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北海道更別村/100歳までワクワク 世代を超えて みんなでつながり合う幸せな地域 更別村-更別村スーパービレッジ構想の取組-

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年2月20日

平日昼、大盛況にて開催される「みんなのカラオケ」風景

▲平日昼、大盛況にて開催される「みんなのカラオケ」風景​​


北海道更別村

3230号(2023年2月20日)
北海道更別村 企画政策課

 



ポイント

更別村について

 更別村は、広大な北海道・十勝平野の中央よりやや南に位置し、札幌までは高速道路が直通しており車で約3時間、とかち帯広空港からは車で10分、羽田空港まで空路1時間30分と交通の便が大変良く「首都圏に近い農村」です。

 基幹産業は農業であり、ジャガイモ、小麦、てん菜(砂糖大根)、十勝小豆に代表される豆類などの畑作物並びに、安全で良質な酪農・畜産の振興による農畜産物の安定生産を行っています。農家1戸あたりの平均農地面積は約50 ha(東京ドーム10個分以上)、トラクター保有台数は農家1戸あたり約6台と国内有数の大規模機械化農業の村であり、食料自給率は6、800%を誇ります。

黄金色に染まる小麦畑で収穫を行うコンバイン

黄金色に染まる小麦畑で収穫を行うコンバイン

 農業においては、年々生産額が増大する中、平成28年には4つの台風が接近・通過し、村内の広い範囲で滞水・冠水等の甚大な被害が発生しました。

 丹精込めて育てていた作物ですが、一部の作物は流され、水に浸かってしまった作物は価値がなくなってしまいました。収穫間近にもかかわらず被害に遭った作物を農家のおじいちゃんおばあちゃんがひとつずつ手作業で回収していた姿が印象的でした。

先進技術の導入に向けた課題

 現在の更別村における地域や産業を持続・発展させていくためには、急速に進展するICT化に機敏に対応し続けることが必要です。農業では、人材不足に対応するため、これまでに約400台の自動操舵トラクターが導入されています。

 一方で、新しい技術を導入することに対する不安感は付き物です。ロボットトラクターやドローンに興味があっても、操作が難しい、誤った操作で壊れるのではないかというような不安感やプログラミングに対する不安感を払しょくするとともに、農業者の理解と共感が必要であり、関係機関と連携し普及拡大に向けて継続した支援が必要であると考えます。DXの推進には、プログラミング教育をはじめとするデジタル人材の育成が急務であると言えます。

 現代を生きる子どもたち、そして将来産まれてくる子どもたちは、北海道農業をはじめとする各産業が世界と肩を並べて、技術的・経済的に闘っていかなければ必ず淘汰されることでしょう。産業振興に限らず、「誰一人取り残さないデジタル化の実現」に向けて、日々の暮らしにおけるデジタル・ディバイド(外務省・総務省HP参照)の解消を進めるため黎明期である今から人材を育成する必要があります。

平成28年の台風湛水被害

平成28年の台風湛水被害

自動操舵できるロボットトラクター等の新技術を導入
ドローン
自動操舵できるロボットトラクター等の新技術を導入。プログラミング教育で人材も育成中

「 はぜる」周辺。広大な敷地で大自然を感じながら思い切り遊ぶことができる

スーパービレッジ構想の取組

 村が抱えるさまざまな課題に対してデジタル技術を活用するとともに地域のコミュニティを再構築するため「更別村スーパービレッジ構想」を提案し、令和4年6月に国のデジタル田園都市国家構想推進交付金(TYPE3)の採択を受けました。提案にあたっては、各課課長職で構成する地方創生戦略推進本部会議や主に担当者レベルで構成するチーム会議を構築して全庁横断的に取組を進めており、事業の推進にあたっては、担当部局との調整に時間を要することもあり一枚岩とは言えない現状も課題の1つです。また、主としてオンラインによるミーティングを行っていますが、画面上での意思疎通の難しさも実感しています。

 本構想では、「ひゃくワクサービス」「デジタル公民館」「超なまら本気スマート農業」の大きく3つの事業を展開しています。

自動操舵できるロボットトラクター等の新技術を導入。プログラミング教育で人材も育成中
自動操舵できるロボットトラクター等の新技術を導入。プログラミング教育で人材も育成中
自動操舵できるロボットトラクター等の新技術を導入。プログラミング教育で人材も育成中

自動操舵できるロボットトラクター等の新技術を導入。プログラミング教育で人材も育成中

▲​スマホ教室(上段)やオンライン運動教室(2段目)など高齢者の生きがいを発見できる趣味・健康系サービスを提供、それらを支えるコミュニティナースの3名(3段目)。村が無償貸与するウェアラブルウォッチ(下段)では健康管理や見守り環境を整備している​ ​     ​

 「ひゃくワクサービス」では、コミュニティナース、カラオケ、ファッション、運動教室など高齢者の生きがいを発見できる趣味系サービスや健康系サービスを提供しています。

 高齢者に数百台のウェアラブルウォッチや電力センサーを無償貸与し一人暮らしでも安心して暮らせる健康管理や見守り環境を整備します。また、運動教室、カラオケやファッション、温泉・サウナ使い放題などの趣味系サービスを展開するとともに動画共有アプリなどを活用してオンラインでも楽しめるサービスを提供します。これらの付加価値サービスについては、行政サービスとは切り離し、受益者負担の観点からサブスクリプションにより複数のサービスをパッケージ化して定額で提供します。より多くのサービスを利用する高齢者にとっては共助の仕組みにより少ない負担で、各種サービスを受けられるメリットが生まれると考えています。

 コミュニティナースは、日頃の暮らしの中で嬉しいや楽しいを一緒につくるだけでなく、デジタル機器に不慣れな高齢者のサポート等各種デジタルとアナログのハイブリッドとして重要な役割を果たしています。

