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岐阜県池田町/岐阜県池田町における地方創生~町民と役場の協働による『まちづくり』~

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年11月25日

 

池田町マスコットキャラクターちゃちゃまると池田山麓茶園での茶摘み

池田町マスコットキャラクターちゃちゃまると池田山麓茶園での茶摘み


岐阜県池田町

3102号(2019年11月25日) 池田町長 岡﨑 和夫


池田町の概要

池田町は、面積38.80㎢、濃尾平野の北西部に位置し、西に標高約924mの池田山を背負い、平野部を一級河川の揖斐川等が流れる自然環境豊かな町です。

町の中央には国道417号線が南北に横断しており、大垣市まで12㎞、岐阜市まで20㎞のところに位置しています。

公共交通機関として、養老鉄道があり、大垣・岐阜・名古屋方面への通勤、通学等の足として利用されています。また、町内各所を無料で巡回する池田町コミュニティバスを運行しています。

池田町の魅力は、池田山周辺の自然を活かした観光です。なかでも「池田温泉」は平成8年のオープン以来、年間入浴者数約50万人を維持しており、令和元年6月29日には、総入浴者1、100万人を達成しました。全国的にも珍しい重曹以外の成分をほとんど含まない純重曹のお湯により、入浴すると肌がつるつる、すべすべになる特徴をもっており、泉質ランキングでは第1位を獲得したこともあります。スライダー風呂や歩行浴、寝転び湯、壺湯など温泉を楽しむ工夫がしてあり、さらに、隣接した「道の駅 池田温泉」では、地元の採れたて野菜や特産品などの買い物めぐりを楽しめます。

池田温泉本館露天風呂(寝覚めの湯)

池田温泉本館露天風呂(寝覚めの湯)

池田山 霞間ヶ渓の桜

池田山 霞間ヶ渓の桜

池田山ではその地形を活かしたスカイスポーツが人気で、パラグライダーやハンググライダーなどが行われています。池田山の山頂付近にあるグライダーの発進基地では、空気の澄んだ日には御嶽山や伊勢湾、北アルプス、南アルプスが眺望できます。濃尾平野を一望できる展望は東海最大級の美しさを誇る夜景スポットになります。他にも山麓沿いにある自然公園「大津谷公園」ではキャンプやバーベキューが楽しめ、自然の中で過ごすひとときは格別です。また、国指定の天然記念物「霞間ヶ渓の桜」に隣接し、平成30年4月に花の観光スポットとしてオープンした「霞間ヶ渓花畑」では春は芝桜、枝垂れ桜、ドウダンツツジの花、夏は紫陽花、秋はモミジやドウダンツツジなどの紅葉、冬は寒椿というように1年を通して美しい花が楽しめます。

池田町PR動画「池田の四季(ドローンver.)」(町ホームページから閲覧可能)

池田町PR動画「池田の四季(ドローンver.)」(町ホームページから閲覧可能)

池田の四季(ドローンver.)

池田の四季(ドローンver.)

池田町地方創生のコンセプト~お任せ民主主義からの脱却~

池田町のまちづくりは平成27年に遡ります。国の人材支援制度を活用し、文部科学省の職員を地方創生専属として迎え入れ、体制づくりを進めました。外部からの視点を取り入れ、地元の人が気づいていない町の魅力を掘り起こしながら地方創生に取り組みたいと考えたからです。まちづくりは人づくりという考えのもと、「町民と役場の協働によるまちづくり」をコンセプトとし、官民が一体となって町の課題を考え、それを解決していくプロジェクトの実行を目指しました。まずは、これまでまちづくりに対して町民が意見を伝える機会や場所がなく、参加する方法が分からないという現状があったことから、2種類の町民ワークショップを開催しました。

1つ目は、20~50代の女性を対象とした「池女会」です。池女会では、女性目線で、結婚・出産・子育て・日常生活について議論しました。

2つ目は、だれでも参加できる「アイデア工房会議」です。こちらは、教育・福祉・産業・観光・移住定住について幅広く議論しました。

町ホームページ等で、参加者を募集した結果、池女会25名、アイデア工房会議33名の申し込みがありました。池女会とアイデア工房会議は、それぞれ5回ずつ、5~6名のグループに分かれて議論しました。職員だけでは思いつかないアイデアが次々と提案され、活気ある会議となりました。終盤には、「町民ワークショップが終わった後も、このプロジェクトを私達でやっていきたい!」という声が多くあがりました。

