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北海道中富良野町/「ナカフライフ」~人とのつながりを大切に~

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年5月30日

北星山ラベンダー園から見る春の十勝岳連峰の眺望

▲北星山ラベンダー園から見る春の十勝岳連峰の眺望​​​


北海道中富良野町

3201号(2022年5月30日) 中富良野町長 小松田 清


1.中富良野町の概要


中富良野町は、北海道のほぼ中央に位置し、東北は上富良野町、南は富良野市、西は芦別市、北の一部で美瑛町と接しています。東西17・9㎞、南北13・4㎞、総面積108・65㎢の町で、東部は十勝岳を主峰とする千島火山脈が連なっており、遠く大雪山を眺望することができ、南西の方面は夕張山脈が南北に縦走し、夕張岳、芦別岳が富良野原野の景観をなしています。

本町は豊かな自然と広大な農地を活かし、稲作を主体とした農業の町として発展してきました。現在、水稲や麦類をはじめ、玉ねぎや馬鈴薯、南瓜、スイートコーン、アスパラガス、メロン等、多品目の野菜等が生産されているほか、畜産も盛んに行われています。また、本町には北海道ラベンダー観光発祥の地として有名な「ファーム富田」をはじめ、北星山ラベンダー園やフラワーパーク、森林公園などの観光関連施設が整備された北星山一帯、民間のゴルフ場や温泉施設、数多くのペンションやホテルがあり、毎年約100万人の観光客が訪れていましたが、令和2年度、3年度においては約35万人程度の観光入込客数となっており、コロナ禍により地域産業に大きな影響を受けております。

2.地方創生事業へのチャレンジ


令和3年度より、中富良野町の総合計画である「第6期なかふらのまちづくり総合計画」がスタートしました。それと同時に町の機構改革も行い、新たに「企画課」を立ち上げ、「まちづくり」「移住・定住」「情報発信」「商工観光」「ふるさと納税」の部署を1つの課にまとめ、まちづくり事業を一体的に取り組める体制を構築しました。

令和2年12月に国の地方創生テレワーク交付金事業の通知をうけ、中富良野町として地域活性化の取組を推進するためテレワーク交付金事業への申請を実施しました。申請に当たっては町の現状と課題、町の地域資源やテレワーク事業を働きかける企業像を明確にする点が重要となりましたが、これまで町と民間企業が連携して事業を進めてきた実績が少なかったところから、事業計画を考える中で具体的な民間企業像を思い描くことができず、非常に苦労しました。

この課題を解決するため、令和3年4月からは町から直接民間企業へ連絡をして、町の課題や取組についてお話させていただく機会を増やしていきました。その結果、1年間を通じて100社近い企業の皆さまと面談を実施しています。また、近隣の自治体にも職員が足を運び、どのようにまちづくりの計画を考え、地域一体となって取組を推進しているかを勉強させていただきました。そして、最終的に中富良野町のテレワーク事業計画を立案して申請した結果、令和3年8月に国の採択を受けることができました。

北星山ラベンダー園から見る春の十勝岳連峰の眺望

▲北星山ラベンダー園から見る春の十勝岳連峰の眺望​​​

3.民間企業とのつながりを作るための取組


民間企業へ直接連絡する以前に、中富良野町にいる地域の事業者のところへ直接訪問してお話を聞かせていただく取組を始めました。この取組の目的は、町の事業や考え方について地域の事業者の方と共有すること、地域の事業者の方がまちづくりに対してどのようなことを考えているかを直接聞かせていただく機会を設けること、そして、気軽に話し合うことのできる関係性を構築することです。すると地域の事業者の方からも「町と話す機会をもててうれしい」という言葉をいただけました。この言葉をきっかけに、これからも自分たちから積極的に行動していこうと考え、民間企業へ連絡し、お話をする機会を増やしていきました。そして、意見交換をする度に、まちづくりに反映したくなるような考えやアイデアをいただくことができました。あまりにもインプットする情報が多く、アウトプットしないと頭の中がパンクしてしまいそうになるので、私自身、自分の考えや思いを直接職員に伝えさせていただく機会を増やしています。

ワークショップの風景

ワークショップの風景​

4.ワーケーション事業への取組


時を同じくして、なかふらの観光協会とも連携して「ワーケーション事業」の取組を令和3年度から始めました。中富良野町のワーケーションに対するニーズ調査を実施するため、地域の宿泊業者に1件ずつ訪問し、全ての宿泊事業者の方からワーケーションに対する考えを聞かせていただきました。ここでも自分たちから行動してお話を聞かせていただくというスタイルで取組を実施することで事業者の方との距離も縮まり、より具体的なご意見を聞かせていただくことができました。その結果、町内宿泊事業者のニーズをもとに、どのような形であれば事業を進めることができるのかを考えることができました。また、事業に協力していただける宿泊事業者と連携して秋と冬の2回にわたってモニターツアーを開催することに至りました。

このモニターツアーを実施して得られたキーワードは「人の魅力」でした。モニターとして来ていただいた人たちからは「中富良野の人と交流することができて、とても良かった」という意見をいただき、町に訪れる人たちのニーズの1つに、地域の人と関わりたい、交流したいと思う人たちがいることがわかったのです。

