▲東郷湖の景観
鳥取県湯梨浜町
3161号(2021年5月31日)湯梨浜町長 宮脇 正道
湯梨浜町は、平成16年10月に羽合町・泊村・東郷町の3町村が合併してできた町で、令和3年4月15日現在、人口は16、705人、世帯数は6、402世帯の町です。
鳥取県のほぼ中央に位置し、面積は77・94㎢。アクセスは、羽田空港から鳥取空港経由で約2時間、大阪からは特急列車や自動車で約3時間です。
町名は、「東郷湖底から湧き出る温泉、日本一の二十世紀梨の産地、日本海に広がる白砂青松の砂浜と漁港」と、町の特色を表したもので、全国から公募し、町民のはがき投票を経て決定されました。
町の中央部には、古来、鶴の池と称される一周約12㎞の「東郷湖」があり、その美しい景観は山陰八景に数えられ、「美しい日本のむら景観百選」にも選ばれています。
湖周には、「はわい温泉」、「東郷温泉」の二つの温泉、国内最大級の中国庭園「燕趙園」、伯耆国の一ノ宮である「倭文神社」、スポーツアリーナもある県立都市公園「東郷湖羽合臨海公園(面積約65 ha)」に加えて、七福神の名を冠した足湯もあり、週末や好天の日は、テニス、グラウンド・ゴルフ、カヌーなどの各種スポーツの愛好者、ウォーキング、サイクリング、釣りを楽しむ人、ご家族連れなど、多くの人で賑わいます。
また、縄文、弥生、古墳時代の遺跡も多く、国の重要文化財である形象埴輪のほか、山陰地方最大級の前方後円墳、平安時代中期に一ノ宮の経塚に埋められた国宝の「銅経筒」、鎌倉時代中期の「伯耆国河村郡東郷荘下地中分絵図」、国の重要文化財の住宅と国の名勝である庭園を有する尾崎家、近時の研究により羽柴秀吉が中国攻めの際布陣したとされる十万寺城跡など、いたるところで歴史や文化に出会えるまちでもあります。
さらに、毎年開催するグラウンド・ゴルフ発祥地大会、ハワイアンフェスティバル、ベテラン卓球大会などの全国大会をはじめ、ドラゴンカヌー大会、水郷祭など多くのイベントがあり、活気のある町です。
グラウンド・ゴルフは子どもから高齢者まで多世代が楽しめる生涯スポーツとして、わが町(合併前の泊村)で誕生し、国内には300万人以上の愛好者がおられます。町内の専用コース「潮風の丘とまり」では、1年間に大小200回以上の大会が催され、毎年開催のグラウンド・ゴルフ発祥地大会(定員768人)は、毎回定員を超える応募があります。
また、グラウンド・ゴルフは仲間づくりや健康づくりにも適したスポーツであり、「グラウンド・ゴルフで友情と健康の輪を世界に」を合言葉に、クラウドファンディングや国内愛好者から用具の寄付を募り、海外に提供等をしながら、普及と交流関係の構築に努めています。平成27年からは毎年国際大会を開催し、令和元年度大会(昨年は中止)は、12か国168人の外国人に144人の日本人を加えた312人が参加しました。
この間、海外へのトップセールスや町民等の海外大会への参加交流も進め、一昨年、日本グラウンド・ゴルフ協会のご尽力により、国際グラウンド・ゴルフ連盟が設立されました。
現在、来年に延期された「ワールドマスターズゲームズ2021関西」の開催に向け準備を進めています。この大会は、30歳以上であれば誰でも参加可能で、グラウンド・ゴルフは、国内外合わせて672人が定員です。グラウンド・ゴルフを通じて、住民と国内外の参加者との交流が相互のスポーツツーリズムという形で定着することを願っています。
ウォーキングでも海外との交流を進めています。平成23年から、町の総合的なプロジェクト「天女のふる里づくり」の柱の一つにウォーキングリゾート構想を掲げ、湖周のトイレ整備、エイドステーションの整備支援のほか、「ゆりはま天女ウオーク」などの大会を開催。平成25年には、東郷湖周辺のウォーキングコースが、全日本ノルディック・ウォーク連盟の公認コースの全国第一号に認定されました。