 「デジタル公民館」では、ひゃくワクサービスを支える機能として、村通信環境の整備がマストです。市街地では共助Wi―Fiを整備し、農村部でも村内全域に整備した光回線により村民誰もがいつでも通信できる環境を構築します。

 これらの通信環境や令和3年度に整備したデータ連携基盤を基にしたらくらくサービス予約、移送サービス、情報センター等の各種サービスは年齢にかかわらず、すべての村民が利用できる仕組みとして構築しています。タイトルにもあるとおり、すべて100歳までワクワク世代を超えて楽しく過ごせる環境を作るための“ベーシックインフラ”に位置づけており、無償で提供することとしています。

 令和4年10月からは自動運転車両、配送ロボットや市街地共助 Wi―Fi等のサービスを早期実装しました。本構想における主なターゲットとなる高齢者には800台のスマホを無償貸与し、オンライン運動教室や脳トレ、オンライン行政手続き・サービス予約のツールとして活用することを想定しています。

 「超なまら本気スマート農業」では、ロボットトラクターや人材確保と育成を図り仕事面からも生きがいを感じられる農村を実現します。

 今年度は完全無人走行のロボットトラクターを活用した大豆栽培を行いました。東京大学大学院サテライトキャンパスを誘致しており、種まきから除草作業まで次年度以降も広く地元の高校生や生産者との研究拠点として大いに期待するとともに、村は産学官金をつなげる役割・責任を果たしてまいります。

村内の店で利用可能な配送ロボット   村内を走る自動運転の移動サービスは利用無料​  

村内の店で利用可能な配送ロボット​ ​        ▲1/4works村内を走る自動運転の移動サービスは利用無料​ ​     ​

 ドローンの活用は農業分野に限らず、防災や見守り、物流等さまざまな分野で活用の幅を広げる検討をしています。今後の横展開を見据えてドローン事業者の育成を支援しており、村内で起業された事業者もいます。

 これらのサービスは、新たに設立した「更別村スーパービレッジ協議会」が実施主体として運営を行っています。サブスクリプションにすることにより一定の収入が見込めることで安定した運営が可能になるとともに、サービスの質の向上やニーズに応じたサービス内容の改善が可能になります。

 高齢者が幸せに暮らせるだけでなく、well-being指標の導入により将来の更別村を担う子どもたちが豊かに暮らせる地域社会の実現を目指します。

 運営体制においては、村内事業者及びサービスを提供するパートナー企業を中心にアカデミアや域外パートナー企業が業務支援を行っています。本村は事務局として事業者との調整や運営支援、村民からの相談対応等をしていますが、今後は法人を設立し移管することとしています。

 令和4年度末までにはすべてのサービスが展開されるとともに、現在整備を進めているサテライトオフィスには複数の企業が入居予定です。サテライトオフィスには情報センターを設置して村民の集いの場として広く開放するとともに、入居企業とのコミュニケーションの場となることも期待しています。

現在建設中のサテライトオフィスは村民の集いの場としても開放予定

現在建設中のサテライトオフィスは村民の集いの場としても開放予定

20年、30年後も豊かで持続可能な村へ

 本村の人口は昨年度12年ぶりに増加し、令和4年11月1日現在で3、172人となり、子育て支援策の拡充や大型分譲地の整備なども相まって近隣や都市圏からの移住が進んでいます。

 行政DXの推進や各種サービスの充実による村民の利便性向上は全国あまたある地方・農村の共通の課題であるとともに、目前に迫る喫緊の課題です。

 本村では、中山間地域における課題解決のフロントランナーとして、村民のQOL(生活の質)向上に向けて「更別村スーパービレッジ構想」の実現を強く進めるとともに、本構想の取組を全国へ展開し、20年後、30年後も豊かで持続可能な農村の実現に向けて歩みを進めてまいります。

 デジタルの活用は1つのツールに過ぎません。村民同士のつながりやコミュニティを大切にしながら、産業の振興、医療や移動等の分野で人工知能AIなどの先端技術を活用しています。

 多様化・複雑化する村民ニーズに対応するためには、行政の人材・財政力だけでは充足できないことは明らかです。

 水道や道路整備など全国隅々まで行わなければならない行政サービスだけでなく、立地条件や本村のような小さな自治体だからこそ必要な社会基盤もあります。本村では内閣府のデータ連携促進型スマートシティ推進事業をはじめとする補助事業を活用等により自治体の負担を軽減し事業展開が可能なメリットを生かしながら生活を支える基盤整備を進めています。今日の村づくりには、行政だけではなく、民間の力が必要です。村民と産学官が一体となって地域に山積する課題に立ち向かっていかなければなりません。

 村民の共感・理解は事業を推進するうえで必要不可欠です。村民を置き去りにするようなサービスでは浸透しないだけでなく、拒否反応を生むこともあります。今以上に村民に事業の浸透を図り利用者を増やすべく、サービスの説明や利用しやすいUI/UXを構築します。また、行政内部でも同じであり、村民に対する丁寧な説明や行政内部で横断的な会議で情報共有を図るなど円滑な推進に努めています。

 コロナ禍という、かつてない厳しい昨今の社会・経済情勢ではありますが、「やるべき時は今!」、「現状維持は後退である。まさに不退転の決意を持って前に進むしかない!」との言葉を肝に銘じ、この難局を乗り越え、豊かな未来に向かって前進していきたいと考えています。

航空写真    

農業で生きてきた更別村。20年後30年後の豊かで持続可能な村の実現を目指す取組は続く​
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デジタル田園    

更別スーパービレッジ構想(デジタル田園都市国家構想)の全体像。暮らしと仕事の両面から高齢者が輝くまちの実現を目指す
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北海道更別村
企画政策課