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宮崎県高原町/事業承継でふるさと高原町を次世代につなぐ

印刷用ページを表示する 掲載日:2021年11月1日

高千穂峰と裾野に広がる高原町

▲高千穂峰と裾野に広がる高原町


宮崎県高原町

3179号(2021年11月1日)高原町 産業創生課 財団設立準備室 室長 中武 利仁


1 高原町の概要

高原町は、宮崎県の西南、鹿児島県との境に接しており、人口は約8,500人、役場を中心に東西18㎞、南北10㎞に広がり、町の西側には霧島連山の主峰「高千穂峰」がそびえ立ちます。町の面積は85・39㎢、およそ50%を山林原野が占めています。また、霧島山系からの豊富な湧水が大小河川として町内を流れていることから、水と緑に富んだ自然豊かな町としても知られています。

町の主幹産業は農業であり、中でも畜産業の割合が高く、農業粗生産額の約8割は畜産で占められています。とりわけ、肉用牛の生産が盛んで、宮崎牛の一大産地となっており、その肉質の良さは県内外でも高く評価されています。

 

 

2 神話のふるさと

ニニギノミコトが高千穂峰に降り立った「天孫降臨伝説」の故郷として知られ、そのご令孫で我が国の初代天皇・神武天皇は高原町で生誕されたと伝えられており、町内には高千穂峰山頂の天逆鉾をはじめ、数多くの神武天皇にまつわる伝承地や由緒正しき神社があります。

毎年12月の第1日土曜日に狭野神楽、第2土曜日には祓川神楽が夜を徹して行われ、「高原の神舞」として国の重要無形民俗文化財に指定されています。

また、高原町の読みは、神々の住む「高天原」に由来すると伝えらえれています。

天逆鉾

▲天逆鉾

 

祓川神楽

▲祓川神楽

 

 

3 畜産のまち

高原町は、霧島連山の麓に広がる恵まれた自然環境を有しており、農業、特に畜産業を基幹産業とした「畜産のまち」として発展してきました。

特に肉用牛については、全国和牛能力共進会(通称和牛のオリンピック)でも史上初3大会連続内閣総理大臣賞を成し遂げた宮崎牛の一大生産地でもあります。近年では、若い後継者たちの活躍も目立つようになり、飼養頭数は微増傾向にあります。

宮崎牛

​​▲宮崎牛

 

4 霧島錦江湾国立公園と豊かな観光資源

高原町を象徴する存在として高千穂峰と並ぶのが御池です。同所は日本で最初の国立公園に指定された霧島錦江湾国立公園の一角にある湖で、約4,600年前に起こった大噴火の噴火口に水が溜まって形成されました。湖直径約1㎞、周囲4㎞、水深は103mあり、わが国の火口湖では最も深いといわれています。湖にはワカサギ、ニジマス、鯉などの18種類以上の魚類をはじめとする、さまざまな水棲生物が棲息しています。また、周囲の原生林は昭和47年に国設の野鳥の森に指定され、ヤイロチョウやオオルリ、サンコウチョウなど、これまでに150種類以上の鳥類が確認されています。

また、高原町は、天然温泉に恵まれた地域でもあり、「奥霧島温泉郷」という名称で親しまれています。古くから湯治場として栄え、現在でも4つの温泉施設が営業しており、地域の人々や多くの観光客で賑わっています。

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5 自然と調和した観光

平成27年度から開始した国立公園整備事業により御池周辺の環境整備が行われており、御池皇子港の観光関連施設や御池キャンプ村の観光客は増加傾向にあります。令和3年10月現在、御池皇子港は進入路の改修工事中ではあるものの、道幅が広くなり、休日になると、足漕ぎボートやカヤック、サップを楽しむ観光客で賑わい始めています。

また、神武天皇がお生まれになった地とされる「皇子原神社」を中心に整備された皇子原公園には、古墳群や遊歩道、テニスコート、釣り堀、ゴーカートがありスポーツやアウトドアを満喫できるとともに、園内にはコテージの完備もされており、広々としたテントサイトも人気です。公園内には四季折々の花が咲き誇り、春はソメイヨシノ、八重桜、秋は約300万本のヒガンバナを楽しむことができます。

