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長野県高森町/「委員」に対するタブレットの導入

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年9月12日

農地パトロールでの活用

▲農業委員会 農地パトロールでタブレット端末を活用している​​​


長野県高森町

3213号(2022年9月12日)
長野県高森町長 壬生 照玄


ポイント


・町長のマニフェストやまちづくりプランに基づいて、数年前よりICTの活用による行政効率の向上に積極的に取り組む。
・農業委員会と教育委員会にタブレット端末を導入。
・総務課ICT担当が全面的にサポートしている。

1.農業委員へタブレット端末を導入 担当:産業課 農業振興係

背景と課題

高森町農業委員会は、農業委員14名と農地利用最適化推進委員5名で組織され、月に1度開催される定例総会を中心にしながら、農地の権利移動審査等の法定業務、また委員それぞれに日々農地の利用調整や遊休荒廃農地の発生防止などの農業振興に取り組んでいます。特に、平成28年の農業委員会法改正以降は、農地利用の最適化の推進が謳われ、委員の現場活動の必要性がより強く求められています。当委員会では、その流れを受け平成31(令和元)年度より、上述の月例総会に合わせて「農地利用最適化ミーティング」を創設し、町内を4ブロックに分け地域ごとに農地と担い手の課題解決に向け活動しています。

実際の活動に目を向けると、ミーティングを受けて現場活動を行うには現地の地図を紙ベースで印刷して持って行き現場を確認するという、とても非効率な状態でした。また、法定で実施する遊休農地パトロールも、模造紙大で印刷した地図を班ごとに切り貼りして対象地の地図を作っていたため、その作成に多大な労力を要していました。

加えて、月例の総会では農地の権利移動や転用について審議用の議案書を配布するわけですが、多い月では図面など委員1人につき50枚以上のA4紙を使って作成していました。

これだけ見ても、当委員会の中でデジタル化を図るだけで、相当の経費削減や省力化が図られることは明らかでした。

タブレット端末を活用したパトロールの様子​
農業委員会 タブレット端末を活用したパトロールの様子​  


タブレット端末の導入実現

高森町では、町長のマニフェストやまちづくりプランに基づいて、数年前よりICTの活用による行政効率の向上に積極的に取り組んでいます。その中で、新型コロナウイルス感染症という未曽有の事態が起き、言うまでもなく組織内でのICT化の機運は一層高まりました。特に、感染症による接触機会の低減を目的に、町議会や区長会において紙媒体からデジタル媒体への移行のため1人1台のタブレット端末が配布されたことで、「行政委員会の中でも、特に紙資料を多く扱う農業委員会にも同様の手当てを」との委員から要望が出ました。それも受け令和3年度の予算化により、委員1人に1台ずつのタブレット導入が実現したのです。

現在、全国の農業委員会組織では、農林水産省の補助事業による各委員会へのタブレット端末導入が大きく進もうとしていますが、高森町ではそれに先んじて導入する形となりました。この補助事業では通信料など経常経費まで含めた措置が予定されている一方で、現状では各委員会で要望通りの台数導入が確約されてはいないと思われます。現場活動だけでなく総会など会議の場でも活用できることを考慮すれば、委員全員分の導入ができたことは非常に大きかったと考えています。

タブレット端末を活用したミーティング風景
農業委員会 タブレット端末を活用したミーティング風景​  

総会風景
農業委員会 総会風景 委員1人1台のタブレット端末を導入した​  


効果と課題

既述の通りですが、タブレット導入により紙などのコスト削減や委員・事務局双方の省力化が図られたことは言うまでもありません。一方で、今後においては特に次の3点が課題として見えてきました。

まず1点目として、委員ごとにタブレット操作についての知識の差や自宅での通信環境に差があることです。全員で一斉に使用する総会やミーティングの場であればフォローが可能ですが、ご自宅や現場活動で操作ができないといった場合には、その都度役場まで出向いていただき個別に対応しており、後手後手になっているのが現状です。委員全員の利活用を平準化していくためには、スキルアップの機会を設けていくなど先んじた対応が必要と考えています。

