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三重県大紀町/大紀町の体験型観光事業と特産品

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年3月2日

 

SUPクルージング体験

▲SUPクルージング体験


三重県大紀町

3111号(2020年3月2日) 大紀町長 谷口 友見


大紀町の概要

大紀町は三重県の中南部に位置し、南部が海岸に面するほかは、東西北部は他の4町に隣接しています。東西約24・8km、南北約26・3kmで、総面積233・32㎢のうち約91%を山林が占めています。地形は全般に急峻で、町内を流れる一級河川の宮川、大内山川、藤川沿いに民家と耕地が散在する農山村部と、僅かな土地に民家が集中する海岸部から成る典型的な農山漁村地域です。平成17年2月14日に「旧大宮町」「旧紀勢町」「旧大内山村」の2町1村が合併し、海と山の幸に恵まれた、美しい自然に囲まれた風光明媚な地で、四季折々の彩りが楽しめる町になりました。

また、世界遺産登録されている熊野古道「ツヅラト峠」をはじめ、今までそれぞれの地域が長い時間をかけて培ってきた伝統文化・気風、風習などは、古来より脈々と受け継がれています。

比較的温暖な気候ではありますが、降水量は多めで、また、山間部と海岸部では地勢による違いがみられます。特に梅雨時期や台風シーズン、秋雨時期に多量の降水量があり、停滞前線等の影響を受けやすい地域と言えます。

人口は令和元年11月末現在で8、367人。毎年約1%ずつ減少しており、少子高齢化に伴う年少人口の減少と老齢人口の増加が、人口全体の減少と相まって、生産年齢人口も年々減少しており、次世代を担う人材の確保と育成が当町の施策として急務となっています。

世界遺産熊野古道ツヅラト峠

▲​世界遺産熊野古道ツヅラト峠

大紀町商工会の取組

地域資源を活用した特産品開発と体験型観光を切り口にした新たな農山漁村体験型観光事業の構築を目指し、平成25年に大紀町商工会の下部組織として大紀町地域活性化協議会を設立しました。

翌年の平成26年度からは、大紀町の「海・山・川」の恵みを活かした地域産品を「大紀ブランド」として認定する事業を開始し、ブランドロゴシールを貼付することで、商品に付加価値をつけ、また大紀町の統一ブランドイメージを与えるよう実践しています。キャッチフレーズは「海も」「山も」「川も」で、自然の恵みであることを強調しています。三重県内の大型商業施設や都市部で開催される物産展へも積極的に出展し、消費者の生の声を直接聞くことにより、生産者の自信や、今後の商品開発への意欲向上と販路拡大による所得向上に繋がっていくものと期待しています。

体験プログラムの充実

大紀町地域活性化協議会は、地域の特性を活かしたオリジナルの自然体験プログラムの開発にも熱心に力を注ぎ、特に女性に人気のある「美・健康・癒し」をテーマとした美容ツーリズム「海ヨガ」「山ヨガ」「SUPヨガ」やヘルスツーリズムを本格的に商品化し、地域外からの交流人口の増加を目指しています。 他にも、農林漁業者をはじめ、農協、森林組合、漁協、地域おこしグループなどと連携し、農林漁業体験、自然体験、暮らし文化体験、食育体験など、実に60種類以上の体験プログラムを開発し受け入れを行っています。

山ヨガ体験

▲山ヨガ体験

体験民宿の展開

大紀町地域活性化協議会の組織には、体験施設、体験指導者などで構成された「体験部会」、観光事業者、観光施設などで構成された「観光部会」、そして体験民宿などを中心に構成された「民泊部会」などがあり、農山漁村体験型観光事業をビジネスとして実施できる受入体制を整備しています。

そんな中、体験プログラムの開発や各団体と連携した受入態勢づくりは次々と充実する一方で、宿泊施設が少なく、日帰りの体験メニューしか実施できないことで、町内での消費も伸びずなかなか収益に結びつかないという課題がありました。

平成28年4月に農林漁業体験民宿開業に関する規制が緩和されると、協議会が開業に向けてのサポートを行うことで、新たに開業する体験民宿が徐々に増え始め、協議会が業者間の連携を図り、ある程度まとまった人数を受け入れることが可能となり、この年度に海外から大学生の団体を4回、計130名を受け入れることができ、本格的なビジネスとしての展開の可能性が見えてきたように感じました。

その後も更に民泊開業は積極的に促進し、現時点で19軒が宿泊の受入態勢を整えており、看板・パンフレット・指差しツール等の多言語表示なども行い、海外からの顧客の需要が順調に高まり、インバウンド事業としての成功の役割を十分に果たしているところです。

