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愛媛県内子町/エコロジータウン内子をめざして

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年4月6日

小田川を会場に開催される凧合戦(5月5日)

▲小田川を会場に開催される凧合戦(5月5日)


愛媛県内子町

3115号(2020年04月06日)  内子町長 稲本 隆壽​


内子町の概要

内子町は、県都松山市から南南西へ約40kmの位置にある人口16、400人ほどの町です。2005年に、旧内子町、旧五十崎町、旧小田町の三町が合併し、現在の内子町となりました。面積は299・43㎢、町域の8割近くを山林が占める典型的な中山間地の町です。気候は、若干寒暖の差がある内陸性気候ですが、平均して約15度と温暖であり、年間降水量は約1、500~1、600mmと、耕作に適した地域でもあります。柿をはじめ、栗、ぶどう、梨、桃などの産地で、野菜も葉ものから根菜まで多様な品種が生産されています。

小田川、中山川、麓川の3つの河川が流入する内子地区は、交通の要衝となって発展してきました。江戸から明治期にかけてハゼの木から採取される木蝋の生産地として栄え、重要伝統的建造物群保存地区に選定された八日市・護国地区の町並みは、往時の面影を今に伝えています。また、内子座など4件の建造物が重要文化財に指定されている県内有数の観光地です。全国に先駆けて開設した道の駅「内子フレッシュパークからり」は、全国6か所のモデル道の駅に選ばれており、年間80万人の利用があります。

五十崎地区には、日本棚田百選に選ばれた「泉谷の棚田」があり、豊かな農村景観が広がっています。伝統的な手漉き和紙の産地として知られ、その和紙を使用した「いかざき大凧合戦」は400年の歴史を持ち、日本三大凧合戦の一つに数えられています。

小田地区は、小田川の源流域に位置し、面積の約88%を山林が占める県内有数の林業地帯です。標高1、300m級の四国山系にある小田深山国有林は景勝地として知られ、紅葉の時期には多くの人で賑わいます。四国最大級のスキー場(SOL–FAオダスキーゲレンデ)もこの地にあります。

町の主要産業は農業ですが、近年は観光産業の占める割合も増えています。合併時に20、000人を超えていた人口は、その後の10年間で1割以上減少し、高齢化率は平成31年4月1日現在で39・1%に達しています。

重要伝統的保存地区に選定された八日市・護国の町並み

▲重要伝統的保存地区に選定された八日市・護国の町並み     

キラリと光るエコロジータウン内子

人口減少、高齢化といった全国共通の課題に直面している内子町ではありますが、「キラリと光るエコロジータウン内子」というキャッチフレーズのもと、まちづくりを進めています。

最初にこの“エコロジータウン”というフレーズが使われたのは1993年に策定された「内子町新総合計画(旧内子町)」でした。これは、1970年代より展開してきた町並み保存運動を核とした歴史的環境保全運動が、旧内子町の個性的なまちづくりを展開し、観光や地域産業に寄与してきたことや、当時の持続可能な開発の実現に向けた世界的な動きをもとに誕生したものです。小さな地方自治体がエコロジータウンを掲げ、生態系に配慮し、環境保全に軸足をおいた政策を展開し始めたことは、先駆的であったといえます。以来、現在に至るまで、まちづくりの基本的方針として使用し続けています。

内子町がエコロジータウンとして展開してきた事業には、環境保全型農業の推進、内子の森づくり、近自然工法の推進、といったことがあげられ、町並み保存運動とともに内子町がめざす将来像「町並み、村並み、山並みが美しい 持続的に発展するまち」として集約されています。こうした事業とともに、さらに環境に配慮したまちづくりをしようと環境基本計画を策定し、実践するとともに、バイオマスタウン構想をまとめ、バイオマス資源を中心とした再生可能エネルギーの導入にも取り組んでいます。

内子の森づくり

▲内子の森づくり

エコロジーな人づくり「エコ見回り隊」

内子町環境基本計画では、自然・暮らし・環境教育を3本柱に政策を展開しています。とりわけ環境教育の分野においては、“決め手は担い手”の方針のもと、人づくりに重きを置いて取り組んでいます。

環境基本計画など町が取り組む環境政策の各種事業の推進状況やエコオフィスづくり(省エネや5Rの推進)を点検するため、内子町環境マネジメントシステムを構築し、町民(大人)らで組織する目標設定・監査委員会を組織していますが、加えて、子ども達による「エコ見回り隊」を結成し、取組の一部を点検してもらっています。これはもともと町内のある保育園で取り組んでいた独自の事業で、年長児が園の中の電気の消し忘れや水道の閉め忘れ、紙ごみの分別について、見回り点検を行っていたことに端を発したものです。現在は他の保育園や幼稚園、小学校でも結成され、実践されています。点検を通じて園児・児童自らが自分自身の生活を見直すきっかけになるとともに、さらに家庭生活の中でも電気や水、紙ごみに気を付けることで、大人への波及効果も期待できます。最近は「大人のエコ見回り隊」を発足し、町の取組を知ってもらい、家庭で環境配慮に取り組んでもらうきっかけづくりとして取り組んでいるほか、子ども達のエコ見回り実施場所を、公共施設から民間事業所等へ広げ、取組の拡大を図っています。

保育園児によるエコ見回り隊

▲保育園児によるエコ見回り隊

バイオマス利活用

内子町におけるバイオマスの利活用は、再生可能エネルギーの導入に向けた各種調査事業を経て、内子町バイオマスタウン構想を策定し、林業の六次化を含めた事業の中で推進されています。

