ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 町村の取組 > 千葉県一宮町/一宮版サーフォノミクス

千葉県一宮町/一宮版サーフォノミクス

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年10月28日

 

サーフィンと生きる町

サーフィンと生きる町


千葉県一宮町

3099号(2019年10月28日) 一宮町企画課


一宮町の概要(紹介)

一宮町はゆるやかに弧を描く九十九里浜の南端に位置し、町の東側には美しい海岸線が広がり西側には丘陵団地をひかえた、風光明媚で温暖な気候の地域です。人口は、平成31年4月1日現在12、455人です。町の総面積は、22.97㎢で、その大半を肥沃な田や畑、山林が占めており、四季を通してあふれる緑に包まれています。

古くは上総一宮1万3000石の城下町として栄え、また、地曳網や製塩業などの産業の場としても栄えた歴史をもち、その後は日本一といわれるガラス温室団地など、ハウス栽培を中心とした近郊蔬菜果樹園芸を基幹産業にしています。

玉前神社周辺を中心に都市集積が進み、明治初期には県内第6位の人口を有するまでに発展しました。上総一ノ宮駅から玉前神社周辺に広がる商店街は、地曳網漁の隆盛や別荘地としての発展といった時代背景の中で、サービス業の拠点として栄えてきました。近年は、郊外型大規模店の発展や自動車利用の増加などの影響により商店街における日常的消費は減少していますが、玉前神社への参詣客などによる観光的消費の取り込みに成功している店舗も見られます。

海岸線では、年間を通じて良質な波が打ち寄せることから、1970年代頃から、サーフィンが盛んになりました。海岸全域にわたってサーフポイントがあることから、現在では町内外から多くのサーフィン愛好家が来訪しています。こうした中、東京2020オリンピックのサーフィン競技開催町の決定を受け、サーフィンを軸としたまちづくりを推進しています。

一宮町は、緑と海と太陽に恵まれた自然環境により東京近郊屈指のリゾート地として多くの観光客を集めています。また、東京駅まで特急電車で約1時間と交通アクセスが良く、土地も比較的安価であるなど、立地条件にも恵まれています。このため、豊かな自然環境やサーフィンを楽しむことを目的とした移住者も多く、町の人口は堅調に推移し、子育て世代の転入も多いことから、小学校の児童数や中学校の生徒数が増加傾向にあります。

一宮町(空撮)

一宮町(空撮)

取組の経緯

一宮町がサーフタウンとしてのPRを始めたのは、2009年、役場内に移住推進担当を設置してからでした。

2014年、日本創生会議が発表した「消滅可能性都市」に一宮町は該当しておらず、町が要因を調べたところ、年間60万人もの観光客が人口1万2、000人の同町を訪れていたということが分かりました。町では、その結果を受け、海岸の全域にわたって良好なサーフポイントが存在するロケーション、地元にしっかりと根付くサーフィン文化などの町の特長を地域活性化に活かそうと、2015年10月に策定した「一宮町まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中で、「一宮版サーフォノミクス」を打ち出しました。

サーフォノミクスとは、サーファーが集まることによる経済効果のことを指す言葉です。自然保護と経済振興を両立できるサーフォノミクスはアメリカではすでに研究が始まっています。

一宮版サーフォノミクスは、海沿いの文化と豊かな自然、上総国一之宮としての伝統を享受し、ゆとりある住宅環境や働く場を創出することで、町の魅力に磨きをかけ、新たな人たちを呼び込むという好循環を生み出す仕組みです。サーファーが集まることによる直接的な経済効果だけでなく、移住・定住の促進、魅力発信という循環型の経済効果を打ち出していく考え方です。

一宮版サーフォノミクスは5つの柱で構成されています。

①サーフストリート構想

海岸から県道30号線に沿ったエリアをサーフストリートとして位置付け、交流拠点となるサーフィンセンターを設置し、当該エリアをブランディングする。

②都市軸の整備

上総一ノ宮駅西側エリアの中心市街地としての機能を強化し、駅周辺と駅東側のサーフストリートを結ぶため、駅を中心とした都市軸を整備し、町全体の活性化を図る。

③雇用創出と事業創出

町の基幹産業である農業の構造改革を進め、雇用の創出を図り、既存企業の競争力を高めることで雇用を安定させる。また、社会構造の変化に伴う課題が大きくなることから、その解決手法をコミュニティビジネス化し、事業の創出を進める。