これら町民ワークショップから3つの方向性と15のプロジェクトが生まれました。

①町民がまちに愛着を持ちPRできるようになること

②人とのつながりや語らいの楽しみがあること

③町民が安心していきいきと働けること

平成27年ワークショップ(池女会)

平成27年ワークショップ(池女会)

プロジェクトの実行~構想から実現へ~

プロジェクトの実行には発案した町民の参加が不可欠ですが、幸い、ワークショップ参加の人達はまちづくりへの関心が高く、引き続き協力していただくことができました。各プロジェクト町民3~5名、役場職員5名から成るチームをつくり、企画準備から実施にまで至りました。以下、現在も継続中の主なプロジェクトを紹介します。

●町民による池田の魅力発信

「池田の魅力を再発見し情報発信する」プロジェクトです。池田の魅力の再発見と池田町好きを増やすために「幅広い層の女性目線とクチコミ力」を活用しようと考え、池田高校の女子生徒にも編集への参加を依頼し、お洒落な情報誌「いけ本」が完成しました。

●池田山を活用した体験交流ツアーの実施

「交流人口と観光消費額の増加を目指す」プロジェクトです。池田町の観光資源の調査分析や体験交流ツアーガイドの育成を行い、GPS機能がついた電動アシスト付き自転車でモデルコースを廻るモニターツアーを実施して推奨観光コース検証を行いました。この際、ご当地版「るるぶ池田山」も作成し、併せて、池田町の観光資源と人材活用を組み合わせた体験型ツアー「まるっと体験交流ツアー」を年3回ほど実施しました。

また、大津谷公園では「バーベキューハウス」を増設し、利用者数や収益の増を目指しています。

●IT・SNSを活用した農産物等の情報発信、販売

「インターネット販売を通し、農産物生産者の収入・雇用増加、後継者獲得につなげる」プロジェクトです。希望された15名の生産者自らで販売サイトを運営し、町は初期費用と年間ランニング費用、運営のためのアドバイザー派遣等を支援しました。このサイトは、商品を販売するだけでなく生産者の人柄や想いを伝える記事を掲載していることが大きな特徴です。

●子育て・就労応援センターの整備

「子育て・就労応援センターの整備・運営」プロジェクトです。妊娠・出産から育児まで切れ目ない包括的な支援の充実を図るとともに、「子育て中であっても働きたい、収入を増やしてもう一人子供を産みたい」という希望を叶えるため、ハローワークとの連携のほか、町内の子育て応援企業とのマッチングやスキルアップ講座の開催などを行っています。子育てしながら安心して働ける環境や社会の実現を目指しています。

これらのプロジェクトは、池田町の地方創生総合戦略の柱「①住民の幅広い参画②データに基づいた地域課題の抽出③政策目標の数値設定とPDCAサイクル確立④地域間の広域連携推進」を根幹に持ち、それぞれまちのあるべき理想像に向けて実行しています。

子育て・就労応援センター

子育て・就労応援センター

池田町と養老鉄道の関わり、支援の取組

揖斐駅から三重県桑名駅までの全長57㎞のローカル鉄道養老線は、年間およそ600万人の方々が利用し、地域住民の生活を支える重要な公共交通機関です。しかし、年々、人口減少と共に利用客が減少し、年間の赤字額から存続維持という課題があり、利用客増のためのアイデアが求められていました。

町では、電車とレンタサイクルを活用した「揖斐池田サイクルトレイン日本一への挑戦プロジェクト」を地方創生事業「養鉄トレクル推進事業」として実施しています。これは、池田町・揖斐川町内の観光用二次交通として2駅で電動自転車をレンタルするもので、スマートフォンでの予約・貸出ができるほか、GPS機能付きのため返却はどの貸出先でも自由です。

池田町PR動画「岐阜県池田町レンタサイクル」(町ホームページから閲覧可能)

池田町PR動画「岐阜県池田町レンタサイクル」(町ホームページから閲覧可能)

