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群馬県片品村/小さくても輝く尾瀬の郷

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年5月23日

ほたか牧場キャンプ場

▲ロマンチックな星空の下、大自然のキャンプを楽しめます。(ほたか牧場キャンプ場)​​


群馬県片品村

3200号(2022年5月23日)片品村 むらづくり観光課


1 片品村の概要

片品村は、群馬県の北東に位置し、村の総面積(391・76㎢)の92%を森林が占めている自然豊かな村です。

東京から関越自動車道沼田ICを利用して、車で約2時間半。村は観光業・農業を主要産業としており、高地を活かした高原野菜栽培が盛んです。尾瀬の自然豊かな大地と平成の名水百選に選ばれた水を使って栽培された「尾瀬トマト」は絶品です。

春から秋にかけては、本州最大級の高層湿原「尾瀬ヶ原」の絶景を見ようと全国各地から観光客が訪れます。

しかし冬は景色が一変し、一面の雪景色になります。片品村は関東で唯一、特別豪雪地帯に指定されている自治体で、非常に多くの降雪があります。この時期は村内に5カ所あるスキー場で極上のパウダースノーを堪能することができます。

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2 尾瀬国立公園

ラムサール条約湿地登録地でもある尾瀬は、日光国立公園の一部として指定をされていましたが、植生が栃木県の日光とは異なることから、「尾瀬国立公園」への実現に向けて活動が始まり、平成19年に日光国立公園と分割され、会津駒ケ岳及び田代山・帝釈山など周辺地域を新たに加えて全国で29番目の国立公園として「尾瀬国立公園」が誕生しました。群馬県・福島県・新潟県・栃木県にまたがり、区域面積は372㎢となり、1つの国立公園とし分離・独立したのは初めてのことでした。

尾瀬国立公園は西に本州最大の山地湿原である尾瀬ヶ原、東に火山堰止湖である尾瀬沼、さらにそれを取り囲む2、000m級の山々からなる山岳地域であります。自然の偉大な恵みが生んだ自然の宝庫である尾瀬。四季を通じてさまざまな花が咲き、代表的な花はなんと言っても「夏が来れば思い出す」の歌詞で始まる「夏の思い出」に出てくるミズバショウです。夏にはニッコウキスゲが湿原を黄色く染めます。秋には湿原一面が黄金色になり草紅葉も大変きれいで、そのすばらしい風景には誰もが魅了されます。ここ数年は、ワタスゲの大群生が見られるようになり、白い穂がふわふわと風にゆれ、とても心が癒やされます。

また尾瀬は日本有数の豪雪地帯です。初冬の11月から5月の中旬ごろまで尾瀬ヶ原や尾瀬沼は深い雪におおわれ、半年以上が積雪期となります。幾度か尾瀬ヶ原を歩くと真っ白な雪におおわれた季節にも訪れたい気持ちになります。4月下旬から5月中旬にかけての残雪期がそのチャンスです。大型連休のGWの時期ということもあり、残雪の景色を求めて多くの登山者が尾瀬ヶ原に訪れ、白銀に輝く至仏山にはスキーヤー、スノーボーダーがやってきます。そのため、山での遭難防止として片品村遭難対策救助隊による登山ルートへの目印の設置作業が行われ、尾瀬ヶ原の一部の山小屋もGWから営業をスタートします。

片品村は自然の宝庫「尾瀬」への玄関口です。これから令和4年尾瀬のハイカーシーズンが始まります。圧倒的なスケールと開放感を楽しみにぜひお越しください。

​​​登山ルートへの目印設置

▲登山ルートへの目印設置​​

3 尾瀬の郷 片品湧水群

村にある尾瀬の郷片品湧水群は優れた水質に加え、清掃、植林、山林保全、環境活動等、村民による長年の取組が評価され、平成20年に「平成の名水百選」として認定されました。村を囲む至仏山、武尊山、白根山などの山々に降った雪や雨が地下に浸透し、自然の中でろ過されたおいしい水です。

