からの学生も多いため異文化交流もできる新たな魅力をもつ学校として活用されています。
5.旧長南幼稚園の活用
平成12年に廃園となった旧長南幼稚園は、町内の放置竹林の竹を買い取り、バイオプラスチック製品に再利用する「竹の駅ちょうなん」として活用されています。
竹を配合してプラスチック製品に再利用することで、環境や衛生面にも配慮されたものとなっており、資源を無駄にしないリサイクルやSDGsへの取組にも貢献し、テレビで取り上げられ、その反響は大きく、町内の放置竹林の解消に一役買っています。
平成29年3月に4校が同時に廃校してから、概ね5年ですべての空き公共施設へ企業を誘致することができました。地域活性化を目指したそれぞれの特色や企業の強みを活かした事業を展開することにより、長南町に人の流れをつくっていただきました。これらの取組はインターネット等で情報も発信されていますので、そういった情報を見た方々や新聞等のメディアからのお問合せを受ける機会は増えています。
今後末永く長南町に定着していただくことで、全国から長南町を訪れていただき、移住・定住に結び付くことを願っています。
地域活性化を目指す廃校活用の中で、行政と企業の連携や、企業同士の相乗効果が生まれることが理想的だと思っています。異業種であっても、地域活性化という共通点をもった企業が定着することで、さまざまな化学反応が期待できると思いますので、それぞれの企業が持ち味を活かし、地元企業や町と連携しながら、かつての賑わいと活気を取り戻すことによって、町の発展につなげていきたいと思っています。
千葉県長南町 企画財政課