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兵庫県稲美町/親元に住もう補助制度と土地利用の規制緩和による定住化促進の取り組み

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年4月3日

表紙

▲町花コスモスが見頃を迎えた秋の稲美町​​


兵庫県稲美町

3235号(2023年4月3日)
兵庫県稲美町 地域整備部都市計画課

 


町の概要

稲美町は、兵庫県南東部に位置し、周辺を神戸市、明石市、加古川市、三木市に囲まれた地域的条件から阪神地域のベッドタウンとして発展してきました。面積は3,492haで、令和2年国勢調査時の人口は30,268人です。

地形はいなみ野台地と呼ばれる段丘台地で、大きな河川はありません。気候は典型的な瀬戸内気候で、年間降水量も少ない地域であり、昔から農業用水の便が極端に悪く、先人は水を確保するため、たくさんのため池を造り、農業用水の水ガメとして利用してきました。そのため、現在では、水張り面積49 ha、県内最大の加古大池や県内最古に築造された天満大池など、町内に大小88カ所のため池が存在し、池の面積は町面積の10・7%を占めるというため池の多いまちです。

本町は、全域が都市計画区域に指定されており、市街化区域は326ha、市街化調整区域は3,166haと町域のほとんどが市街化調整区域であり、その主な用途は農地、農村集落と点在するため池です。

人口対策

 第2期稲美町まち・ひと・しごと創生総合戦略[令和4年度(2022)]では、目標人口を社会増(人口の転入超過)および自然増(出生数の増)などの人口減少抑制に取り組んでいます。

人口増加対策プロジェクトチーム

人口推移
稲美町の人口推移

本町の人口は、比較的恵まれた立地条件から、人口の増加が続いていましたが、少しずつ人口の減少がみられるようになり、平成23年度に、職員全員が参加する「人口増加対策プロジェクトチーム」が動き始めました。この取組は、年度ごとに職員25人で構成し、5年間で全職員が提案する仕組みでした。意見を出し合いやすくするため、5人程度の小グループとなり、基本的に課にとらわれないチーム構成で、年代を分けて集めたり、さまざまな意見集約の方法を試みる取組でした。人口増加対策の事業を、時間内外に集まり提案内容をまとめ上げ、人口増加対策本部に対して、プレゼンテーション形式により提案し、採用された事業については、制度化・事業化の検討を担当課において実施していく制度で、それぞれが事業を考え提案することによる職員の意識改革も期待されていました。

その中で平成23年度は25事業の提案があり、採用された事業は6事業でした。その1つに「親元近居支援事業補助金」があり、提案内容は、「稲美町で生まれ育った子どもたちが、親の近くに住み、介護や子育てなどによる安全安心な生活が送れるようにすること」でした。

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「人口増加プロジェクトチーム」話し合いの様子

親元近居住宅取得等支援補助金(親元に住もう補助金)

採用はされたものの、制度化に必要な要素の整合性等を確認するため、平成24年度に「親元近居支援制度検討会」を経て、平成25年度から3カ年の期限付きで事業を開始しました。新規施策の事業化において整理された主な内容は、次のとおりです。

・補助制度の名称
「稲美町親元近居新築住宅取得支援補助金」

・補助制度の目的
①人口流出抑制と転入促進による定住人口の増加
②親子間の子育て支援・介護支援の増進

・補助制度の対象要件
①住宅を新築した者
②親世帯は5年以上町内に居住

・補助額
18万円分の稲美町共通商品券を交付

・その他
制度利用者に対し、アンケートを実施する

申請実績は、次の年度ごとの期別申請件数一覧表のとおりで、3期間の合計は496件の申請があり、その内254件が転入世帯でした。

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期別申請件数一覧

制度の内容は、平成28年度の事業延長に合わせて中古住宅の取得や増築、リフォーム工事を伴い近居(同居も含む)する場合も対象とし、直系尊属2親等(祖父母)まで親の定義を広げ、名称も「稲美町親元近居住宅取得等支援補助金」と変更するなど、補助対象者の拡大により、近居・同居を進めています。

3期9年間実施している子世帯・親世帯のアンケートでは、子世帯に制度があることで親元近居のきっかけとなったかとの設問に対し、「大いになった」と「少しなった」の回答が、全体の半数以上ありました。同様に、親世帯においても子世帯同様の回答が半数以上であることから制度化による一定の成果をあげていると考えています。また、近居(同居)をして良かったこととして、子世帯が親・祖父母に子どもをみてもらえることや、何かと便利という回答が多く、親世帯においても何かと便利や、子・孫との交流が増えたなどの回答が多かったことから、親子間の子育て支援・介護支援の増進が図ることができていると捉えています。