名水によっては湧水源が深い山林の中にあり、自然環境を守るという方針から立ち入ることができません。そこで村内の10カ所に取水設備を整え、おいしい水を求める人が利用しやすく整備を進めました。それぞれ1番近い水源から直接水を引いており、一部、地形的にどうしても難しい場合は、水道と同じ貯水池から給水しています(片品村では水道水に湧水を利用しています)。

10カ所の湧水はそれぞれ、①観音様の水②伊閑町の清水③武尊恵水④花咲の出水⑤武尊湧水⑥花の谷湧水⑦丸沼高原涼水⑧尾瀬岩鞍湧水⑨戸倉湧水⑩大清水湧水となっています(詳しくは片品村のHPに掲載されております)。

「おいしい」と言われる水は感覚的な評価のほかに水質検査による裏付けがあります。水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの量を相当する炭酸カルシウムに換算して数値で表したものを「硬度」と言います。例えば硬度が「0~60㎎/L」で軟水、「60~120㎎/L」で中程度の軟水、「120~180㎎/L」で硬水とされています。そして一般に硬度「10~100㎎/L」の範囲内の水がおいしい水とされていますが、片品村の湧水は「18~55㎎/L」で軟水です。

また溶液中の水素イオンの濃度を「PH」と言います。PH7が基準で中性、それ以下が酸性、以上がアルカリ性となっています。飲み水としての条件としては「PH6・5~8・5」の範囲内が適正とされます。片品村の湧水のPHは「7・3~8・2」。おいしさには根拠があります。ぜひ一度味わってみてください。

これからも豊かな自然を守り、この価値ある大切な水を守っていきたいと思います。

村民の湧水清掃(観音様の水)

村民の湧水清掃(観音様の水)

 

道の駅前の湧水(花の谷湧水)

▲道の駅前の湧水(花の谷湧水)

 

4 尾瀬ブランド制度

村では、尾瀬の郷・片品村らしい『うんめぇもん、いいもん』(おいしいもの、良いもの)の商品の付加価値を高め、村内外へ情報発信することを目的として「尾瀬ブランド」制度を設けています。

この尾瀬ブランドは、『尾瀬国立公園』が誕生した際の記念事業として制度が始まりました。

1回目の認定は平成20年に行われ、認定期間を1期3年とし、現在は『第4次』となる尾瀬ブランド品が認定されています。また令和4年3月末で現行の第4次尾瀬ブランド品の認定期間が満了することに伴い、現在新たに認定が行われ、令和4年4月1日より第5次尾瀬ブランドとして再スタートします。

尾瀬ブランドの情報発信の1つとして、村主催や他自治体様が開催するイベントに参加させていただく際に、試食や販売等を行っています。

実際に目で見て、触れて(食べて)いただき、片品村にこんな商品があるのだと知っていただくとともに、なぜこの商品が片品村らしいのか、と言ったような説明を観光情報も混ぜて説明し、お客様と交流しながら、村と尾瀬ブランド、あるいは観光と尾瀬ブランドが結びつくように気を付けています。

例えば認定品のなかには『えごま』の商品があり、なぜ『えごま』が片品らしいのかと言うと、村では昔から『胡麻』と『里芋』は作ってはいけない、と言われています。その理由は『日本武尊が芋殻で足を滑らせ、胡麻の殻で目を突き傷めた』という言い伝えがあるためです。そのため村内では胡麻と里芋を今でも作らず、胡麻のかわりに『えごま』が昔から育てられています。また、武尊山に建てられた日本武尊の像は、この言い伝えのとおり片目がありません。

そういったエピソードを交えるとお客様も喜んでいただけますし、武尊山は日本百名山でもあるので、登山が好きな方も興味を持っていただけます。

やはり村の認定商品とはいえ、他自治体様においても同様の取組が行われており、それ単体では付加価値としては弱いと思われますので、前記のエピソードのような違う面からのアプローチやフォローも検討していかなければなりません。

