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宮城県丸森町/広報紙の電子書籍化等による住民生活の利便性の向上

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年1月30日

電子書籍化した広報紙等は、パソコンやスマートフォン等で閲覧

▲電子書籍化した広報紙等は、パソコンやスマートフォン等で閲覧​​


宮城県丸森町

3227号(2023年1月30日)

宮城県丸森町 総務課
 


ポイント


.町職員提案制度により広報紙・回覧文書を電子書籍化。いつでもどこでも閲覧可能に。
.紙の母子健康手帳を補完する母子手帳アプリを導入。同時にオンライン医療相談の連携。保護者が抱える不安や孤立の解消へ。

 


丸森町は、宮城県の南端に位置し、南側は福島県と隣接。大部分を山林及び丘陵地が占めるものの、町の北部を東北第二の大河である阿武隈川が貫流し、その流域と支流河川の流域一帯が平坦地を形成する総面積273・3㎢の盆地状の町です。

令和元年10月12日に襲来した令和元年東日本台風では、住民の尊い人命が失われるとともに、家屋や農地等に甚大な被害が生じ、さらには道路や河川等の公共土木施設、農作物や商工業等の被害額が470億円を超えるなど、町政史上最悪の出来事となりました。現在、令和6年度までを計画期間とする「丸森町復旧・復興計画」に基づき、国、県、そして全国の自治体の皆さまからの御支援をいただきながら、復旧・復興に向けた事業を進めています。この場をお借りして、御支援いただきました皆さまにお礼を申し上げます。

さて、本町におけるデジタル技術を活用した施策について、紹介させていただきます。


    1.広報紙等を電子書籍化


    背景と課題

    町の広報紙「広報まるもり」や各課が作成するチラシについては、毎月1日と15日の2回、町の行政運営推進委員(いわゆる行政区長)を通じて、各世帯に配付または回覧を行ってきました。

    しかし、紙媒体である都合上、「広報紙といっしょに届いたチラシが見当たらない」、「回覧してしまったチラシをもう一度読みたい」という住民の声がありました。特に回覧文書は、「隣のお宅へ早く回してあげよう」という配慮から、世帯内の家族全員が内容を確認する前に回覧してしまう場合もあるようでした。

    そのような中、町で実施している職員提案制度において、ある職員から「町が住民向けに配付する文書を電子化し、ホームページに公開してはどうか」という提案がありました。この提案では、電子化した文書をホームページに公開することにより、住民だけでなく、各課でどのような文書を住民向けに発信しているのかを庁内で共有することもでき、住民からの問い合わせ対応等、住民サービスの向上につながる内容だったため、採用することとしました。

    この提案の実現にあたっては、ホームページへの掲載も検討しましたが、初めて利用する方の操作性も考え、紙をめくるようなイメージで利用できるよう電子書籍として公開する方法を検討しました。検討を進めていく中で、東京インタープレイ株式会社のペーパーレス会議システム「SideBooks クラウド本棚」の「ちいき本棚」の機能にたどり着きました。

    SideBooks ちいき本棚には全国125自治体が参加(2023・1時点)

    SideBooks ちいき本棚には全国125自治体が参加(2023・1時点)

     


    全戸配付回覧文書を電子書籍化し、WEB上に掲載

    SideBooksの「ちいき本棚」(https://sidebooks.jp/chiiki/)は、東京インタープレイ株式会社が運営する電子掲示サービスです。データの閲覧が無料、パソコンだけでなくスマートフォンからも利用可能で、利用者は本をめくるような操作感で閲覧できるほか、職員によるデータのアップロード作業も容易であることが選定の理由となりました。

    電子書籍として広報紙を掲載する取組は以前から行っておりましたが、広報紙以外の配付文書、回覧文書を電子書籍化するにあたり、このSideBooksの「ちいき本棚」の仕組みを取り入れました。

    ≪他の電子書籍化サービス例≫

    ・『miyagi ebooks』(ミヤギイーブックス):株式会社ソノベ(miyagi ebooks実行委員会

    ・『マチイロ』:株式会社ジチタイワークス

     

    平成29年5月に「ちいき本棚」の利用を開始。これまでどおり紙媒体で住民に周知することに加え、電子書籍として「ちいき本棚」への掲載を始めました。

    ホームページの広報紙サイトからリンクを張り、「ちいき本棚」のサイトを開くことができるようにしました。配付した文書を日付ごとにまとめて掲載する運用としたことで、住民はもとより職員間でも情報共有できる効果がありました。また、WEB上で誰でも、いつでも見ることができる環境となり、町外にいる丸森町に関心のある方々に対して町内で実際に周知している情報を見てもらえる効果にも期待しています。

    現在は、町の広報紙や回覧文書のほか、議会広報、観光パンフレット、子育てガイドなども掲載しています。令和4年に発行した「令和元年東日本台風災害記録誌」も掲載していますので、機会があれば御覧ください。

    今後は、町で策定している各種計画書などの掲載も予定しており、より多くの情報を共有できる仕組みを構築するとともに、この「ちいき本棚」の仕組みを活用したペーパーレス会議システムの導入も検討しています。