これと並行して、韓国の済州オルレとの連携を図り、昨年11月、「友情の道」協定を締結しました。お互いが紹介し合うことにより、人の流れが進むと思っています。
なお、平成30年からは、大手総研の呼びかけに応じ『めぐる』、『たべる』、『つかる』がコンセプトの「ONSEN・ガストロノミーウォーキング」を開催。初回は、リフレッシュ部門で1位に、2回目の令和元年(昨年はコロナ禍で中止)は306人が参加し、全国26か所で開催された大会の中から、最優秀賞に選ばれました。現状では海外との交流には至っていませんが、近隣の各産業従事者の皆さんと魅力ある大会を実施することは有意義なことであり、この大会を一層磨き上げたいと思っています。
▲グラウンド・ゴルフ国際大会YURIHAMAに参加した上海チーム
▲羽衣天女モニュメント
おおらかな「悠々」、遊びごころの「遊々」、やさしい「優々」といった、湯梨浜町の自然や文化、人間性から着想した言葉を使い、平成28年から町の各分野で活躍する女性にスポットを当て、ポスターや冊子、動画等を制作。首都圏等で情報発信することにより、町の産業を強くし、ひいては女性の活躍する社会づくりやワークライフバランスの確立に対する町民の皆さんの関心を高めようと「ゆうゆう、ゆりはま」事業に取り組んでいます。
東京や町内での発表会等を通じ、連帯感が生まれ、制作後各事業所に配布したポスターや冊子も付加価値の創出に役立っており、販路拡大や新たな商品開発も進んでいます。しかし、後継者不足の中、皆さんの情熱や技術をどのように次世代につなぐかという課題があり、本年度は二十世紀梨に限らず、当町が誇るシャインマスカットやピオーネなどのブドウ、幻のスイカと呼ばれる「とまり美人」、「とっておき」などのイチゴ、クレオパトラメロンなどへの支援も強化します。
▲スイカ「とまり美人」を手がけるゆうゆうレディ
▲地域の振興にがんばるやさしい「鬼嫁」たち
平成27年から多世代が生涯にわたって活躍し、安心して暮らせる町の実現に取り組みました。平成28年以降は基本計画の策定、建設工事を進めつつ、移住の促進、生涯活躍のまちの拠点運営などを担う「湯梨浜まちづくり株式会社」を設立するなど、生涯活躍のまちづくりの体制を整えました。
平成30年に総合相談センター「どれみ」とゆりはま暮らしお試し住宅「まつざき屋」、多世代交流センター「ゆるりん館」を松崎地区に整備。「どれみ」は、移住・定住や空き家対策、健康管理等、住民の各種相談の場として、年間6千人ほどが利用し、「まつざき屋」は、山あいのお試し住宅「もりた屋」とは異なり、移住検討者が町中での生活を体験できる施設です。「ゆるりん館」は閉鎖されたスーパーマーケットを改修し、ふれあいホール、多目的ホール、買い物広場、足湯などを配備し、通常の食事の提供のほか、地域の子ども食堂「みんなの食堂ゆるりん」が定期開催されるなど、多世代・多地域の交流を生み出しています。
松崎地区の対岸となる東郷湖畔に生涯活躍のまちの象徴的拠点「レークサイド・ヴィレッジゆりはま」があります。これは、ホテル跡の民有地(4 ha)を活用し、一部温泉付きの一般分譲宅地、町営住宅、サービス付き高齢者住宅、福祉施設、商業施設を整備しようとするものです。平成29年に基本計画を策定、令和元年に一般分譲地67区画の販売受付を開始。令和2年に造成が完了し、現在、一般分譲宅地67区画中54区画が販売済みで、4戸の入居、3戸が建設中です。一部福祉施設も稼働しています。