​​​『尾瀬ブランドマーク』

▲『尾瀬ブランドマーク』
尾瀬の代表花であるミズバショウをモチーフにしており、
尾瀬ブランドの『O』、ブランドの『B』をイメージしています。

5 観光交流連携拠点 道の駅尾瀬かたしな

片品村の産業は概要のとおり、高原野菜の栽培を中心とした農業と、尾瀬や日光白根山などの登山、スキーやスノーボードなどのウインタースポーツを中心とした観光が主となっていますが、観光客数の減少傾向が続いており、雇用機会の減少、若者の流出による人口減少が課題となっています。

そこで、この課題に対応するため、「第3次片品村総合計画後期基本計画」において、村中心地に交流連携拠点エリア「尾瀬の郷駅」の整備構想が盛り込まれました。

村民の約4分の1にあたる1、200人のアンケートにより、特に農産物直売所やレストランの整備などを求める声が多かったことを踏まえつつ、有識者や多くの村民と打ち合わせを重ねて整備計画が策定され、「道の駅尾瀬かたしな」が平成30年7月21日にオープンしました。

村内産の高原野菜や加工食品、工芸品、土産品などを取り扱う農産物直売所「かたしな屋」では、昼夜の寒暖差によって生み出される質の高い高原野菜が人気で、トウモロコシは特におすすめです。

「かたしな食堂」では、片品村でつめっこ(すいとん)や、たらし焼き、おやきやうどんなどのコナモノ料理が根付いていることや、村内の水が平成の名水百選に選定されていることなどから、自家製麺の「尾瀬名水うどん」を提供しているほか、村内の珍しいダムをモチーフにした「丸沼ダムカレー」なども提供しています。

また、他に例を見ない取組として、村民が週替わりで料理を提供する「村民キッチン」があり、キノコや山菜を活かした定食や、片品産トマトなどを活かした石窯焼きピザを提供するなど、訪れる毎に違った片品ならではの味を楽しむことができます。

天然温泉を使った足湯があり、尾瀬アヤメ平などの稜線を眺めながらのんびりと浸かれば日々の疲れを癒すことができるとお客様に大好評です。

最近はワンちゃん連れのお客様も増えていることからドッグランを増設したほか、廃校からピアノを移設してストリートピアノとして設置し、冬季は豪雪を活かして雪の滑り台やかまくらを整備するなど、村と運営会社が一致協力して、お客様に喜んでいただけるよう、魅力向上に取り組んでいます。

​​​​道の駅「尾瀬かたしな」空撮

道の駅「尾瀬かたしな」空撮

 

尾瀬名水うどん

▲尾瀬名水うどん​​​​​​

 

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6 むらづくり

近年少子高齢化が社会問題となっていますが、他項でも申し上げたとおり、過疎化が進んでいる片品村にとっても人口減少は大きな課題となっています。観光人口の減少もありますが、今まで村の観光資源は、多くの住民の方の協力により、守り維持することができました。これ以上の人口減少は、今まで当たり前にあった資源の存続が危ぶまれることになります。人口の減少を止めるのは容易なことではありません。

観光資源を持続可能にするためには何が必要か、また、いつまでにどんなことをやらなければならないのかなどを明確にする必要があります。

片品村には魅力ある観光資源が豊富にあります。その資源をもう1度見直し、磨き上げること。1つでは目立たないものでも他のものと結びつければ大きな輝きがあるものに変わることもあると思います。これから生活様式の変化によって来訪者のニーズが更に多様化し、今まで以上に自然環境の多い地域への関心が高まると予想されます。

首都圏から2時間あまりという立地条件を活かして、高地の魅力である高原野菜と観光との連携を促進し、さらにカーボンニュートラルな社会に対応した観光地づくりに取り組んで行きたいと思います。

コロナ禍で大変な時ではありますが、なんとしてもこの難局を乗り越え、まいた種がやがて成長し、実となって、綺麗な花を咲かせられるようアフターコロナを見据え、村一丸となり頑張ります。ぜひ1度、片品村へ遊びに来てください。皆さまのご来村を心よりお待ちしております。