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高知県大川村/何が何でも400人の人口は守る ~『離島を除いて日本最少人口の村』から『まるごと大川』へ~

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年3月28日

大川村風景

▲大川村風景​​​


高知県大川村

3194号(2022年3月28日)大川村長 和田 知士


1 大川村の概要

大川村は四国山地の中央部、高知県の最北端、四国のほぼ中央に位置し、東西15・5㎞、南北9・4㎞、面積は95・27㎢で、北は愛媛県に接している村です。周囲を1、000m級の山々に囲まれ、村の中央を吉野川が貫く形で東西に流れ、約9割は険しい山地と平坦地が極めて少ない山村で、南国土佐と呼ばれる高知県内では比較的低温な地域となります。令和4年2月末時点の人口は368人と、四国地方の中で最も人口が少ない自治体です。

基幹産業としては林業のほかに、50年以上前から続く「大川黒牛」の生産と、平成20年代から取組を開始した高知県のブランド地鶏「土佐はちきん地鶏」の生産を中心とする畜産業が、地域産業の中でも大きなウェイトを占めていますが、近年は新たに村の豊かな自然を資源とする観光振興の取組も拡大しています。

また、「四国の水瓶」早明浦ダムの水源地域にもなっていることから、自然環境の保護・水資源の確保にも努めています。

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2 離島を除いて日本最少人口の村

大川村の人口は、昭和35年の4、114人(国勢調査)をピークに減少の一途をたどり、特に昭和46年の早明浦ダム建設による中心集落の水没、昭和47年に160年余りの創業以来の歴史を持つ白滝鉱山の閉山が決定的な要因となり、昭和60年には751人にまで激減し、全国的にも稀な過疎の小村となりました。その後、村づくりを象徴する数字として掲げた平成元年の人口750人から、平成24年までのわずか四半世紀の間に300人以上が減少し、平成22年の国勢調査において、ついに「離島を除いて日本最少人口の村」となってしまいました。

なかなか歯止めがきかない人口減少は地域の活力低下に直結し、産業の衰退、耕作放棄地や森林の荒廃の拡大、ひいては医療や福祉サービスの低下といった住民の命にかかる問題の深刻化等々のさまざまな負の連鎖につながることが当時大きく危惧されました。また、村の総人口が減少する中、同様に村内の16集落全てで住民の数が減少していたことから、明治22年の市町村制施行以来120年余を経過した今も変わっていない、全16集落のうちのいずれかが今後消滅してしまうかもしれないという、大きな危機感を具体的に持つことにもなりました。それは、かつて早明浦ダム建設による中心集落の水没の際とは、また違う意味での「ふるさとがなくなる」かもしれないもので、地域の努力のもと、地域を守っての人口対策をしていく必要性を強く感じた中で、村民一丸となって何が何でも400人の人口は守ることを念頭に置いた「第5次大川村振興計画」を策定し、平成25年度から「大川村に住んで良かった、住んでみたい」という村づくりをスタートします。取組開始から間もない平成27年の国勢調査では、再び「離島を除いて日本最少人口の村」となってしまいますが、さらに速度を上げて一歩一歩着実に歩みを進めていくこととなります。

​​かつての白滝鉱山のまちのイマ、観光拠点「白滝の里」

▲かつての白滝鉱山のまちのイマ、観光拠点「白滝の里」​

3 「集落活動センター結いの里」の取組~暮らしよい村づくり~

大川村の全16集落は広範囲に点在しているため、住民の数が減少する中で各集落が水の管理や見守り、地域行事の開催など、集落としての機能を今後も単独で維持し続けていくことに課題を抱えていました。そこで、高知県が中山間地域対策として展開を進めていた集落活動センターを、住民主体での地域づくり拠点として導入し、村全体を一つの集落に見立てて課題解決の取組を進めてきました。