このことを進めるに当たっては、「都市部からお年寄りを招き、町の負担が増えるだけでないか」といった意見がありましたが、分譲宅地の購入者は、県外4、県内他市町39、町内11となっています。さらに、既に稼働している福祉施設では移動販売を実施し、買い物の不自由な地域の高齢者等に貢献しているほか、この開発区域の向かいに3歳未満児を預かる民間の小規模こども園が開園するという効果もありました。
いよいよ今年から高齢者・障がい者福祉サービス施設の建設、PFI方式による22戸の町営住宅の設計・建築工事が始まります。この開発は、基本計画までは町がつくり、事業の実施は、13の民間企業が株式会社を設立して実施するレアケースであり、力を合わせて、誰もが住みやすく、世代を超えて循環するまちの具現化を図ります。
生涯活躍のまちを担う人材を確保するため、移住・定住にも取り組んでいます。平成30年から湯梨浜まちづくり株式会社に移住コーディネーターを配置し、移住検討者一人一人に寄り添ったきめ細かな相談対応を実施し、10組18人の移住に結びつきました。
併せて、移住定住者への支援制度の充実もしました。県外からの移住者が住宅を取得する際に最大200万円の補助、町内外を問わず若者夫婦・子育て世代の住宅取得に50万円(過疎地域、中山間地域は60万円)補助のうち、新婚夫婦の住宅取得について、国が支援制度を創設したのに伴い、それを単町事業に上乗せする形で115万円の補助を行っています。このほか、移住者の家賃支援や運転免許取得、ペーパードライバー講習受講に対する支援など、移住者がスムーズに町での生活に移行できる支援制度も設けています。
▲「レークサイド・ヴィレッジゆりはま」完成予想図
令和2年から、町あるいは町民の皆さんとの関わりを深め、楽しんだり、能力を発揮したり、自らの望みをかなえたりしながら、移住・定住や地域活動の担い手などでご活躍をいただける人を醸成するため、「ゆりはまフェロー」の認定制度を設けました。フェローになるには、Facebook「ゆりはまフェローズ」に「いいね!」をしていただくだけです。「ゆりはまフェローズ」では、地域おこし協力隊員が町の魅力やイベント、日々の状況などを発信し、県外者にはお試し住宅利用料金の割引きの特典などがあります。新型コロナウイルス感染症流行のため、首都圏等での活動は大きな制約を受けましたが、現在の会員数は466人(4月19日現在)です。セミナー参加者の中から実際に町を訪れる人もあるなど、効果が表れ始めています。3月25日、東京の緊急事態宣言解除直後に、大手町で町写真展や物産展に合わせる形でセミナーを開催できたことは貴重な機会でした。本年度は、アフターコロナに向け、オンラインを含むセミナーの充実、現地ツアーやイベント・情報提供の強化による交流促進を図り、更なる広がりと深化を目指します。
これに加え、本年度からワーケーションの取組を始めます。町内の複数の旅館と町営国民宿舎(全国最初の国民宿舎)と二つのお試し住宅を当面の受け皿に、PR、施設整備支援等を行い、タッグを組んで実績を積みたいと考えています。
▲都市圏でのセミナーの様子(令和元年10月)
第1期湯梨浜町まち・ひと・しごと創生総合戦略(平成27年~令和元年)の県外からのIJUターン者数は、目標850人に対し、実績は909人と目標を超え、合計特殊出生率も、この7年間のうち4年は2を超えています。しかしながら、人口が社会増になることはあっても自然減分を補うには至らず、ここ10年間で対前年比の減少が小さかったのは、平成23年の▲38人、平成26年の▲47人と平成29年の▲49人です。
今後とも重点分野として取り組んできた子育て支援や教育、産業振興等に加え、昨年から実施のSIBを活用した自治体連携による健康づくりに力を注ぐ一方で、町民の皆さんとともに、各分野の施策に全世代、全員活躍のためのさまざまな「愛」を織り込み、総合計画の目標達成を目指します。