岐阜県池田町レンタサイクル

岐阜県池田町レンタサイクル

また、平成29年度から力を入れてきたプロジェクトの1つに「まちづくり工房事業」があります。有志7名の「まちづくり工房運営委員会」が「まちづくり工房 霞渓舎」(養老鉄道池野駅舎を活用)の管理委託を受け、まちづくりの拠点となるよう活動してきました。

ここで、様々な夢を持った人が集まり、語らい、夢の実現に向けて活動する姿は、町の活性化や持続的な発展を目標とする地方創生の姿にも重なります。特に、中学生含め25名ほどの有志グループ「わかも会」の活動は、町のPRに大きく貢献しています。町の魅力をテーマに地元の和菓子屋さんとコラボレーションして開発した羊羹「ときめぐり」の販売、池野駅イルミネーション点灯式の企画・運営など地域活性化のために幅広く精力的に活動中です。

池野駅とまちづくり工房「霞渓舎」

池野駅とまちづくり工房「霞渓舎」

わかも会等団体の利活用、養老鉄道や町のPR効果により、霞渓舎の利用者数は年間5、000人を超えるようになりました。

他にも、民間主導による地方創生プロジェクトを推進する「地方創生プロジェクト推進助成金」を毎年実施しています。アイデア、事業実施者を募集し、事業認定された方に助成金を交付しています。交付例として、昨年は地元有志による「池野ビアステーション」や「お庭マルシェ」が池野駅周辺を会場として実施され、町内外の多くの人たちを呼び込み大盛況でした。

地方創生事業は、平成31年3月の総合戦略の改訂で2つの新プロジェクトを加え、合計22事業となりました。町内の空き家を取得して居住する方には5年間固定資産税を免除するほか、改修費を一部助成する制度や町への移住推進を狙った「東京圏からの移住支援事業」などを追加しました。

これまで紹介した各プロジェクト活動を通して、まちづくりに関心を持つ人が増え、それぞれの能力を活かして活躍できる環境が出来上がりつつあります。この仕組みを途絶えさせることなく町の発展に活かしていくことが大切であると考えます。

わかも会の活動

わかも会の活動

町の地域活性化政策など

池田町はふるさと納税にも力を入れています。寄附金の使い道として養老鉄道の存続支援や子育て支援の補助金など行政事業への活用に焦点が当てられることが多いのですが、一方で若い方が起業して返礼品を扱う事業者になり、また、町内商店の販売チャンネルが増えて町の特産品を知ってもらう良い機会に繋がるなど、町内の産業分野にもいろいろな変化が現れています。

池田山に生息する野うさぎをモチーフに、耳は町特産品「美濃いび茶」の葉、頭に桜の髪飾りを付けた池田町マスコットキャラクター「ちゃちゃまる」も地域振興の一翼を担ってくれています。職員によるプロジェクトチームを立ち上げ、これまで町内外のイベントに積極的に参加し知名度を広げてきました。「ちゃちゃまるプロジェクト」は外部委託を行わず、全て職員の発案で創意と工夫を重ねて作り上げており、ツイッターやインスタグラムなどのSNSには旬の情報をアップしています。先日、長野県で開催された「ゆるキャラⓇグランプリ2019」では、ご当地ランキング全国7位、県内1位と健闘しました。これからも池田町PRのため頑張ります。

池田山×養老鉄道×ちゃちゃまる

池田山×養老鉄道×ちゃちゃまる

これからのまちづくり

町が地方創生事業を活用してさまざまな分野で新たな挑戦をしていることについて、町民からは非常に大きな関心を持って見られています。多くの方がまちづくりに関わることで事業のスケールアップが図られ、より良いものになっていくと考えています。今年度は、新たな将来に向けた「池田町第六次総合計画」を策定する重要な年でもあります。これら地方創生事業を活かしながら、さらに町民アンケートや町民ワークショップ、計画審議会などさまざまな方からの意見も取り入れ、より良いまちづくりのための総合計画を策定していきます。

最後になりますが、過去には「ぎふ清流国体」開催に伴う民泊受け入れで町全体の協力体制が進み、各地区のまとまり、助け合いが生まれ、人情あふれる町になった経緯があります。今後はこの思いを引き継ぎ、子育て世帯に向けたサポート、要支援者などの見守りを大切に助け合いのまちづくりを進めると共に、住民が安心して暮らせる、環境を大切にしながらいつまでも輝き続ける町として発展していく町政を確立したいと考えます。