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鹿児島県大崎町/世界標準、大崎に向けて~リサイクルの町から世界の未来をつくる町へ~

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年2月6日

白砂青松100選、日南海岸国定公園に指定されている大崎海岸

▲白砂青松100選、日南海岸国定公園に指定されている大崎海岸​​


鹿児島県大崎町

3228号(2023年2月6日)
鹿児島県大崎町 企画調整課課長 中野 伸一



    1.大崎町の概要

    九州全域から見た 大崎町      

    鹿児島県曽於郡大崎町は大隅半島のほぼ中央部に位置し、町の南部は豊かな水産物をもたらす志布志湾(太平洋)に面し、北部にかけては多くの農畜産物を育む広大な大地が広がっている町です。

    人口は令和4年8月末現在で12、356人、世帯数は6、607戸となっており、町の面積は100・67㎢です。

    温暖な気候と全体の約4割を占める広大な農地を背景とした豊富な農畜産物に恵まれ、これらの食材を中心とした返礼品が注目されており、ふるさと納税は常にランキングの上位に入っています。

    また、ごみ問題という地域課題に端を発した廃棄物処理に20年以上前から取り組み、資源リサイクル率日本一を12年連続(H18年度~29年度)を含む計14回達成し、資源循環型社会の構築に早くから取り組んでいる町です。

    2.埋立処分場の逼迫→リサイクルへ

    元来、大崎町には廃棄物焼却処理施設が存在せず、いわゆる「燃えるごみ」はありません。すべての家庭から排出される一般廃棄物は清掃センター(埋立処分場)に埋立処分していました。大崎町がリサイクル事業に取り組み始めたきっかけはこの埋立処分場の残余年数の逼迫によるものです。

    現在供用している埋立処分場は、以前の処分場が満杯となり使用できなくなったために建設されたものです。

    計画では平成2年から平成16年までの15年間の供用予定でありましたが、埋立開始から右肩上がりに搬入量が増えており、計画期間を待たずして満杯になる恐れが出てきました。

    この課題解決のために行政としては次の3つの選択肢の検討を迫られました。

    ①廃棄物焼却処理施設の建設
    ②新たな埋立処分場の建設
    ③既存の埋立処分場の延命化


    ①については、建設自体は国の補助金等を活用して可能と思われるが、試算上毎年2~3億円かかるランニングコストを捻出することは財政的に困難であるとの認識でした。

    ②については、当時の埋立処分場は家庭から出るすべてのごみを混載袋に入れ搬入されていたため、悪臭・害虫等が大量に発生し、衛生的にも劣悪で、迷惑施設として認識されていました。このような事情から現在の埋立処分場を建設する際にも住民との交渉は困難を極めた経緯もあり、新たな埋立処分場のために用地を確保して建設するのは、困難との判断となりました。

    そして最後に残った選択肢が③の「既存の埋立処分場の延命化」です。

    「混ぜればごみ、分ければ資源」を合言葉に、ごみを分別することにより、再資源化可能量を増やし、埋立処分場への搬入量そのものを減らし、埋立処分場の延命化を図ることとなりました。そしてこの「焼却炉に頼らない低コストの廃棄物処理システム」を「大崎システム」と呼んでいます。

    ただこの大崎システムは、行政と企業で行ってきた一般的な廃棄物処理システムと異なり、家庭での分別及び集団回収という住民自らの協力がなければ成立しないシステムであり、住民への説明に多くの労力を割きました。

    3.住民への説明:説得から納得へ

    既存の埋立処分場の延命化を選択し、まずは平成10年に缶・ビン・ペットボトルの3種類から分別を開始した大崎町でありますが、それまでほぼすべてのごみを埋立していた状況でごみの分別について住民からの協力を得ることは非常に困難でありました。

    当時の担当者によると、これまで分別をしてこなかった中で、缶・ビン・ペットボトルという3種類でさえ大きな反対があったそうです。

    その後、平成12年から分別品目が16品目となり、さらに翌年には24品目となりましたが、説明には非常に苦心しました。

    説明の手法について、まずは自治会リーダーに埋立処分場の現状を公開し、課題を理解していただき、説明会の日程調整や当日の進行などを担っていただきました。

    また説明会日程は、行政が決めるのではなく、休日や時間外に関係なく各自治会の要望に合わせて開催することで、参加数を多くする工夫をしました。

    全150自治会ほどに対して説明に回り、最初は聞く耳を持たなかった人も多い状況でしたが、何回も足を運び、粘り強く説明した結果、住民も自分事として理解していただき、何とかしようという機運が醸成されました。

    また分別がスタートした後も、行政職員がごみステーションに立ち合い、一緒に仕組みを確立していきながら、住民主体、住民目線で解決していこうと試みました。このようにしてリサイクル活動が時間をかけつつも浸透していきました。

    「 大 崎 町 リ サ イ ク ル シ ス テ ム 」説明図表

    SideBooks 「大崎町リサイクルシステム」説明図表

    4.ごみ分別の状況

    現在では27種類に及ぶごみの分別に取り組んでいます。

    大崎システムに取り組んだ結果、平成18年度からの連続12年間を含む、計14回の資源リサイクル率日本一を達成しました。令和2年度のリサイクル率は83・1%となっており、全国平均が20・0%であることを踏まえるとそのリサイクル率の高さがうかがえます。