そうして平成27年度に開所した「大川村集落活動センター結いの里」は、地元農家の食材を利用した地産地消を目指す学校給食や高齢者等への配食の提供を行う給配食事業、産直・物販や軽食サービスを展開する村のえき事業を中心に展開しており、年々増加していく地域のニーズに比例して、その機能を拡大してきています。例えば、土日祝は地域のお母さん方が地元食材を使用した軽食を提供する「お母さん食堂」が開店するほか、月に1度の週末だけのラーメンの提供、お菓子や軽食メニューといった特産品の開発なども行っています。また、運営や取組に関わるのは地元の方だけではなく、集落支援員や地域おこし協力隊員が各事業の中心メンバーとして活躍いただいているのを筆頭に、移住者を含む村外からの人材を積極的に活用しています。今後は、顕在化している生活用水確保や鳥獣被害対策の問題解決に向けた機能強化を検討していく予定ですが、主目的は住民力の向上であり、住民福祉の向上のための集落活動センターですので、さらなる村民の参加、集客力の強化を期待しています。

お母さん食堂定番メニュー 土佐はちきん地鶏の 親子丼

お母さん食堂定番メニュー 土佐はちきん地鶏の親子丼​

 

4 産業の振興~働きよい村づくり~

近年、最も力を入れてきている産業振興の取組は、吉野川源流域の美しい自然の中で育まれる「土佐はちきん地鶏」と「大川黒牛」の生産・販売を中心とした畜産振興です。

高知県のブランド地鶏である「土佐はちきん地鶏」は、平成17年頃に高知県が独自に交配した土佐九斤と大軍鶏の味を受け継ぐ三元交配で生まれた地鶏です。大川村では村の命運をかけ、平成20年から本格的な生産を開始しました。現在は、その約8割が大川村で徹底した管理のもと大切に育てられています。村内で生産から加工、販売まで一貫して取り扱うことができる体制を整えており、これによる雇用を創出することも目的の一つとして取組を進めています。

「大川黒牛」は、昭和38年、村役場を中心として農業協同組合や一部農家の支援を得て、淡路島の家畜市場で買い付けた「但馬牛」を先祖に持ち、年間約50頭しか出荷されない幻の肉です。肉質はとても柔らかく、上品な脂の旨みときめの細かい霜降り、肉本来の旨さ、ジューシーさ、脂の旨味のバランスが整った風格ある味わいです。

毎年11月3日に開かれる「大川村謝肉祭」は「土佐はちきん地鶏」と「大川黒牛」を堪能できるイベントで、全国から人口の4倍近いお客さんがやって来てにぎわいます。日本酒が飲み放題など、高知ならではの「大川村のおきゃく」を存分に楽しむことができるイベントとなっています。ぜひ一度お越しください。

それ以外では、村内で若い農家が頑張っている花卉栽培(オリエンタルユリなど)といった農業振興の取組や、近隣市町村との連携をとりながら進めている山岳観光を主とした観光振興の取組などが活発化してきています。

​​土佐はちきん地鶏

▲土佐はちきん地鶏​

5 山村留学の推進と青年団活動~たくましい人づくり~

昭和62年の第1期留学生より始まりました「大川村ふるさと留学」こと大川村の山村留学制度は、1年間親元を離れ、異年齢集団で生活を共にして村内の学校へ通学します。1年間の長期留学生活では、自然豊かな山村で生活し都市部では体験できないさまざまな自然体験や学校生活を、そして留学センター(宿舎)での集団生活の中では自分のことは自分でやるという基本的な生活習慣の習得を通じて、子どもの早期からの人格形成に繋がる健全な青少年の育成を目的として実施しています。

また、少人数のために友達の数が少ない地元の子どもたちにも、長期留学生が加わることにより、お互いに交流を深め刺激を受けあい、長所を伸ばし、短所を補うといった影響を与えることも大きな目的の一つでもあります。

このほか、20〜30代のU・Iターン者を中心とした「大川村青年団」は、およそ30名近い若者が在籍し、夏祭りの開催や特産品販売・PRといった地域に根差した事業を主体的に実施しています。事業を通して若者同士の交流の機会になっており、いつの時代でも重要な役割を担ってきた、村になくてはならない団体です。また、村外の団体との交流も積極的に行われています。エネルギー溢れる活動が評価され、2015年度には全国地域青年「実践大賞」を受賞しており、今後も次代を担う若者たちとしての活躍が期待されます。