これからも地域固有の伝統文化や郷土料理、人々の暮らしなどを体験できるメニューの効果的なプロモーションを行い、体験民宿の質をブラッシュアップして「食」「体験」メニューを充実し、新しい産業の一つとして目標である国内の修学旅行や教育旅行の誘致を実現していただきたいです。

民泊体験風景

民泊風景

▲民泊体験風景

地場産業の活性化

体験メニューで地域おこしが展開される中、昔から続く地域特有の海・山・川の産業が継承されており、体験メニューの中にも数多く組み込まれています。

大紀町唯一の海岸部には漁業が盛んな錦地区があります。漁獲量は昔に比べると減少しているものの、漁協では直営店を開設し、魚介類の販売、加工品の開発など活発な事業展開を示しています。加工品の中では“Fishー1”グランプリで準グランプリを獲得した「真鯛の塩麹漬け」が多くの食通から高い評価を受けている人気の商品です。

ブリは桜が咲くころに水揚げされるため古くから「サクラブリ」と呼ばれ親しまれており、時期になると「ブリまつり」が行われるほど活気にあふれた代表的な産物です。

海藻「ひろめ」もこの地域だけの貴重な海の幸で、ひろめオーナー制度があり収穫の体験もできます。最近は「塩蔵ひろめ」を商品開発し、季節を問わず食することができるようにもなりました。

錦ブリまつり

▲錦ブリまつり

伊勢神宮奉納鮎

▲伊勢神宮へ奉納した大内山川の鮎

養殖魚のエサやり体験は海ならではの体験メニューで、船に乗ることも楽しみのひとつです。

町が合併したことによって山間部が増え、元々それぞれの地域で行われていた朝市などに冷蔵車を走らせ、新鮮な魚介類を提供する販売方法も今では見慣れた光景となりました。

様々なアイデアが町を活気づけて知名度を上げていると思われます。

清流大内山川の鮎は“清流めぐり利き鮎会”で全国の準グランプリを獲得しています。おとり鮎を泳がせて釣る“友釣り漁”は、最盛期には県内外からたくさんの愛好者が川に並び一斉に釣りを楽しむという風景が定番です。

大内山酪農の牛乳は、学校給食では三重県内のシェア率が高く「大内山牛乳」として関西・中京圏では名が知られており、また、伊勢志摩サミットの際に食材として提供したヨーグルト、種類も豊富なアイスクリームやプリンなど、長年親しまれている乳製品が今でも人気を呼んでいます。

三重県といえば松阪牛を連想する人も多いでしょう。実はこの大紀町は古くから和牛の産地で、七保地区では「七保牛」として地域ブランドを確立して肥育が行われています。毎年行われている松阪肉牛共進会では、松阪牛の肥育エリアに加わって以降5度の“優秀賞一席”チャンピオンに輝いており、昨年を含む3年間は連続で制覇し、上位にも大紀町の和牛がずらりと選ばれる快挙を成し遂げており、松阪牛を育てる町の代表格になったと言っても過言ではないと自負するところです。

肥育農家の高齢化が浮き彫りになる中、若い担い手の姿もちらほら見えるようになり、又、肉牛肥育への支援も功を成し、地域に根付いた産業の衰退の歯止めに寄与しているように思われます。

大内山酪農農業協同組合の乳製品

​▲大内山酪農農業協同組合の乳製品

松阪肉牛共進会優秀賞1席(令和元年)

​​▲松阪肉牛共進会優秀賞1席(令和元年)

地域の資源

このような体験メニュー、地域特産品が観光に繋がり、交流人口を増やし、町が活性化することに期待を込める他、世界遺産に登録された「熊野古道ツヅラト峠」や、伊勢神宮内宮の別宮である「瀧原宮」など名高い文化資産や観光資源を求めて来訪される方も多く、熊野古道の世界遺産登録時や神宮の式年遷宮の影響を受けて入込客が増えることもしばしばあります。

また、海から山へのアップダウンを繰り返す自然の地形を活かしたコースで行われるトレイルランニングレースが最近では若い世代に人気があり、恒例イベントになりつつあります。

大紀町には観光協会がなく、地域の利を活かした体験、自然や文化資源の活用、特産品の販売などは、商工会をはじめとしたいろいろな関連団体なくしては成り立ちません。これからも行政と各種団体、住民が一体となって連携し、大紀町の魅力を余すことなく情報発信していきたいと思います。

世界遺産熊野古道ツヅラト峠からの展望

▲世界遺産熊野古道ツヅラト峠からの展望

トレイルランニングレース(大紀町シーサイドトレイル)

▲トレイルランニングレース(大紀町シーサイドトレイル)​​