    紙での配付文書を日付ごとにとりまとめて掲  広報紙などを電子書籍化し掲載  

    紙での配付文書を日付ごとにとりまとめて掲​ ​        ▲広報紙などを電子書籍化し掲載​ ​     ​

    2.母子手帳アプリとオンライン医療相談の連携活用


    背景と課題

    本町には、産婦人科・小児科の医療機関がないことに加え、周辺自治体においても閉院が相次ぎ、軽微な通院であっても移動時間がかかります。加えて、近年のコロナ禍による感染リスクを回避するため、通院を控える傾向もあり、重篤化の不安やリスクを抱えながらも様子見をする選択を取らざるを得ない家庭があることも把握していました。

    また、出生直後は複数の予防接種を受けなければならず、スケジュール管理が疎かになることで、適正な時期の接種を逃してしまうことにつながりやすく、特に、複数の子どもを持つ家庭では、その負担が大きいといえます。加えて、紙の母子健康手帳だけでは、妊娠期の記録や任意の予防接種の記録のバックアップが存在せず、紛失してしまった場合には、町として十分な支援を行うことが難しい状況でもありました。

    一方で、DXが進み、妊娠中や子育て中においてあらゆるアプリの活用や、インターネットから情報収集する場面が一般化しています。ただし、その中から正しい知識や確かな情報を取捨選択することは難しく、不確かな知識や情報は、いたずらに不安をあおる要因となり得ます。そのため、町が主体となって、正確で信用性の高い情報の発信や、直接医師に相談できるシステムの整備を進めることは、住民の利便性の向上のみならず、生活の安心につながると考えていました。

    このような課題に対し、母子モ株式会社が運営する母子手帳アプリ「母子モ」と、株式会社Kids Publicの「産婦人科オンライン」及び「小児科オンライン」の導入により解決を図ることとしました。


    オンライン医療相談の連携

    母子手帳アプリ「母子モ」の活用により、保護者が妊娠期や子どもの予防接種、健診や身体発育の記録をWEB上に保管できるようになり、紙の母子健康手帳が手元にない時でも記録が確認できるようになるほか、紛失時にも記録の復旧が可能になりました。また、予防接種のスケジュール管理機能や、接種漏れ防止のプッシュ通知により、適切な時期に接種できるよう支援しています。

    導入後は、予防接種の時期に関する町への問い合わせ件数は減少しましたが、接種数は維持しているため、スケジュール管理の負担が軽減されたものと考えています。

    母子手帳アプリで子どもの成長 記録をデジタル化

    SideBooks 母子手帳アプリで子どもの成長記録をデジタル化

     

    また、子どもの成長記録をデジタル化して家族と共有することができる機能や、子育て世代同士が集まるきっかけを作るコミュニケーションツールとしての側面もあり、母親が抱える不安や孤立の解消につながるよう活用しています。

    オンライン医療相談は、登録者に対して、WEBフォームからの相談(24時間受付)とメッセンジャーアプリ「LINE」を活用したチャット、音声・ビデオ通話によるリアルタイム相談(平日18時~22時)ができるサービスを導入しています。登録者は、質の高い回答や正確性の高い情報を得ることができると同時に、会員情報により相談内容を個別にカルテ化することで、相談経過に応じた対応ができるほか、ハイリスクと判断された妊婦・子育て家庭について、医師から町への情報提供が行われることで、リスクのある利用者が孤立しないよう、支援につなげることができます。オンライン医療相談のLINEアカウントを友だち登録していれば、利用登録をしていない方でも、定期的な医療記事の配信やLIVE動画配信による妊娠期・子育て期の疑問解決のための情報配信サービスが利用できます。24時間365日体制で症状などの不安を気軽に相談でき、医師や助産師からの適切な助言を受けることができるだけでなく、正しい情報・知識を得ることで、家庭での育児力の向上、自己解決能力の向上が期待されます。

    オンライン医療相談で気軽に相談可能

    SideBooks オンライン医療相談で気軽に相談可能

     

    これらのサービスは、通常、使用するタイミングが異なるものです。その日から使用できる母子手帳アプリと、いざという時でないと必要性を感じにくいオンライン医療相談を相互に連携させることで、それぞれ適切な時期にサービスが利用できるよう、情報発信を行っています。具体的には、オンライン医療相談で発信する健康・育児情報や、町のイベント情報などを母子手帳アプリの利用者に通知するなど、医療相談の必要性以外の点からもサービス登録に興味を持ってもらえるよう取り組んでいます。

    これらを進めるにあたって、保育施設や教育施設にチラシを配付するだけではなく、乳幼児健診や個別相談、母子手帳交付や出生届などの機会を逃さず、対面で説明し、登録を勧めています。今後も、安心して子育てができるよう、多様化する子育て家庭へのニーズに柔軟に対応していきます。

    本町では、今回紹介させていただいたようなデジタル技術を活用した施策を進め、住民生活の利便性の向上、行政運営の効率化などにつなげていきたいと考えています。

    (宮城県丸森町 総務課)

     

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