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愛知県阿久比町/スモールスタートで始めるRPA

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年11月27日

若手職員が
▲若手職員が中心となるDXワーキンググループ会議では他市町の導入事例研究等を行っている


愛知県阿久比町

3261号(2023年11月27日)
愛知県阿久比町 検査財政課 青木 昭光


ポイント

  • RPA導入初年度は、導入へ積極的で、ITに詳しい職員が配属されていることを考慮して対象業務を限定し、スモールスタートとして開始。
  • まずは職員がRPAを理解し、便利に使いこなせるようになることを目指している。
  • 今後は、「RPAを効果的に活用するには、どのような業務の進め方をすればよいか」という方向へ考え方をシフトしていく必要がある。

1.阿久比町の概要

名古屋鉄道の空撮
▲町の中央を流れる阿久比川とそれに沿って走る名古屋鉄道の空撮。
穏やかで豊かな自然に恵まれながらも利便性が高い

 阿久比町は愛知県西部、知多半島の中央部に位置しており、面積23.8km²、人口は2万8千人ほどで、みどり豊かな自然に包まれた住環境を有する町です。名古屋市中心部まで鉄道、道路を利用して約30分、中部国際空港まで幹線道路を利用して約20分など、交通アクセスに恵まれた立地条件を有し、大都市近郊のベッドタウンとして発展してきました。また、貴重な生物等が生息する湿地や都市近郊でありながらホタルが舞う自然も残っています。しかし、これまで人口増加が続いてきた本町においても、今後は人口減少や少子化の進行により経済活動を支える生産年齢人口の減少が見込まれる中、限られた職員数で持続的かつ安定的な住民サービスを提供できるよう維持していかなければなりません。これに関連した職員の働き方改革に向けた取組の1つとしてRPAの活用事業をご紹介します。

2.RPA導入の背景・経過

​ 人口減少や労働力不足のほかにもさまざまな地域課題が山積する中、職員の業務量は増加し複雑化するなど職員への負荷は大きくなっています。しかし、職員採用試験への応募数の減少や内定辞退、財政上の問題など職員数の増加を見込むことは難しい状況となっていました。そこで定型的かつ膨大な作業量が発生する業務を自動化することができるRPAを活用したいと考え、導入に向けた研究を開始しました。業務の効率化を目指して、61業務を抽出して研究を進めた結果、単純作業から職員を解放し、余力のできた職員を付加価値の高い業務に充てることができるほか、時間外勤務の削減や入力ミスへの対策としても有効と考え導入を決定しました。また、総務省によるRPA導入補助金の公募が開始されたことで、さらにRPA導入を前向きに検討することができました。

 しかし、導入を決めたものの、当時RPAは馴染みのあるものではなく、導入に係る一時的な負荷を敬遠する反応もありました。そこで、まずは庁内で導入事例を作ることができれば活用の効果も伝わりやすくなるのではと考え、初年度は導入への積極性やITに詳しい職員がいることを考慮して対象は5業務とし、スモールスタートとして始めることにしました。

3.代表的な取組と効果

 RPAは、高度で難しいITスキルは必要ないため、シナリオ作成作業についてはベンダ等への外注とせず、職員が自前で作成する方針とし、必要に応じて情報担当職員がフォローしながら進めています。

これまで実施した代表的な取組として、①固定資産税「税通」()処理業務、②幼稚園・保育園給食費修正業務、③新型コロナウイルス1人10万円支給業務の3業務についてご紹介します。

 「税通」とは、土地建物登記済通知書の略で、法務局が土地や建物の表示・権利に関する登記等をした際に、市町村宛に発行する通知文書​

①固定資産税税通処理業務

 以前まで紙媒体の固定資産異動情報を1件ずつ手作業で土地台帳システムに入力していましたが、固定資産異動情報をCSVデータで受領する方式に切り替え、職員はデータに地番コードを追加するのみで、以降のシステム入力作業を自動化しました。これにより年間420時間要していた業務時間が80時間で処理可能となり、340時間の削減効果がありました。

②幼稚園・保育園給食費修正業務

 幼稚園・保育園給食費については、職員が園児1人ずつ、月ごとに手作業でシステム入力していましたが、RPAにより自動化したことで年間85時間要していた業務時間が11時間で処理可能となり、74時間の削減効果がありました。これらの削減効果により窓口業務など人にしかできない業務を手厚く対応することができた、職員の勤務時間の改善につながったなど一定の効果があったと考えています。

③新型コロナウイルス感染症「特別定額給付金」支給業務

 1人10万円支給業務については、当時、国の緊急経済対策として給付が決定されましたが、その給付作業は本町でも大変混乱したのを覚えています。作業開始時は手の空いている職員をかき集め、朝から晩までひたすらチェック作業に追われていました。このままでは給付時期が大幅に遅れてしまうと考え、数日のうちにRPAのシナリオを自作してAI-OCRを併用した結果、見込みではありますが1,140時間の作業時間を削減することができ、迅速な給付と職員の負担を減らすことができました。

 特に①と③の業務においては、RPAのメリットを大きく活かした成功例と言えます。

<作業手順>
① 職員が法務局から受領したCSVデータに土地の地番コードを追加した上で、Excelファイルに保存
② RPAがExcelファイルの内容を1行ずつ読み取り、土地台帳システム上で対象地を検索
③ 入力画面に遷移した上でExcelファイルから項目を転記・登録

RPA導入の流れ 前・後
▲業務の入口となる「税通」は、従来は紙媒体で受領していたが、RPA導入を機にCSV形式での受領に変更した。

左:実際のRPA画面 右:導入前の手作業の書類

▲左:実際のRPA画面。設定は職員が行っている
▲右:税通(1年間で約2,000件分)は1件ずつ手作業で処理していたが、RPA導入により業務時間が340時間削減された

4.RPAを運用して感じた課題

 RPAを導入した際にはスモールスタートから始めましたが、現状その活用の幅は広がっていません。その要因として考えられる課題は、職員のRPAへの理解が不十分であることが挙げられます。今後もRPAの運用を円滑に行っていくには業務担当職員が主体となってRPAを使いこなすことが必要で、自らの業務を見直し、積極的に活用する考えが浸透するよう進めていかなくてはなりません。また、代表的な取組として3つの業務をご紹介しましたが、①と③で大きな効果を上げた一方で、②においては元々の年間業務時間数がそれほど多くないため、大きな削減効果は期待できません。同規模の業務はほかにも多いため、町村における業務量ではRPAのメリットを最大限に活用する場面は少なく、効果が見えづらいのも課題となっています。このほか、紙媒体による運用が多くデータ化が困難なものや、データ化されていてもRPAでの読み取りに適さないものなども挙げられます。

5.今後について

 本町の今後の取組として、令和7年度にスタートする自治体情報システムの標準化・共通化において、RPAの活用場面が増加するのではと考えています。また、他の自治体で導入した取組を共同利用できる仕組みができれば一層の活用が期待できます。こうした流れに取り残されないよう「今の業務のどこにRPAを活用できるか」ではなく「RPAを効果的に活用するには、どのような業務の進め方をすればよいか」に考え方をシフトしていかなければなりません。

 本町では、デジタルトランスフォーメーションを推進するためにDXワーキンググループを設置しております。このグループのメンバーは若手職員が中心となっており、RPAの操作研修や他市町の導入事例などについても研究を続けているところです。今後も活発な議論を交わして理解を深め、RPAを有効活用することで業務の効率化を図っていきたいと考えています。

愛知県阿久比町  検査財政課
青木  昭光

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