④子育て支援と個性のある教育の推進

すべての子育て世代が安心して子育てができるよう、子育て支援サービスの充実を図る。また、時代にあった先進手法を取り入れながら、本町ならではの教育環境の充実を推進する。

⑤シティプロモーション

自然の魅力だけでなく、スポーツ体験や農産品、玉前神社等、多くの地域資源を内外に発信するプロモーション事業を通じて、来訪者や移住者の増加につなげ、一宮版サーフォノミクスの好循環を生み出す。

役場外観

役場外観

取組内容

町ではサーファーにアンケート調査を実施し、集まった意見や要望をもとにサーフスポットの駐車場舗装やシャワーの設置などの整備を行いました。

一宮版サーフォノミクスでは、サーフストリートの経済効果を駅周辺にも波及させることを目指しています。そのことから、2017年7月には、官民連携のまちづくり会社「(株)一宮リアライズ」が施設の管理運営している「SUZUMINE」を商店街にオープンしました。空き店舗をリノベーションして誕生した「SUZUMINE」には、お店を出したい人が期間限定で挑戦するチャレンジショップやシャワーやサーフボードの保管庫を備えたシェアオフィス、ラーメンカフェなどが入っています。

「SUZUMINE」

「SUZUMINE」

子育てという面では、町単独の教育として、ICT(情報通信技術)を使いこなせる人材を育成するため、町立東浪見小学校と一宮小学校において、プログラミングキットがインストールされたタブレットや専用サーバー無線アクセスポイント等を設置。これを利用したロボットプログラミング授業を行っています。このほか各小学校では、サーフィンの魅力を子どもにも知ってもらえるよう、プール開きの際にプロのサーファーによるサーフィン教室が行われています。

2018年4月には、町の観光拠点として上総一ノ宮駅前に観光案内所がリニューアルオープンしました。観光案内所では、レンタサイクルやサーフボードの貸し出しを行っています。また、海と里山を一緒に楽しめるよう観光マップを用意しています。

「一宮版サーフォノミクス」の効果をより高めるために、サーフィンから波及する一宮町の文化のPRを目的として「サーフィンと生きる町。」というWEBサイトを開設しました。「サーフィンと生きる町」では、国内で開催された中でも最高レベルにあたる大会(QS6000)の様子や、サーファー100人にアンケートを取り、作成したプロモーションビデオなどが掲載されています。上総一ノ宮駅では新しく東口の開設が決まり、2020年6月の完成が予定されています。東口が開設されることにより、駅を利用する方が増え、現在よりも駅周辺に活気がもたらされることを期待しています。

町ではこのような事業を通じて町全体を活性化させ、東京2020オリンピック競技大会終了後もサーファーを主とした若者や子育て世代が定住し続けるような魅力あるまちづくりを目指しています。

観光案内所

観光案内所

現状と今後の課題

海沿いを走る県道30号線のエリアを「一宮サーフストリート」と位置付け、観光振興を図っています。現在、一宮サーフストリート沿いにはオシャレなサーフショップやカフェ、レストランが点在し、多くのサーファーで賑わっています。しかし、サーフストリートの経済効果を海岸地域だけでなく町全体に広げることは難しく、大きな課題となっています。また、夏と冬では観光客数の差が大きいため通年楽しめるものやサーフィンに同行する女性や子どもが楽しめる場所を設ける必要があります。

サーフストリート

サーフストリート

上総一ノ宮駅東口の開設が決まり、駅周辺が徐々に活気付いているところです。今後、東口が開設され、来町客が増加することにより、町全体が盛り上がってくれることを期待しています。また、東京2020オリンピック競技大会への機運醸成を図る上でも、町全体でサーフィンへの理解度を深めていく必要があります。

全国的に少子高齢化が進んでいますが、さらに高齢化が進み、人口が減少していく中で、一宮町がサーファーの人口を現状のまま維持し続けることは困難です。人口減少が進む中でもサーファーの来町者数を維持し続けるためには、今後どう動き出すかが重要となります。

東京2020オリンピック競技大会期間中は国内外から多くの観光客などが来訪し、オリンピック終了後には移住定住者の増加が見込まれます。町では移住定住者を受け入れるために海側だけでなく、駅前や商店街等の町全体の活性化も合わせたまちづくりを進めなければならないと考えます。

上総一ノ宮駅東口外観(イメージ)

上総一ノ宮駅東口外観(イメージ)