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親元に住もう補助金

定住促進の受け皿となる土地利用

市街化区域は、民間の開発事業のほかにも、移住・定住促進の受け皿を確保するため、昭和57年から土地区画整理事業による計画的な市街地整備を順次進めてきており、95・9 haの土地で5地区の区画整理組合により市街地形成が行われています。

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旧加古村役場跡周辺地区内の既存郵便局周辺で住宅や店舗等の形成が進んでいる様子

今、町が力を入れていることは、市街化調整区域での受け皿づくりで、次の2つの取組を行っています。

1つ目は、県条例に基づく特別指定区域制度の活用です。この制度は地区(自治会)ごとにまちづくり協議会を立ち上げ、まちづくり計画を作成し、県の区域指定を受けることで建築条件が緩和されるというものです。協議会では県条例に基づく、地縁者の住宅や新規居住者の住宅等、地域が必要とする建築物と区域の範囲等を協議し、地区まちづくり計画を作成しています。平成21年度に最初の区域指定を受けた地区を皮切りに令和2年度までに10地区で指定を受け住宅建築が進んでいます。この制度を利用した建築が44件あり、地区によっては指定を受けた時の人口よりも増加した地区もあります。

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まちづくり協議会での取り組みの様子

2つ目は、都市計画法に基づく地区計画制度を活用し、市街化調整区域の中心拠点として、規制緩和を行っています。稲美町は、昭和30年加古村、母里村、天満村の3村合併により誕生し、旧天満村の市街化区域を中心に歩んできましたが、規制の厳しい市街化調整区域では集落機能の衰退が懸念されることから、旧村役場跡周辺を核とした拠点地区として必要な施設の積極的な立地誘導を図っています。平成28年度に旧母里村、令和元年度に旧加古村の区域決定がされ、地区内で開発等も進み中心拠点としての形成が進み始めています。

土地利用の規制緩和に合わせた定住化促進事業

■田園集落まちづくり住宅新築促進事業補助金(平成22年度~)

・補助制度の目的
田園集落まちづくりとして県の特別指定区域の区域内における住宅建築の促進

・補助制度の対象要件
特別指定区域の指定を受けてから5年以内にその区域で住宅を新築し、居住

・補助額等
当初は固定資産税相当の年6万円を3年間支給。平成29年度から18万円分の稲美町共通商品券を交付。

■沿道活性化にぎわいづくり補助金(平成29年度~)

・補助制度の目的
沿道活性化地区計画として都市計画決定区域内の住宅や店舗などの建築促進

・補助制度の対象要件
①区域内で住宅を新築・改築し居住
②区域内で店舗等を新築・増改築し事業を開始

・補助額等
①住宅の補助金額は18万円分の稲美町共通商品券を交付
②店舗等を新築・増改築により事業を開始し最初の固定資産税が決定した際、店舗等の補助金額は固定資産税相当額の2分の1を3年間支給

目指すまちづくり

平成27年10月「稲美町人口ビジョン」を策定し、目標人口の設定を大きく変更しました。それまでは3万5千人を目指す計画としていましたが、人口減少傾向を考慮し人口維持に目標を切り替え、第6次総合計画策定と同時に策定した第2期稲美町まち・ひと・しごと創生総合戦略の人口ビジョンでは令和42年(2060年)における町の人口は2万人を維持する目標としています。

人口減少が進む中、市街化区域内の残存農地などの計画的な宅地化を町外からの転入者の受け皿として推進するとともに、市街化調整区域では、旧村役場跡周辺の地区計画区域と特別指定区域の制度を活用し集落の人口維持を図ることで、町全体の人口維持を目指すまちづくりを行っていきます。

今後の課題と展望

定住促進の受け皿となる土地利用の取組を進める中で、空き家や空き家となる可能性の高い家の話を聞くことが増えてきています。町ではこうした建物を転入者や転居者、UIJターンのための受け皿として活用できるように取得後のリフォームを支援するため、令和4年度から補助金額の拡充も行っています。

親と子、地域との地縁等さまざまなつながりによる定住の促進とその受け皿づくりのために、適正な土地利用の推進や規制緩和に取り組み、稲美町の自然豊かな住環境の形成に向け、住宅形成や商店・店舗の誘致、空き家の活用などを支援します。

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いなみに住もうよパンフレット

兵庫県稲美町 地域整備部都市計画課