(1)木質バイオマス

町の面積の約8割を占める山林の木質バイオマスに着目した木質ペレットの利活用については、当初、熱利用のみであったものが発電事業へと展開してきました。

木質ペレットは、町内で発生する製材端材や林地残材などを原料に製造し、学校や庁舎など公共施設等に導入したボイラーやストーブでの利用を進めるとともに、温浴施設や温水プール、農業用ハウスなどで活用する計画で積極的に導入が進められてきました。使用施設の増加に伴い木質ペレットの需要も高まり、2010年度には原木市場に隣接した町有地に、原木換算で年間約5、000tを使用し、2、500tのペレットを製造できる設備が民間事業者により建設されました。しかしながら、ほとんどの施設での需要が冬季に偏り、また、化石燃料の価格変動に伴う需要の変動もあって、需要が安定しないという課題も抱えていました。

このような中、2015年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)に木質バイオマスの小規模発電の枠が設けられ、従来の大規模発電設備に対して高い単価で電力買取価格が設定されたことにより、採算の面からも木質ペレットによる発電所建設が可能となり、課題であったペレット需要の増加と安定化が図られることになりました。これにより、2018年度に民間の合同会社による木質ペレットを燃料とした発電所(年間約811万kwhを発電 ※一般家庭2、500世帯分)が竣工、ペレット設備も年間約8、000tが製造できる設備に改修されることとなりました。

ペレット8、000tの製造に要する木材は原木換算で約16、000t、1tを体積1・2㎥で換算した場合、19、200㎥となります。これは、内子町の年間原木生産量46、000㎥(市場や直接取引分を含む)の約4割を占めることとなります。当初のペレット製造時から間伐材は原料として利用していましたが、購入量も少なく単価も1㎥4、500円と低調でした。しかし、この発電事業を通じて間伐材の利用も増加し、市場買取で1㎥7、500円に上昇するほか、市場にかけられない低質材も1t7、000円で取引されるようになりました。

こうした木質バイオマス事業において、間伐材等の安定した需要と価格の上昇により、森林所有者の整備意欲の向上が図られると同時に、森林整備に係る事業量の増加に伴い、林業事業者の経営状況改善が期待されます。さらに、全体の出材量が増加することにより、林業関連産業全般への好影響も期待されます。また、森林環境の向上はもとより、地域内での持続可能なエネルギーの循環により、地域経済全体での活性化にも効果が期待できます。

折り重なる山並みの風景

▲折り重なる山並みの風景​

バイオマス発電所

▲町内の未利用間伐材をペレット燃料にして発電する内子バイオマス発電所

(2)廃食油の利活用

バイオマス利活用の一つには、廃食油を原料としたBDF利用があります。BDFは多くが軽油の代替え燃料として車両で利用されるケースが多く見られましたが、現在、内子町ではボイラーでの利用が進められています。そもそも内子町においても車両での利用が推進されていましたが、エンジン性能の変遷とともにBDF100%で使用できる車両が減少し、利用方法を模索していた時にボイラーでの利用が見出されたものです。

廃食油を利活用する際、その収集方法が課題となりますが、内子町においてはNPO法人が、その収集から製造、販売までを行っています。このNPO法人には、2003年から内子町が取り組んでいる生ごみの分別収集と堆肥利用において、生ごみから出る悪臭対策のため、愛媛県が開発した「えひめAI–1」という環境浄化微生物を製造し、町内の家庭へ配布する役割を担っていただきました。廃食油の回収において、この「えひめAI–1」を配布するルートを利用することで、一般家庭からの廃食油回収をスムーズに進めることができました。

こうしてできあがったBDFを、公共施設のボイラーの燃料として利用することで、町内での廃棄物リサイクルを進めるとともに、再生可能エネルギーの導入にもつなげています。​

竹堆肥づくりの様子

▲NPO法人環境NPOサン・ラブの活動風景-環境子ども会議における竹堆肥づくり

さらなるエコロジータウンをめざして

“エコロジータウン”のキャッチフレーズとともに進めてきた内子町のまちづくりが四半世紀を経過した今、その言葉を見直すと、そこには自然生態系のつながりが重要であることが見えてきます。内子町はこれまで小田深山を中心とした山並み保全事業をはじめ、身近な地域での自然観察会やビオトープの整備などに取り組んできました。こうした活動を通じ、内子町には豊かな自然環境が残っている反面、高齢化や人口減少に伴う土地利用の変化等により、自然環境にも変化が出ていることに気づきます。私たちを取り巻く自然の変化に気づくことで、私たちの進む方向が見えてきます。

内子町はちょうど今、総合計画後期計画の策定中であり、環境基本計画もまた後期計画に向け見直し作業の真っただ中です(2020年1月現在)。気候変動によるこれまでに経験したことのないような豪雨や気温の上昇、それに伴う災害や傷病といった社会的不安要素が現実社会に横たわり、豊かな生活の代償ともいえるプラスチックごみや温室効果ガス排出量の増加が深刻な中、世界をあげてSDGsの達成に向かった取組を進め、次世代につなぐことができる持続可能な社会づくりが今こそ求められており、内子町もまた、地域が主役となって住み続けることのできる地域づくりに臨まなければならないときです。エコロジータウンをつくりあげる要素は様々にありますが、それぞれの計画策定を好機に一つひとつのつながりを丁寧に見つめ、ほぐし合い、結び付けながら、次世代に胸のはれる町“エコロジータウン内子”をめざしていきます。

川の生き物調べ-自然観察会の一風景

▲川の生き物調べ-自然観察会の一風景