    5.大崎システムのメリット

    ⑴埋立処分場の延命化

    大崎システムにより、埋立ごみ量が約85%削減され、埋立処分場の寿命も令和3年現在では残り約40年と推計されており、また生ごみ等有機物の搬入が無くなったことにより、衛生面が大幅に改善しました。

    ⑵収入の増加

    資源物を売却することにより資源ごみ売買益金が発生し、平成12年度から令和2年度までの合計で1億5千万円超の収入がありました。

    ここ数年は年間6~8百万円で推移していますが、毎年各自治会へ環境衛生協力金として還元及び後述のリサイクル未来創生奨学金制度の財源ともなっています。

    ⑶奨学金制度の創設

    資源ごみ売買益金を原資に大学等進学のため転出した若者が大崎に帰ってきたら実質返還免除される独自の奨学金制度(大崎町リサイクル未来創生奨学制度)の原資になっています。

    ⑷雇用機会の増加

    大崎システムを開始するにあたり、町内に新規企業として㈲そおリサイクルセンターが設立され、約40名の雇用創出が図られました。

    ⑸国際展開による知名度向上

    平成24年からインドネシア共和国の3自治体に対し、国際協力機構(JICA)の助成を受けてごみの減量化に係る技術協力を行っています。

    ごみの焼却処分は日本では一般的ですが、世界各国では焼却処分はメジャーではありません。インドネシアにおいても高コストになってしまう焼却施設はほとんどない中、増え続ける廃棄物の処理は喫緊の解決すべき課題であり大崎町の課題と同じでありました。この取組により、「大崎システムが世界に」というようなニュースが新聞やテレビ、町の広報誌等を通して報じられ、知名度が向上しました。

    6.止まらない人口減少→課題山積

    マスコミなどで報道されたことにより、知名度が飛躍的に向上し、年間約80団体の環境施策の視察研修を受け入れる町となりました。

    しかしながら、最大の課題である人口減少の流れに歯止めがかからず、総合計画においての目標である、2060年時点での人口1万人の確保は非常に厳しい状況にあります。

    対外的な評価が高まる一方で、人口減少・空き家対策等の多くの課題を把握はしているものの、人材や財源等の不足により、解決策を講じられないもどかしさがありました。

    国立社会保障・人口問題研究所/日本の地域別将来推計人口

    国立社会保障・人口問題研究所/日本の地域別将来推計人口

    7.「大崎町リサイクル未来創生プログラムの共同開発に関する連携協定」を締結

    課題解決のためには外部との連携が不可欠との考えから、本町の取組に興味を持たれていた慶應義塾大学SFC研究所と、地方自治体の衰退が経営環境を左右するという鹿児島相互信用金庫と、平成30年4月に3者による「大崎町リサイクル未来創生プログラムの共同開発に関する連携協定」を締結し、地方創生に関する新たな取組が始まりました。

    8.SDGsの視点から再定義→第2回ジャパンSDGsアワード 副本部長賞受賞

    連携協定により、大崎町の取組を経済・社会・環境というSDGsの視点から再定義した結果、経済面においては約40名の雇用創出や約1億5千万円を超える資源ごみ売買益金の発生、社会面においては国際展開やインドネシア研修生の受け入れを通じた多文化共生の生成と展開、環境面においては約80%を上回る資源ごみリサイクル率日本一の達成などが結果として現れました。

    写真1

    第2回ジャパンSDGsアワード受賞式にて

    受賞した大崎町の取組概要図

    国立社会保障・人口問題研究所/日本の地域別将来推計人口

    受賞した大崎町の取組概要図

    そしてこの結果を受けて、平成30年12月21日、大崎町は第2回「ジャパンSDGsアワード」にて、リサイクル事業を中心とした経済面、社会面、環境面からの統合的な国内外での持続的な取組、地域循環共生圏の創造を目指していく考え等が評価され、副本部長賞を受賞しました。

    応募団体250の内、唯一の自治体による受賞となりました。

    またこの受賞を機に平成31年1月14日に大崎町SDGs推進宣言、3月議会においては大崎町持続可能なまちづくり条例が可決、制定されました。

    9.令和元年度SDGs未来都市選定

    大崎町は、令和元年7月1日に「SDGs未来都市」(全国31都市)に選定されました。未来都市計画においては経済・社会・環境三側面それぞれにおいて課題解決に向けた取組を行うこととしています。

    10.どのようにして? → 一般社団法人大崎町SDGs推進協議会の設立

    未来都市計画の実現及び課題解決を行うために放送局や⾦融機関等県内外の多様な企業・団体と協働し一般社団法人大崎町SDGs推進協議会を令和3年4月に設立しました。今後、協議会を中心に連携企業と協働しながら、循環型社会に求められる⼈材育成機会の創出、フードロス・フードマイレージの削減、再⽣可能エネルギー・エネルギー⾃給、SDGsの理念の普及・啓発などに取り組んでいく予定です。

    写真2

    一般社団法人大崎町SDGs推進協議会を設立

    11.おわりに

    「リサイクルの町から世界の未来をつくる町へ」という旗を掲げ、持続可能なまちづくりを推進する大崎町へぜひお越しください!

     

    鹿児島県大崎町

    企画調整課課長 中野 伸一