2点目は1点目に付随しますが、情報機器に付き物の不具合・エラー等への対応です。発生する不具合は、委員宅の通信環境などに起因すると思われるものもあれば、システムに致命的な影響があると考えられるものまで、実にさまざまな事象が発生しています。事務局ではそれらに対応するスキルがないため、総務課ICT担当に全面的にフォローしてもらっていますが、この協力を得られなかったらと思うとゾッとします。今後はこういった対応をある程度、自局部内でスムーズにこなせる体制を考えることも必要と考えています。

3点目として、当委員会の端末は独自調達したものであるため、今後農林水産省が開発しタブレット上で活用を予定しているアプリケーションや地図システム等の共通システムへの順応が必要となってきます。タブレットの先行調達に当たり、現地調査に使う地図システムなどは全国共通のサポートシステムに紐づいたものではなく、当町独自で契約するベンダーのシステムを利用しているため、今後は共通システムへの対応も早急に進めていく必要があります。

以上のほかにもまだまだ課題はありますが、これもまずは1歩踏み出してみなければ分からなかったことです。ますます煩雑化していく委員の業務を少しでも効率化して、本来の目的である農地利用の最適化活動に当たっていただけるよう、今後もタブレット端末の運用改善と活用に向けて取り組んでいきます。

2.教育委員会へタブレット端末を導入 担当:教育委員会事務局 学校教育係

背景と課題

当町では教育長と委員4名からなる教育委員会の定例会議を開催しています。毎回、会議の資料や、事務局からの説明資料は議題の内容に応じて膨大な量となり、委員の皆さまはその管理に苦労され、また事務局もその印刷等の準備については、多くのコスト(時間とお金)を費やしていました。

あわせて、コロナ禍においては、感染を防ぐためにも会議等の開催については自粛をせざるを得ませんでしたが、その一方で学校の臨時休業等の対応などを委員会の中で検討する必要もあり、テレビ会議等を行える環境整備も喫緊の課題でした。  

タブレット端末の導入実現

タブレット端末を配布するに至った経過としては、前述の課題を解決するために、軽量で持ち運びしやすく、使用についてはタッチパネルで直感的に操作できるタブレット型端末を選定し、委員の皆さまに配布しました。委員の皆さまは庁舎内や家庭にあるインターネット回線に接続することで、メール等でのやりとり、ブラウザによる情報収集に加え、クラウドタイプの文書管理アプリを導入することで、毎回、大きなファイルやそれを入れるためのカバン等を持たなくても、タブレット端末1台で閲覧や管理が可能となりました。

また、当日の会議資料はもちろんのこと、過去の資料等も閲覧することが可能となり、それらを探し用意するためのコストも短縮されました。

なお、使用にあたっては基本的に個人情報を扱いませんが、タブレット起動後のOSへのログインや、前述のアプリなどにはすべてIDとパスワードを設定し、会議資料等が外部に漏えいしないように設定しています。

テレビ会議システムを用いた臨時会議の様子
教育委員会 テレビ会議システムを用いた臨時会議の様子​

テレビ会議システムを用いた臨時会議の様子
 教育委員会 テレビ会議システムを用いた臨時会議の様子​  


効果と課題

コロナ禍における会議の開催については、事務局からテレビ会議専用ソフトウェアの会議用URLをメール等にて委員に配信し、自宅から臨時の委員会に参加していただくことも可能となりました。実際、コロナ対応について協議するための臨時会議を開き、クラウド上で資料等を共有しながら会議を実施することもできました。

これらの整備については、新型コロナウイルス対応地方創生臨時交付金を活用し、迅速に対応することができました。

課題は、どうしても委員の方によってはICT機器に関して得手不得手があることが挙げられます。当たり前に使うまでは事務局のサポートが必要であり、また定期的に使い方等の研修を実施することも重要となります。

ただし、委員の皆さまは前述のようなメリットも十分感じており、以前の状態に戻ることはないと考えています。

また、忘れてはならないことは、子どもたちや町民の皆さまのために、有益な議論が行われるという目的のためにICT機器を使うのであって、ICT機器を使うこと自体が目的となってはなりません。

今後も、当町の教育について活発な議論が交わされるように、これらの機器を有効活用したいと考えています。

長野県高森町長 壬生 照玄