5.タウンプロモーション冊子「ナカフライフ」の発行


令和3年度、もう1つ大切な取組を実施しました。それが町のプロモーション冊子「ナカフライフ」の発行です。「町の地域資源」「町の魅力」「町での生活」という部分は、まちづくりを語るうえで大切なキーワードとなります。中富良野町に住んでいる人たちにとって「誇りに思うことのできる町の魅力」、それは、移住を考えている人たちにとっても深く心にささる魅力となるのではないかと考えました。この冊子には町での暮らし、田園風景、花の魅力、畑と食卓の幸せな距離感、北海道パウダーベルト(雪)の可能性、富良野圏域で体験できる広域的な魅力、宇宙を近くに感じる星空や中富良野町にある文化等、さまざまな業種の人たちの協力を得ながら1から作り上げました。ぜひ、町民の皆さんにも、中富良野町に興味を持っていただいている人たちや民間企業の方にも見ていただきたいです(デジタル版アドレス https://nakafulife.jp/ 「ナカフライフ The first issue」)。役場職員も関わりながら事業を進めることで、中富良野町の魅力は何なのかということを深く知ることができたと同時に、あらためて中富良野町が素敵な場所なんだと心から感じることができたという職員もいました。すると不思議なことに、これまでよりも町の魅力について語る言葉にも熱がこもり、もっと多くの人に中富良野町を知ってもらいたいという想いが強くなっています。
タウンプロモーション冊子 「ナカフライフ」

タウンプロモーション冊子「ナカフライフ」

6.地域とのつながりを作るための取組


令和3年度は9名の地域おこし協力隊が中富良野町で活動してくれました。都会から来ていただいている人が多く、外からの「移住者」の視点で町の魅力を発見し、地域資源の掘り起こしをしてくれる大切な存在です。小さな頃から町に住んでいる町民の人たちにとって「あたりまえ」と感じる風景も、地域おこし協力隊の人たちには「とても素敵な風景。癒やされますよ」と、新たな地域資源になり得るヒントを教えてくれます。

地域おこし協力隊の人たちが町で活動をするうえで大切となるのは地域の人たちとのつながりを構築することと考えています。地域のことを知る、地域の人たちを知り、自分たちのことも知ってもらうための取組として、町内の飲食店に1件ずつ訪問する活動を行ってもらいました。町で飲食店を始めた理由や、料理や食材へのこだわり、お店のコンセプト等を聞かせていただき、飲食店の紹介冊子の作成にも取り組んでいます。その他にも地域おこし協力隊のフェイスブックやインスタグラムで日頃の活動や町で発見した魅力について情報発信をしてくれています。これらの活動を通じて、地域おこし協力隊の存在や活動について町民の方に知ってもらうことができ、今では町の職員よりも地域の人たちと気軽に話ができるような存在になっています。

また、地域の事業者の人たちだけではなく、町の人たちとも町の魅力について語り合うことのできる機会として、町で初めての取組である「KATARIBA」(語り場)というイベントを観光協会が主体となり、地域おこし協力隊、町も一緒になって開催しています。誰もが気軽に参加できるイベントとして会場の雰囲気づくりや装飾等を試行錯誤しながら取り組んでいます。第1回目は町のアイデンティティについて語り合い(令和3年11月開催)、第2回目は町にどのような人に来てもらいたいかを考え、互いの考えを共有しあえる場となりました(令和4年3月開催)。地元出身の高校生も参加してくれて、さまざまな年代の意見を聞くことができる貴重な場となっています。第3回目は令和4年6月頃の開催を予定しており、このKATARIBAを通じて、地域が一緒になってまちづくりを考える環境ができていくことを期待しています。

7.テレワーク施設の完成


令和4年3月に2つのテレワーク施設の整備が完了しました。1つは「まちなかオフィス」です。この施設は中富良野駅から徒歩2分、国道にも面していますので車でのアクセスもしやすく、気軽にご利用いただけると思います。施設はコワーキングスペースを基本としており、施設の中にはWeb会議ができる個室がありますので、打ち合わせの際もご利用いただきたいです。また、周辺には飲食店やコンビニエンスストア、役場等の公共施設も歩いて5分程の距離にありますので、何かお困りごとがあれば、いつでもご相談いただける環境となっています。

2つ目は「本幸ラボ」です。この施設は町の中心から10㎞離れた、十勝岳連峰のふもとにある小学校をワーキングスペースとして整備しました。施設にはワーキングスペースのほか、オンライン会議スペースやフリースペース、地域交流スペースを整備し、幅広い使い道が可能な施設となっています。一歩、外にでれば十勝岳連峰の山並み、高台から見下ろす田園風景の町並みが一望できます。ぜひ、この自然豊かな空間で、リラックスしながら仕事をしていただきたいです(テレワーク専用HPアドレス https://nakafulife.com/ 「ナカフライフ」)。

「まちなかオフィス」(テレワーク施設)
​▲「まちなかオフィス」(テレワーク施設)​

8.今後の課題


新たに整備したテレワーク施設を活用して、新たな人の流れを生みだすための取組が今後の課題です。キーワードは「人」「交流」「コミュニティ」になると考えています。新たな人のつながりから、中富良野町に来てみたい、中富良野町で何かに取り組みたい、中富良野町に来たら何かできるかもしれない、そう思っていただけるきっかけづくりと、その思いをサポートできる体制や仕組みが町に足りない部分であるので、令和4年度にこの仕組みづくりを進めていきたいと考えています。

また、中富良野町に訪れたい、働きたい、生活してみたいという人を受け入れるための環境が少ないのも課題の1つでありますので、「お試し住宅」等の環境整備も進めていければと考えています。

新たな取組を進めていくには人もエネルギーも必要ですが、役場で働く職員自身が働いていて「楽しい!!」と思える環境が大切だと思います。まずは私自身が明るく前向きに、そして、自分から職員と交流を図りながら役場職員が一体となって取り組めるよう努力していきたいと考えています。そして、地域の人たちとも力を合わせながら、中富良野町全体が同じ方向性をもって、まちづくりの取組を進めていきたいと思います。

地域の子供たちと田植えをする小松田町長

​​▲地域の子供たちと田植えをする小松田町長​