​​​留学センタ-の部屋の様子

留学センタ-の部屋の様子​​

 

青年団が主催する夏祭り「大川村民祭」

▲青年団が主催する夏祭り「大川村民祭」​​

 

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6 子どもと高齢者は「村の宝」~生きがいある村づくり~

決して大川村だけではないと思いますが、子どもが村民の宝であり、村の宝でもあります。特に人口の少ない本村では、その思いはより一層強く、地域全体で見守っていこうという雰囲気をたしかに感じます。そんな村の次代を担うすべての子どもが健やかに生まれ心豊かに育ち、保護者が子育てに喜びを感じることができる村づくりを目指す取組の一つとして、大川村では昭和の時代から0歳児~未就学児童の無料保育を実施しています。また、地元食材を使用した給食費(保育園(離乳食完了期)、小学校、中学校)の無償化に代表される子育て支援制度を中心に、各種支援制度を充実させており、核家族化、共働き世帯が増加する現代社会の中で、より子育てのしやすい環境をつくりあげていくことに注力をしています。

また、村ではイベントや各方面での取組などさまざまなところで、村の重要な一員として高齢者が活躍しています。生きがい対策の推進では大きな役割を担っている老人クラブ連合会への支援を行っており、高齢者の社会参加では人材センター匠会がさまざまな場面で活躍できるように支援を行っています。高齢者の豊かな知恵と経験、技能は環境の厳しい山村地域である本村では特に、日常の生活の中で助けになることも多く、そういった高齢者が年齢にとらわれることなく、他の世代とともに社会の重要な一員として、生きがいを持って活動的に暮らせる村づくりを進めています。

村の宝物

村の宝物

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7 小さな村g7サミット

「小さな村g7サミット」は、全国を7つのブロックに分け、各地域で人口規模の一番小さな村が集まるサミットです。山梨県丹波山村が当時、各地域で人口が最も少ない村(離島を除く)に呼び掛けたことをきっかけに2016年からスタートしました。小さな村同志が一同に集まり、情報を交換し、刺激し合うことで、互いの価値を高めていくと同時に新たな視点から村を見つめ直すことを目的として、初回の山梨県丹波山村から、第2回2017年福島県桧枝岐村、第3回2018年北海道音威子府村、第4回2019年和歌山県北山村と開催してきています。新型コロナウイルス感染症の影響により2年間延期となっている、次回の第5回岡山県新庄村での開催は2022年を予定しており、その後は大川村や熊本県五木村での開催が検討されています。ほかにも、2019年東京会議や東京大田区を含めた2021年+1サミットの開催、東京アンテナショップの出店、各種協働事業の展開により、小さな村が持つ可能性を広く発信することにもつながっています。

8 『まるごと大川』へ

令和4年2月末現在、大川村の人口は368人となっています。人口減少そのものに歯止めはかかっておらず、400人の人口の維持も叶ってはいませんが、これまで述べてきた取組により、H27年度からR1年度のうち3箇年において人口の社会増が実現するなどの多大な成果が生まれています。なによりも、直近の令和2年国勢調査において「離島を除いて日本最少人口の村」からの脱却を果たすことができたのは、大川村にとって大変喜ばしいことでありました。

令和3年度からは新たに、主要地場産品(土佐はちきん地鶏、大川黒牛)の課題となっていた商品力の弱点を、ブランド化により補う取組を新たにスタートさせました。これにより、販売上の課題が克服され、高付加価値化の達成を見込むものです。集落活動センターを中心に住民主体のブランディング事業を推進するほか、土佐はちきん地鶏を使用した新商品の開発も進めています。ブランドイメージを活用した営業活動の強化や新たな商品ラインナップを用いた販路拡大を実現し、地場産品の売り上げや商品イメージにプラスの影響を与えることを大いに期待しています。

これからもすべての村民が一丸となって安心して暮らせる村づくりを進め、村を取り巻く様々な変化の中で、400人の人口と生活を守り、住みよい「まるごと大川」村を目指していきます。

まるごと大川

​▲まるごと大川​