令和2年度からは、皇子原公園ウッドパークプロジェクトを掲げ、カーボンニュートラルな公園を目指し、子どもたちが自然や木とふれあえる公園づくりを、町民、企業、学校、行政が連携して行っています。令和3年5月には、室内木育遊具施設「おうじばるの木」をオープンし、小さな子ども連れのご家族に好評です。今年度中には、店舗に県産材の木を利用したカフェや、全天候型の大型木製遊具も完成予定であり、町内観光の柱となることが期待されます。

御池皇子港

▲御池皇子港

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6 宮崎フリーウェイ工業団地

高原町は九州縦貫自動車道宮崎線高原インターチェンジを有し、宮崎空港、鹿児島空港ともに近距離にあるなど交通アクセスに恵まれていることから、企業立地の有力地として注目されてきました。高原インターチェンジから約1・5㎞の距離に位置する宮崎フリーウェイ工業団地は、南九州のほぼ中心に位置する交通アクセスの良さに加えて、豊かな自然環境や人材の豊富さなど、高原町の持つ資源を最大に活用した総面積54 haの大規模な工業団地です。

現在は、木材関連企業、畜産飼料製造業、農産加工業、運送業、自動車部品製造業などの地域性の高い企業が進出しております。

 

 

7 高原町事業承継の取組

平成30年度に高原町商工会が行った調査によると、回答のあった230事業者中47事業者(20%)しか後継者がいない現状が浮き彫りとなりました。要因としましては、少子化や、親族内事業承継の減少、従業員の高齢化などがあげられます。実際に高原町商工会では、平成29年度から令和元年度にかけて会員231事業者中19社が廃業し、非常に深刻な状況にあります。また、ネット通販や近隣のまちにある大規模集合商業施設が町民にとって身近になる一方、町内の商店はビジネスモデルの老朽化により、現行のままで経営を続けることは年々厳しい状況になりつつあります。しかしながら、中小企業は町の経済や生活を支える大切な存在であり、これまで先人たちから引き継いできた私たちのふるさと高原町を後世に残していくためには、後継者を確保し事業をつないでいかなければなりません。

そこで、本町は令和2年度から、人口減少対策と安定した雇用の創出のために、日本初の市町村単独の事業承継マッチングサイト「relay the local × 高原町」を開始しました。

「relay the local × 高原町」の流れを簡単に説明しますと、

①後継者のいない町内事業者が、高原町役場に相談

②マッチングサイト運営委託事業者と後継者のいない町内事業者が事業承継の条件等を整理

③事業承継マッチングサイト「relay the local × 高原町」に掲載

④事業を引き継ぎたい人が事業承継マッチングサイト「relay the local × 高原町」に問い合わせ

⑤マッチングサイト運営委託事業者と本町職員が事業を引き継ぎたい人と面談

⑥後継者のいない町内事業者と、事業を引き継ぎたい人が面談

⑦後継者のいない町内事業者と、事業を引き継ぎたい人が条件面の整理

⑧後継者のいない町内事業者と、事業を引き継ぎたい人の双方から合意が得られれば、譲渡契約を締結

※必要に応じて宮崎県事業引継ぎ支援センターが法的、資金的な手続きを支援

⑨事業を引き継ぎたい人が必要であれば、地域おこし協力隊制度の案内

といった流れです。

令和3年10月現在、4件の後継者のいない町内の事業者が「relay the local × 高原町」に掲載され、うち2件はマッチングが成立し、譲渡契約を結び、年度内には事業を開始する予定です。まだ引き継ぎ手が見つからない町内事業者においても、複数の問い合わせが来ており、現在、面談や交渉を進めております。事業承継の契約に至った2名の引き継ぎ手のうち、1名は千葉県からのJターンの方で、もう1名は町内の方でした。いずれも意欲の旺盛な方で、今後の事業展開がとても楽しみです。

課題としましては、後継者のいない町内の事業者の利用がまだまだ少ないことです。原因としましては、店舗と住宅が一体型であること、事業主が高齢となり事業を承継しようする判断が難しくなっていること、事業承継マッチングサイト「relay the local × 高原町」のサービスを知らないことなどが推測されます。対策として、後継者のいない町内の事業者を探すときには、Web媒体ではなく、紙媒体を使い広報誌や新聞折込で募集しています。また、今後は町内での相談会等を開くなど、気軽に相談しやすい機会を積極的に設けていこうと思います。

先行事例が少なく、試行錯誤を繰り返しながら事業を推進しておりますが、丁寧に課題をクリアしながら、より地域に貢献できる事業になるよう磨き上げて行こうと思います。

​​​​relay the local × 高原町

 

relay the local × 高原町